47 / 97
【5÷1】
⑤
しおりを挟む◇
奇跡的に時間通りに終わった梶原先生の日本史の授業だったが、私はあんぱんを買い損ねた。廊下に出ようとした時、その廊下から真中くんが私をたずねてきたからだ。
「アイちゃん、こんにちは」
「……」
「約束は守れよカエデ」
真中くんの挨拶が終わる前に、教室の真逆から移動してきた蓮太が釘を刺した。「はやっ」と苦笑いしながら、真中くんが両掌を突き出す。どうどうどう。真中くんが、落ち着けという感じのジェスチャーで蓮太を宥めた。鼻息の荒い長身の蓮太を、上手に躱している。
「分かった分かった。じゃあ、これからは和田くんに話すよ。テスト終わるまでは。だから、アイちゃんは聞いてて?」
「何言ってんだお前」
「アイちゃんに話し掛けるなって約束はしたけど、アイちゃんに話を聞かすな、なんて約束はしてないよね僕たち」
「は?」
「してないよね?」
「……してないけど」
ふふん、と鼻を鳴らして、真中くんは昨日のように私の前の席に跨った。
「ところで和田くん、アイちゃんのテスト勉強のことなんだけどさ」
明らかに私の目を見て話し掛けてくる真中くんと、苦虫顔で真中くんを睨みつける蓮太。
地味な私の目の前で繰り広げられる豪華で珍しい光景に、教室中が見て見ぬふりのまま興味津々なのが手に取るように分かった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。



【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる