噛み痕をフライパンで焼いてツガイと別れてやりました

夜鳥すぱり

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 昴が僕の前にぶら下げた餌を、僕は冷や汗をかきながら食べるべきか食べざるべきかと考えていた。

「うう、すばるちゃん、なんて旨そうな餌を垂らしてくるんだ、抗えない」

「飛羽の為を思って言ってるだよ」

それって、宗教勧誘とかに良く聞く謳い文句よね、僕の為を本当に思ってる?ってやつ。猛烈に裏が有りそうでこぇぇ。だが、昴が並べた《君と僕がツガウと得する十の事》みたいな条件がぁぁぁ、丸得物件な気がするんだよぉぉぉ。

「す、昴はいいのかよ、僕は確かに美少年で見映えはするけど、その、将来的に本当につがえないかもな人間なんかと、ツガイのふりして」

「大学受かったら止めても良いし、一度入ってしまえばツガイじゃなくなったからって退学にはならないよ」

ツガイになってと同じ声音で、さらっとメリット無くなったらすぐ別れて良いという。昴よ、お前の心の闇をこういう時感じるんだ。僕は目の前のヨダレ垂れそうな餌から目をそらした。

「僕は不正はやだ、やるなら本気でお前とツガイたい」

「飛羽らしいね」

今度はらしかったらしい。お前の中で僕の評価ってどうなってんの?なんか、無謀キャラになってない?僕、そんな無謀じゃないのよ、どっちかっていうと、怖がりでおとなしめの守られキャラなんだけど。普段の僕、むやみやたらにフライパン振り回してないからね。

「ツガイになる意味解ってんのかよ」
「意味?」
「そうだよ、お前と僕が恋をするってことだぞ、昴は誰の事も好きになったことがないんだろ?僕と恋なんてできるのか、あっ、まって、円やかに言って!!できないかもとか、バシッと言わないで、心のボンドが溶けるから」

こいつ、僕の心のダメージ治しながらすぐ壊すからな、気を付けないと。あぁ、こんなに振り回されるってことは、たぶん僕の方は完全に落ちてるきがするわ。恋とやらに。だとしたら、昴の気持ちだけだ。僕はもう覚悟決めてやる。お前を僕に落としてやる。

狙った獲物を見るようにキッと挑むような瞳で見つめたら、昴はほやんと微笑んだ。なんだそのホヤヤンとした顔は。

「僕、どうやら、初めて好きになったみたい」
「へ?」

打って変わって間抜けな顔になってしまった僕を、昴は頬を染めてポワワンと見詰めてる。まって、昴、好きって、いまここで使われてる好きは、大根の煮物が好きとかの好きじゃないからな!!解ってる?

「おま、好きって……」
「うん、僕、飛羽のことが好きみたい、というかもしかして一目惚れだったのかな、今思えば、だって、僕、老人が倒れてても部屋に連れ帰るような人間じゃない、その場で救急車呼んで後はお任せするのに、飛羽は連れて帰りたくなっちゃった」

「お前の発言恐いんだわ」

それ、道にいたから誘拐しちゃたみたいな、軽く言えば罪が軽くなるわけじゃないやつだからな。まぁ、実際は拾われて感謝しているけれども。

でも、僕も困ってるからって、見ず知らずの人を保護するような人間ではない、全てが愛すべき保護対象ではない、優しくされて当然みたいな態度とってくる人たまにいるからね、老人に限らずオメガでも、女の子でも男の子でも。優しくするのは当然じゃないんだよ。自分の心に余力がある人が、手をなんとか差しのべてくれてるだけなんだよ。さしのべたせいで、結果的に良くない方向にいったとしても、全責任を負うつもりで差しのべてんのよ。

昴はいいヤツだ、育ったか環境ヤバすぎ案件持ってはいるけど、いいやつ。弱って怪我までしてボロボロの僕を優しく拾ってくれた。面倒事しかなさそうな僕を連れ帰ってくれた。そんな手を今さら離せるわけない。僕は、きゅっと。昴の長い指先を掴んだ。

「いつか僕のツガイになってくれますか?」

どうかイヤですなんて言わないで、頼むから拒絶しないで。僕のものになるって言って。欠陥のある僕を、選んで。僕だけを選んで。僕にもう一度恋をちょうだい。そしたら、何度だって僕の心壊していいから。お前にボロボロにされるなら本望だから。




























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