プレゼント・タイム

床田とこ

文字の大きさ
上 下
60 / 97
【3+3】

しおりを挟む
 


 ◇


 昼休み。

 チャイムと同時に廊下に出て、学食販売へ向かう。
 隅と際でヒソヒソと誰かが話をしている。総じて視線は私に向いていて、その多くは口を覆って笑ったり慄いたりしている。

 正真正銘の「悪目立ち」が起こったのは明らかだ。検証結果に足しておかなければならない。
 


 学食販売の壮絶なパン取り競争は熾烈を極めていた。
 定刻で授業が終わるところが多いのか、月曜はきまってその光景が見られた。

 私が輪の最後に参加する前に『伝説のあんぱん』は売り切れていて、仕方なくコロッケパンを手に取ろうとした時、学食の浅沼さんに声を掛けられた。

「相葉さん見たよ! 頑張ったね! はいこれご褒美!」

 陳列棚の下から『伝説のあんぱん』を3つ出し、袋に入れて手渡してくる。サムズアップした浅沼さんから「私からの奢り!」と言いながらぐいっと胸元に預けられて、私は深くお辞儀をして教室に戻った。

 パック牛乳をまた買い忘れたが、これ以上まわりから尖った視線を浴び続ける勇気は無かった。
 検証結果に付け足す波及効果がデカ過ぎる。
 
 
 
 ◇



 教室に戻ると、今日一日緩衝帯になっていた私の席に隣接する場所に、蓮太と真中くんが居た。

 いつかのように、前の席に後ろ向きに跨る真中くんと、今日は私の左の席に腰かけている蓮太。「あ、ども」。私は小さく会釈をして、席についた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈 
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈 
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

処理中です...