52 / 66
52
しおりを挟む
ドラクロン王国へ出立の日がきた。天候は晴れ、夜の内に砂漠をでて、国境を超えて、ドラクロン王国へ入る予定だ。砂漠の生活にも慣れたリズは、なんと、駱駝に1人で乗れるようになっていた。
「リュカさん、ほら、もう僕、駱駝に乗れるんです」
「うん、でも心配だから一緒に乗るけどね」
リュカが、サッと駱駝にのる姿は様になってて、よじ登ったリズとはやはり、雲泥の差である。
「はぁ、リュカさん、かっこい」
「なに?聞こえなかった、もっかい言って」
「秘密です」
「ハハッ、リズは、可愛い」
聞こえたなと、リズは、恥ずかしくて下をく。すると、とてててと、そばにやってきたのはセルリカだった。
「リズ様、気を付けていってらっしゃいませ」
「うん、行ってくるね」
セルリカは、リズについていきたそうに、していたが、流石に皇太子一行の旅団に子供は連れていけない。
「お土産買ってくるから、楽しみにしてて」
「はい」
別れを惜しんで、セルリカが涙ぐむ。可愛いなぁと、リズは、にっこりと手を振った。リュカは、ポンとリズの頭を触ると、前方を指差した。
「んじゃ、そろそろ行く」
リュカが、大きな声で、号令をかけると、一団がゆるゆると進み始めた。こういう時、将軍だなぁとリズは思う。リュカの声は良く通るし、全責任を負ってくれるような、絶対に守ってくれるような安心感がある。信用できる人の声。そういう声は稀だと思う。リズには出せない。自分1人のことさえ、自信がないのに、人の事までなんて。だから、リュカが時々、率先して、何事も成し獲ていく姿はリズにとって憧れなのだ。
(リュカさんって、本当にかっこいい)
人知れず、頬を染めて、リズは、胸をときめかせて、好きな人のそばに有れる幸せを喜んでいた。
月夜に照らされ、旅団は砂漠を越えていく。リズは、夜空の星を見ながら、砂漠都市サララを目指して旅していた頃を思い出す。
「リュカさんと旅するの2回目ですね」
「うん」
「なんだか、もうずっと昔からリュカさんと何度も旅したような気がします」
「俺は……まだ、こうしてリズが、俺の腕の中にいるの夢かと思う時ある」
リズの心臓がどきりと跳ねた。リュカの声が耳元で、何だか切なそう。
「もしも、夢から覚めて、リズがいなかったら……気が狂う」
リュカの切なそうな瞳が、リズを、捉え、たくましい腕がぎゅっとリズの腰を抱く。リズは、ふるふると首をふってリュカにささやく。
「夢じゃないです、僕、ちゃんとリュカさんのツガイですよ、これからも、ずっと」
一団の最後尾を、少し遅れて、駱駝でゆらゆら歩くと、砂漠に二人っきりでいるみたいな気持ちになって、リズは、リュカに抱きつきたくてしかたなかった。
リュカみたいに何でもできる人が、何故自分をここまで好いてくれるのか、リズは、不思議だった。
どうしてこんなに想ってくれるんだろう、僕には何も良いところなんてないのに。容姿は兄様や姉様に劣るし、カリル家なのに銀髪じゃない、くすんだ鼠色の髪だし、瞳だって、皆は銀だけれど、自分はどちらかというと黒に近い灰で綺麗じゃない。宮廷医にもなれなかった。
オメガだから、好きになってもらえたのかな。オメガじゃなかったら好きになってくれなかったかな、と、そこまで考えてズキンと胸が痛んだ。
もしもオメガじゃなかったら、好きになってもらえなかったかも。オメガじゃなかったら、ツガイにも、なれなかったし、きっと目にも止まらなかった。そう考えると、オメガに生まれて良かった反面怖くもある。フェロモンがもっと合う人がいたら、僕なんて好きじゃなくなるかもしれない。そんなことになったら、僕。
ゼクスのオーピーアルファを皆が欲しがるという言葉は、実はリズの心を傷つけていた。リュカは、もてるだろう、皆、リュカを、欲しいとおもうだろう。こんなに素敵な人だもの。
背中に当たるリュカの身体、耳に届くリュカの声、好きが溢れて、くらくらするのに。もしかして、限りがある恋だったらどうしようと、リズは、かなしくなった。離れたくない。もうこの人を失ったら生きていけない。こんなに好きになってしまって、離したくない。
リズは、自分の腰に巻き付いたリュカの手に、そっと自分の手を重ねた。
「ずっといっしょにいたいです」
頭をこてりと、リュカの胸に預ける。リュカはそんなリズを、片腕でしっかりと抱きながら、駱駝を操る。甘えたら、甘やかせてくれる、優しい恋人に抱かれながら、二人は夜の砂漠を進む。
「リュカさん、ほら、もう僕、駱駝に乗れるんです」
「うん、でも心配だから一緒に乗るけどね」
リュカが、サッと駱駝にのる姿は様になってて、よじ登ったリズとはやはり、雲泥の差である。
「はぁ、リュカさん、かっこい」
「なに?聞こえなかった、もっかい言って」
「秘密です」
「ハハッ、リズは、可愛い」
聞こえたなと、リズは、恥ずかしくて下をく。すると、とてててと、そばにやってきたのはセルリカだった。
「リズ様、気を付けていってらっしゃいませ」
「うん、行ってくるね」
