プレゼント・タイム

床田とこ

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【Q】

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「そうだね。じゃあ真中くんにこう伝えるよ。
 私には、私の全てを受け入れて、それで深く傷付いたとしてもずっと一緒にいてくれる、とても大切で大好きな人がいますから。って」

「え、それって……」


 チャイムが鳴る。
 真中くんが何か叫んでいる。
 三村先生が、ニヤニヤしながら校門を閉めていく。


「アイ、えっと、なんか俺、よく整理できてなくて。こういう時ってどうすれば
「待ってるよ。いつまでも。蓮太が疑問を持ってくれるまで。今度は、私が検証されてあげる」




 私達は、遅刻する。

 どこか抜けていて普通じゃなくてことごとく正反対な私達は、授業では習わないことを時間をかけて『検証』していく。

 だから、これからもきっと遅れていく。
 気付くのがいつも遅くて、十年以上経って気付いたりする。

 でもこうして、アクシデントがきっかけで真実に辿り着くこともある。

 まるで贈り物のように、不意に手にするワクワクの全てを、私たちはこれからいくらでも知っていくことができるんだ。



「……アイ。俺、急に整理が付いたかもしれない」

「蓮太?」


 校門の外、過緊張で目が泳いでいる蓮太の顔を見つめる。点Pが不安定過ぎて、何も読めない。


「英語の授業で、習ったんだ。
 三村は『これからいくらでもやってくる』って言ってたんだ。
 でも、俺には、俺達には、『今この時』しかないと思う」



 蓮太が私の両肩を掴み、真正面に対峙する。

 ようやく安定した点Pから、真っすぐに綺麗な直線が放たれ、私の心を射抜いた。




 「プレゼント・タイムだ」







  - END -


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感想 1

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みんなの感想(1件)

昭島瑛子
2023.07.22 昭島瑛子

初読のときは「トコさんがこんなにすごい小説を!」という衝撃と感動が大きかったですが、再読の今回は章タイトルに特化した感想を。
数式の解が章番号になっているというしかけを教えてもらっていましたが、この数式が内容に密接に関わっているのが再読しても素晴らしいです。
特に好きなのは「7+7-7」「37-29」「Q」です。
7+7-7は蓮太が自販機で出したスリーセブンと同じ数字が使われていて見た目はラッキーなのに、「アイの元に蓮太が来て、そして去っていく」という孤独感を感じます。
37-29は数字の大きさも目を引きますが、体温と最高気温というどちらも「熱」を感じさせる数字が、この章に漂う愛の温かさにつながります。
Qは唯一数式ではなく、今後の未来も期待させる感じが好きです。
再読も楽しかったです。ありがとうございました!

解除

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