45 / 97
【5÷1】
③
しおりを挟む
歩幅の広い蓮太と違って、私は小走りで校門へ向かう。遅刻をしたことはないからよく知らないが、私たちの学校は時間になると校門の門扉を閉めて遅刻者を炙り出す。十数メートル先で、生活指導の先生が門扉に手を掛けているのが見えた。
「だからさ、私は『かわいそう』なんかじゃない!ってさ。そう言えばいいんだよ」
「え? 何言ってんの?」
「家族もちゃんといて、ご近所付き合いもちゃんとやってるってさ。小さい頃の事故で母親はいなくなってしまったけれど、けして『かわいそう』ではないんだって。こうして俺もいるんだし……。ちゃんとそう言えばいいんだよ」
「ちょっと何言ってるか分かんない。それ言って、何か変わる?」
小走りなんて、無駄なエネルギー消費の極致だ。日頃の運動不足の八つ当たり込みで、ちょっとイライラした。
「変わるさ。本当のことを言って分かってもらえたら、誰もアイを『かわいそう』なんて思わなくなるよ。きっと分かってくれる。アイは全然変な子なんかじゃないって、皆んな受け入れてくれるようになるさ」
リミット4秒前に、並んで校門を通過する。セーフ。
息を整えるひと呼吸目でチャイムが鳴って、テスト勉強で寝坊した生徒たちの断末魔が、閉められた校門の外から聞こえてきた。
「だからさ、私は『かわいそう』なんかじゃない!ってさ。そう言えばいいんだよ」
「え? 何言ってんの?」
「家族もちゃんといて、ご近所付き合いもちゃんとやってるってさ。小さい頃の事故で母親はいなくなってしまったけれど、けして『かわいそう』ではないんだって。こうして俺もいるんだし……。ちゃんとそう言えばいいんだよ」
「ちょっと何言ってるか分かんない。それ言って、何か変わる?」
小走りなんて、無駄なエネルギー消費の極致だ。日頃の運動不足の八つ当たり込みで、ちょっとイライラした。
「変わるさ。本当のことを言って分かってもらえたら、誰もアイを『かわいそう』なんて思わなくなるよ。きっと分かってくれる。アイは全然変な子なんかじゃないって、皆んな受け入れてくれるようになるさ」
リミット4秒前に、並んで校門を通過する。セーフ。
息を整えるひと呼吸目でチャイムが鳴って、テスト勉強で寝坊した生徒たちの断末魔が、閉められた校門の外から聞こえてきた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。



【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる