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 べつにさ、猫被りたかった訳じゃなくてさ、好きな人にちょっとでも、昨日より今日の方が好きって思って欲しいじゃん。僕は顔だけ良くて中身空っぽなの自分で解ってたしさ。先輩みたいに、スポーツができて、バスケ部のエースで全国行ってとかそんな特技無かったし。僕が唯一もってるものは、先輩が気に入ってる僕の外側だけだったんだよ。

晴海先輩とは、会話もあんまり無かったし、部屋行ってヤることやってサヨナラってのが多かったし。してるときは優しいし僕で満足してくれてるんだって思うと嬉しかったし。学校の中じゃいっつも僕を隣に置いてくれてたし。自慢できるアクセサリーの1つでも良かったんだ。先輩に釣り合ってないのは自覚してたから。

昴とは出会って2日でめちゃくちゃ喋ったのにね。何でだったんだろ、先輩に喋った言葉『うん』『解った』『いいよ』の三種類が断トツトップだったもんな、今考えるとおかしいね。もっと、喋れば良かったな。言葉通じたのに、伝える言葉知ってたのに、僕の気持ち隠したまま、そばに居ることを優先したんだ。先輩は、本当は僕のことどう思ってたのかな。もう、今さら知ったって意味は無いけど。

「ねぇ、すばる、昴の中の僕ってどんななの?」

飛羽ぽいとか、飛羽らしくないとか、昴の中の僕ってどんなイメージで固まってるの?良いイメージだったら良いな。僕は、僕の事空っぽの美少年としか思えない。特技もない、皆が出きることが出来なかったり、成績だって普通、努力家でもない、空っぽなの。どうしようもない、価値なんかない。

僕の顔を見つめる昴、昴の澄んだ瞳に不安げな僕の姿が映り込む。

「飛羽のイメージ?飛羽は、自分でツガイ痕を焼いちゃうような苛烈さを持った信念の子かな、揺らいでるみたいに見えるけど大切なことは自分で決めるよね、そしてそれに責任が持てる、人のせいにしない誠実さが一緒にいて心地良い、コロコロ変わる表情が可愛いし、自分がされて嫌なことは人にしない、してる人を見ると心を痛める、自分が傷ついても人を傷つけない我慢する子、飛羽は偉いね、尊敬する」

僕の瞳に涙がたまっていく。

何を言ってるの昴の方が、ずっと尊敬できるよ。

僕、今解った、認められたかったんだ。先輩に認められたかった。運命とか外見とかそんなんじゃなくて、僕の中身を知って認めて褒めて欲しかったんだ、承認欲求だ。僕は褒めて欲しいのに褒めてもらえず、先輩は褒められて当然なのに僕は褒めない、言葉少なに了承だけ。満たされない気持ちがずっと有ったんだ。僕と先輩はずっと合わないパズルのピースを無理矢理合わせようとして、でも結局噛み合わないパズルのピースはいつ崩壊してもおかしくなかった。形を変えるべきだったのは僕と先輩。


ぽたぽたと、落ちる涙を、昴がまた指で拭ってくれる。心配そうな顔。僕ね、昴のそういう優しいとこ大好きだよ。ごめんねありがとう。変わるよ、変わる努力する。昴ともっと気持ちがピッチリと合うように。

「心配しないで、心がスッキリして、昴の言葉にちょっと感動して、嬉しくて、泣いただけ」

昴の顔が近づいてきて、今度はちゅって、涙を吸った。

「あはは、だから、ミカンの味しないってば」

「味……する、甘い……カテリーナ」

昴は、僕を抱き締めたまま、カテリーナさんの方へ顔を向けた。昴の身体が少し震えてる。どうした?

「ペラ……ペラペラペラ、ペラペラペラペラペラペラペラペラ、ペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラ」

「ワォ!!ペラペラ!!ペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラ!!ペラペラペラペラペラペラペラペラ」

二人の会話に置いてきぼりになって、僕は僕でポロポロ涙を落としながら、なんこれな状況。カオスだね。








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