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 ドラクロン王国の中枢に近づくにつれ、この国の貧しさに気づく。道で土下座をして、リュカ達一行が通りすぎるのを震えてじっと耐えている民の姿は、これまで身分が上のもの達がそうやって、民を強いたげてきた証だった。

寒暖差のあるドラクロンの地で、冬の地面に土下座をするなんて、リズ達は、街を通りすぎながら、暗い気持ちになった。重い課税で、食べるものもなく、木や草を食べて生きつないで、綺麗な水もない、もちろん病にかかっても薬もない。ゼクスはきっと、変えてくれるだが、どれだけ時間がかかるだろう。

土地柄というものがある、そこが肥沃な土地であるならいずれ自力回復ができるが、ドラクロンの土地は、多くがパサパサとした枯れた土壌で、水を含むことができない、木が育ちにくく、よって腐葉土もできず、虫は毒虫が多く、ミミズのような益虫はいない、虫を餌にする鳥も少なく、また、動物も生息しない。これでは本当に生き絶えるしかない。

リズは、リュカを悲しげにみつめた。

「土地の荒廃がひどいですね」
「課題が多い国だな」

「ドラクロンの特産品は何かあるんですか?」
「鉱物と、地下に油田があるらしい、それを他国に売って王国は軍を強化してきた、要は、軍に入れば食べ物がもらえる、滅ぼした国から物資を奪い、捕まえた捕虜には鉱山で働かせ、近隣国の恨みも深い」

「ゼクスさん、つらいですね」
「今回、クライス王家が、祝宴にいくのは、国として助ける意を他国に示す狙いもある、クライスから出た王ということで後ろ楯だな」

「だから、ゼクスさんだったんですね」

「うん、他の王子では、こちらは何も出来ないからな、ゼクスは正に取って置きのスペシャルカードだったさ、サリザーラにとっても、ドラクロンとの確執が無くなるのはメリットがでかい、ゆくゆくは貿易も発展するだろう」

「リュカさんって、先をみてるんですね、預言者みたい」

「ん?そうでもないっすよ、全部が思い通りになる訳じゃない、ドラクロンの監視はずっとしてたのに、あの奴隷商団の連中は監視を抜けて、だいぶやりたい放題やってくれた、こっちの軍の中にも裏切り者がいたし、人って割りと簡単に悪事に傾くんだなと」

前方を行く部隊を見詰めながら、リュカは少し低い声でリズに話す。

「誰かの為の悪事か、自分の為の悪事か、自分の為のは論外だけど、誰かの為にやったことを、その相手が喜ぶようなヤツだったら、救いがない、周りにそんな奴しかいなかだたら、悪事を悪事とさえ認識できてなかったかもな、そういうの普通って思うような環境で自分も育ってたら俺もそうなってたかもな」

人の大切なものを奪って喜ぶ人、そんな人がこの世にいる。クライスの法は、悪を罰する。でも、本当は、法なんかなくても、罰することがないような世の中になればいいのに。

「人は人で繋がって、その人を、その人の環境を大切に思うからこそ自分を律するような気がします、自分の為というよりは、大切な人のそばに自分が居られる為というか、嫌われたくないとか、好かれたいとか、そこに悪事は要らないし、きらわれる要因に成りかねないから、嘘をつく?でも嘘は嘘で、きっとずっと心を蝕む、無くならない」

天に顔向けできないような、生き方はしたくない。綺麗事でも、綺麗でいたい。

「誠実でありたいです、誰に対しても」

心から思う。嘘をついたり、他人を貶めたり、そんな生き方は嫌だ。

人より自分が劣ることは沢山有るだろうが、それが自分だ、じぶんを作り上げてきたのも自分だ、他人じゃない、自分を変えるのも、正すのも自分でなければできない。

「人の心って、責任が有りますね、僕が僕で有ることの責任が僕にある、僕が選んで今の僕を作り上げてきたと、思うと、僕を選んでくれたリュカさんは僕の選択肢を、間違ってないて証明してくれてる人です、すごい、心強い」

「沢山の選択の果てに今のリズがあるなら、俺は過去の全部のリズに感謝だな、だって今のリズのこと、めちゃくちゃ好きだから」

「僕も過去の全部のリュカさんに感謝します、こんな素敵なリュカさんをつくってくれた」

ふふっと、笑みが自然とこぼれた。大丈夫、ドラクロンもきっと良くなっていく、だって、悪に皆で歯向かったんだから。


















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