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【37-29】
④
しおりを挟む「……たとえばこういう災害もさ、災害対策をちゃんとしてたのかとか、堤防や防災工事の手抜きじゃないかとか、避難指示が甘かったとか。怒りの感情って湧くと思うの」
「ああ。そうかもな」
「でも一番悪いのって、台風だよね」
「そうだな」
「台風を悪者にしてさ、やいやい怒ってそいつのせいにすれば、少しは気が晴れない?」
「そういうこともあるかもしれないな」
「お父さんは、それでも怒らない?」
「ああ。きっと、誰も何も大体悪くない。『それだけの事』だと思う」
「どうして?」
すぐに答えずに、麦茶が無くなった湯呑みを持ってお父さんが立ち上がる。
隣りのキッチンにそれを置いて、煙草を出しながら換気扇の下に移動した。
「『研いで、究める』」
「……え?」
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