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【Q】
⑨
しおりを挟む「そうだね。じゃあ真中くんにこう伝えるよ。
私には、私の全てを受け入れて、それで深く傷付いたとしてもずっと一緒にいてくれる、とても大切で大好きな人がいますから。って」
「え、それって……」
チャイムが鳴る。
真中くんが何か叫んでいる。
三村先生が、ニヤニヤしながら校門を閉めていく。
「アイ、えっと、なんか俺、よく整理できてなくて。こういう時ってどうすれば
「待ってるよ。いつまでも。蓮太が疑問を持ってくれるまで。今度は、私が検証されてあげる」
私達は、遅刻する。
どこか抜けていて普通じゃなくてことごとく正反対な私達は、授業では習わないことを時間をかけて『検証』していく。
だから、これからもきっと遅れていく。
気付くのがいつも遅くて、十年以上経って気付いたりする。
でもこうして、アクシデントがきっかけで真実に辿り着くこともある。
まるで贈り物のように、不意に手にするワクワクの全てを、私たちはこれからいくらでも知っていくことができるんだ。
「……アイ。俺、急に整理が付いたかもしれない」
「蓮太?」
校門の外、過緊張で目が泳いでいる蓮太の顔を見つめる。点Pが不安定過ぎて、何も読めない。
「英語の授業で、習ったんだ。
三村は『これからいくらでもやってくる』って言ってたんだ。
でも、俺には、俺達には、『今この時』しかないと思う」
蓮太が私の両肩を掴み、真正面に対峙する。
ようやく安定した点Pから、真っすぐに綺麗な直線が放たれ、私の心を射抜いた。
「プレゼント・タイムだ」
- END -
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