プレゼント・タイム

床田とこ

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 キッチンに進み、米を研ぐ量を一合減らすことにする。夕飯の品数も一品減らし、量も半分。

 効率よくお金を稼ぐことを考えて働く片親と、効率よくお金を使わないように生活する一人娘。それが私達父子の日常で、母親のいない私と父の役割分担だった。
 
 ひとりでは広すぎるダイニング。
 ひとりでは隙間だらけになるテーブルに、ひとり分の夕食を並べる。

 ひとりしか腰掛けられない所謂「お誕生日席」に、ひとりで座る。決め事ではないが、私はこの席にしか座らない。
 今日もひとりでおめでとう。
 昔は、私側から伸びる右の長辺に祖父母の二人、左側の長辺にお母さんと父が座っていた。遠い昔の話だ。

「いただきます」

 誰もいないキッチンにそう言ってから、炊き立て一合から少しだけよそったご飯と簡単なおかずを啄んだ。

 父はちゃんと食事できているだろうか。
 効率の良いことばかり考えて、気付かないとお風呂にも長く入らない人だ。九州は台風が接近しているらしい。今回増やした積み荷も、天候予測で大手が断った仕事を拾ったのだろう。お金と危険度を天秤にかけ、効率から仕事を受けた。大方そんなところだ。

 無事と健康を祈ると、頭の中で父の声がぼんやり響いた。あの時の言葉だ。
 
「結果、死んだ。それだけのことです」
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