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 昴の主治医であり、僕の主治医となってしまったカテリーナ·フレンスキーさんは、ちゃちゃっと、僕の火傷の痕を消毒してくれると、昴にまた何かを訴えている。なにせ、めちゃ早英語なものだから僕には一切合切解らない。なんだっけ、英語の単語と単語を繋げて発音するやつ、あ、リエゾンだ、リエゾン。この単語繋げて早口に耳が慣れてないから。しかし、カテリーナさん僕が英語解ってないの、解ってないのかな?めっちゃ喋りかけてくれるけど、すまん全部解らない。

「ペラペラ、ペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラ!!ペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラ!!キーキーペラペラキーキーキーペラペラ!!」

なんか、なんだろ、ペラペラがキーキー聞こえる時があるんだが……。そしてカテリーナさんの身振り手振りから怒りを感じる、恐い、なんか僕やらかしちゃいましたか?僕に怒ってるの?ごめんなさい!!日本人だからすぐ謝るよ。僕は不安げに昴を見上げた。

「ねぇ、昴、なんか怒ってない?」

「怒ってるのは飛羽に対してじゃないよ、オメガにこんな傷跡をつけさせたアルファに対して激怒してる、訴えようって……訴えたら10000%勝つって言ってる、僕も同意、悔しい、飛羽にもっと早く出会ってたら僕が飛羽に一生残る痕をつけられたのかなって」

「え、10000%ってこっわ、勝ち確定以上に上乗せしてボコボコに再起不能にしようとしてるじゃん、先輩可哀想なレベルよそれ、あと、お前もフル前提なの、お前はフライパンじゃビビんなそう」

げんなりと、昴のことを見上げると、昴はさも心外だというように眉をピクリと寄せた。

「そんなわけない、僕が飛羽に噛み痕をつけたのにって意味だよ、それ以外で飛羽に傷跡なんかつけない……ましてもし飛羽が僕をいやになって離れるってなったら、僕がレーザーで焼いて綺麗に消してあげる」

「ええっ、僕がフル方なの!?そしてお前が執刀すんの、ちょっとメンタルもたないなそれは」

昴が余りにも変なこと言うから、何だか心がホワーーってなって、僕のなかの、汚い部分が浄化されていくような気持ちになった。

「あははっ、僕がお前をふるなんてないと思うけど、その時はまたフレンスキーさんに頼もうかな」

「飛羽は解ってない」

「何を?」

「僕が今、どれだけ嫉妬してるかを」

「は?嫉妬?誰に対してだよ、僕じゃないよな?僕は昴に嫉妬される要素ないもんな、顔が良いくらい?まぁ、顔はお前も良いし」

「飛羽の傷跡を作ったヤツと、カテリーナに」

「いや、前半は解るけど、後半はなんでだよ、治療をしてくれてるだけじゃん、むしろ感謝しろや」

僕が気まずくチラリとカテリーナさんを見ると、カテリーナさんは何故か親指を立ててグーって言ってる、いや、勝てるよ!!じゃなくて、あんた今、この隣にいる人に嫉妬されてるって話をしてるのよ。ごめんね!!伝える術が僕には無いので放置させてもらうけどいい人だな。それより、昴の声が低くてまたこの子闇に入りはじめてない?

「僕はまだ飛羽の傷に触れる権利がない、医師免許取れるのまだまだ先だし、悔しい」

「あ、そゆことか、自分が子供だってか、しょうがないじゃんそれは」

「飛羽の首筋にカテリーナが触る度、邪魔しそうになるし、今も正直距離が近いから、ペラペラペラペラペラペラペラペラ、ペラペラペラペラペラペラ」

昴はそう言うと急に早口の英語をカテリーナさんに向かって話し初めて、っうか、発音めっちゃ綺麗なのに、聞き取れない虚しさよ。カテリーナさんは、やれやれみたいな雰囲気で僕から離れた。

「オーケィ~ププッ、ペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラ」

「ペラペラペラペラ、ペラペラペラペラペラペラ」

たぶん、カテリーナさんは医療行為だって昴に訴えてる気がするよ、ボディランゲージで解るようになってきたぞ、英語を聞き取ろうとするより、何を訴えてるのかを知ろうとした方がコミュニケーションとれるのか。

昴は、また僕の腕をひしっと掴んでるけど、嫉妬なんかする必要ないんだよ。僕の気持ちはもう晴海先輩には向いてないもん。確かにバッタリあったら、苦笑いする程度には気まずいけど、でもさ、なんか時間がたつと、僕も悪かったかなって思いはじめてるんだよ。僕、嫌われたくなくて先輩に何にも言わなかったから。ボディランゲージだけ出てたのかも知れない。それって良くなかったよね。先輩に僕の本音見せたの、最後だけだったかもね。






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