プレゼント・タイム

床田とこ

文字の大きさ
上 下
68 / 97
【7+7−7】

しおりを挟む
 


 ◇



 放課後。

 今日から部活が再開する蓮太とは下校時間が合わないから、夜に家の近くの公園で待ち合わせをしようと誘った。

 蓮太からは「夜になっちゃうと危ないから、どちらかの家で」と提案されたが、それは断った。
 親の目も耳も無く、『逃げ場』を残すには外の方がいいと思ったからだ。

 学校が終わって、私は公園に直行する。家に帰って着替えてからとも考えたが、何となくそんな気にはなれなかった。

 この検証を実行するには、余計な感情やノスタルジーは入れない方がいいと思ったし、極力自分の心の波立ちを鎮める時間が欲しかった。


 夕方の公園は空気が生ぬるくて、首筋にしっとり汗をかいた。日中よりも暑いと感じるのは、自分の中からじわっと染み出る葛藤のような気もする。

 傾いて隠れようとする太陽を正面に見据え、私は睨んだ。

 これ以上、私を照らすな。
 透けて見えてしまうと、私はこの検証を完遂できない。
 沈め。
 隠れろ。
 いなくなれ。

 怯んだ夕陽は、幾分昨日より早く山陰に沈んだかもしれない。
 


 ◇



 夜7時。
 蓮太が息を切らせて公園に飛び込んできた。

 走りながら、ブランコに座る私の姿を捉えたようで、真っすぐにこちらに駆けてくる。

「急がなくていいのに」
「そんな訳には……いかない……だろ。ひとりじゃ危ねえよ」

 隣りのブランコをすすめるが、蓮太は軽く首を振って膝に手をつき息を整えた。数十秒で笑顔を見せると、「おまたせ。遅くなった」と私に言った。

「すごい汗だね。何か飲もうか」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

処理中です...