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 俺はいま、説教をしている。目の前には項垂れた獣(狐)。

「いいか、ヨルベール、おれが寝てる時に勝手になめちゃだめ、わかる?」

「キュウ」

可愛らしい声で、でもちょっと不服そうに鳴いたヨルベールに。めっと叱る。

「ヨルベール、喋れるでしょ、昨日、喋ってたでしょ、ちゃんと返事しなさい」

「だってぇ、テオドールさまの精気がとっても美味しそうだったんだもん」

「美味しそうだったんだもんじゃありません、くっそ、可愛いな、負けるな俺、もうしないって約束しなさい」

「だってぇ、僕たちにとって、テオドールさまの精液はご馳走なんだよ、毎日飲みたいくらいに美味しいの」

魔界の概念がオカシイ。なんで、精液がそんなに旨いんだよ。頭が痛くなる。

「美味しくても我慢しなきゃ、もう一緒に寝ない」

「そんなぁ、ひどいよ、テオドールさまぁ」

尻尾がきゅるんと、垂れ下がって、ドタッと、ベットの上に倒れたヨルベールの前足を、握る。ついでにちょっと肉球をニギニギする。うわぁ、ふわふわもちもちだ。

「俺もヨルベールと一緒に寝たいから、我慢できるよね」

「少しもだめなの?」

「少し……も、だめです」

少しならいっかと思いかけて、首をふる。だめだ、絆されたら、絶対こいつ少しで止まらないし。ここは、心を鬼にしないと。
ヨルベールは、しゅんとして、うるうるとした瞳で頷いた。


「わかったよぅ、はぁ、目の前にご馳走があるのに我慢なんて、テオドールさまの鬼畜」

「なんだって!?」

「わかったって、言ったんだよぅ」

「う、ん、解ったなら宜しい」

本当に解ったんだろうか、寝るときは、カインも一緒に寝てもらうか、何か対策をしないと、こいつが甘えてきたら、俺もちょっとグラグラしてしまうかもしれない。なんせ、俺は犬が大好きなんだ、ヨルベールは犬じゃなくて、狐だけど。カワイもんは、可愛い。


「でもね、テオドールさま、ぼく、テオドール様の事だいすきだから、精液が美味しいの、好きじゃなかったら美味しくないんだからね」

「へぇ、そうなんだ、嬉しいんだか悲しいんだか解らんが、まぁ、好きでいてくれてありがとな」

「うん、テオドールさま、だいすき」

「はーー可愛い、可愛いだけなら癒しなのに」

惜しまれるのは、こいつらの食欲というか、性欲だ。どうしてこんなに俺の精液に執着するんだか。そもそも、精液なんか、飲んだことないけど、美味しいの?美味しいわけないよね。


悪魔の味覚と、常識を持ち合わせないで人間界で生活してきたし、これからも慣れることはなさそう。

「魔王って、大変だわ」

もっと、こう、権力とか武力とか、魔法とか、妖力とかで、支配するものだと思ってたから、まさかの種付けと言うなのセックスがメインの仕事とか、なんでだよってなる、これ、俺が革命とか起こしちゃいけないのかな。

これからは13王家の中から、伴侶を1人選ぶとか、いやでも、カインだけでいいんだけど、カインは13王家じゃないから伴侶にもなれないのかな?

そもそも、伴侶って概念がないのか。

しもべが、伴侶みたいなものなのかな、第一しもべって、言ったら、さっきのムキムキの竜王みたいな人引き下がったし。


じゃぁ、しもべを1人しか持たないって言ったら、それなら、ずっとカインだけとここで暮らせるんじゃ。


「ねぇ、ヨルベール、しもべを1人しか持たないって言ったら、だめだと思う?」

「エッ!!ひ、1人しか!?そんなの、だめだよ、最低でも13王家の13人は持たなきゃ」

「でも俺がそうしたいって、決めたら、何とかならないの?」

「そんな、テオドール様が決めたらそりゃ、そうなるかもしれないけど、テオドールさまをめぐって、大戦争になっちゃうよ、テオドール様は争いを好まれるの?」

「いやいや、争いたくないよ」

「じゃぁ、どうやって、1人にするの?1人だけしか契約しなかったら、他の王家の魔族をどうやって支配するの?13王家の其々が強いから皆、牽制しあって、魔界は近郊を保ってるのに」

「はぁ、そんなに、危ういの、なんか、軽い気持ちじゃだめね、もっとよく知ってからじゃないと、そもそも俺、ほんとに魔界のこと何にも解ってないのに、セックスばっかりってのがおかしいんだよな」

カインにいって、とにかく勉強を優先させることにしよう。






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