セルリカは、リズについていきたそうに、していたが、流石に皇太子一行の旅団に子供は連れていけない。
「お土産買ってくるから、楽しみにしてて」
「はい」
別れを惜しんで、セルリカが涙ぐむ。可愛いなぁと、リズは、にっこりと手を振った。リュカは、ポンとリズの頭を触ると、前方を指差した。
「んじゃ、そろそろ行く」
リュカが、大きな声で、号令をかけると、一団がゆるゆると進み始めた。こういう時、将軍だなぁとリズは思う。リュカの声は良く通るし、全責任を負ってくれるような、絶対に守ってくれるような安心感がある。信用できる人の声。そういう声は稀だと思う。リズには出せない。自分1人のことさえ、自信がないのに、人の事までなんて。だから、リュカが時々、率先して、何事も成し獲ていく姿はリズにとって憧れなのだ。
(リュカさんって、本当にかっこいい)
人知れず、頬を染めて、リズは、胸をときめかせて、好きな人のそばに有れる幸せを喜んでいた。
月夜に照らされ、旅団は砂漠を越えていく。リズは、夜空の星を見ながら、砂漠都市サララを目指して旅していた頃を思い出す。
「リュカさんと旅するの2回目ですね」
「うん」
「なんだか、もうずっと昔からリュカさんと何度も旅したような気がします」
「俺は……まだ、こうしてリズが、俺の腕の中にいるの夢かと思う時ある」
リズの心臓がどきりと跳ねた。リュカの声が耳元で、何だか切なそう。
「もしも、夢から覚めて、リズがいなかったら……気が狂う」
リュカの切なそうな瞳が、リズを、捉え、たくましい腕がぎゅっとリズの腰を抱く。リズは、ふるふると首をふってリュカにささやく。
「夢じゃないです、僕、ちゃんとリュカさんのツガイですよ、これからも、ずっと」
一団の最後尾を、少し遅れて、駱駝でゆらゆら歩くと、砂漠に二人っきりでいるみたいな気持ちになって、リズは、リュカに抱きつきたくてしかたなかった。
リュカみたいに何でもできる人が、何故自分をここまで好いてくれるのか、リズは、不思議だった。
どうしてこんなに想ってくれるんだろう、僕には何も良いところなんてないのに。容姿は兄様や姉様に劣るし、カリル家なのに銀髪じゃない、くすんだ鼠色の髪だし、瞳だって、皆は銀だけれど、自分はどちらかというと黒に近い灰で綺麗じゃない。宮廷医にもなれなかった。
オメガだから、好きになってもらえたのかな。オメガじゃなかったら好きになってくれなかったかな、と、そこまで考えてズキンと胸が痛んだ。
もしもオメガじゃなかったら、好きになってもらえなかったかも。オメガじゃなかったら、ツガイにも、なれなかったし、きっと目にも止まらなかった。そう考えると、オメガに生まれて良かった反面怖くもある。フェロモンがもっと合う人がいたら、僕なんて好きじゃなくなるかもしれない。そんなことになったら、僕。
ゼクスのオーピーアルファを皆が欲しがるという言葉は、実はリズの心を傷つけていた。リュカは、もてるだろう、皆、リュカを、欲しいとおもうだろう。こんなに素敵な人だもの。
背中に当たるリュカの身体、耳に届くリュカの声、好きが溢れて、くらくらするのに。もしかして、限りがある恋だったらどうしようと、リズは、かなしくなった。離れたくない。もうこの人を失ったら生きていけない。こんなに好きになってしまって、離したくない。
リズは、自分の腰に巻き付いたリュカの手に、そっと自分の手を重ねた。
「ずっといっしょにいたいです」
頭をこてりと、リュカの胸に預ける。リュカはそんなリズを、片腕でしっかりと抱きながら、駱駝を操る。甘えたら、甘やかせてくれる、優しい恋人に抱かれながら、二人は夜の砂漠を進む。
808
お気に入りに追加
2,346
あなたにおすすめの小説
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
公爵家の次男は北の辺境に帰りたい
あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。
8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。
序盤はBL要素薄め。
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
健気な公爵令息は、王弟殿下に溺愛される。
りさあゆ
BL
ミリアリア国の、ナーヴァス公爵の次男のルーカス。
産まれた時から、少し体が弱い。
だが、国や、公爵家の為にと、自分に出来る事は何でもすると、優しい心を持った少年だ。
そのルーカスを産まれた時から、溺愛する
この国の王弟殿下。
可愛くて仕方ない。
それは、いつしか恋に変わっていく。
お互い好き同士だが、なかなか言い出せずに、すれ違っていく。
ご都合主義の世界です。
なので、ツッコミたい事は、心の中でお願いします。
暖かい目で見て頂ければと。
よろしくお願いします!
本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる