プレゼント・タイム

床田とこ

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 ◇



 お葬式は、信じられないくらいの人数が参列して執り行われた。
 生前の人柄から、その突然の訃報に涙してお母さんを悼む人がたくさんいた。
 憔悴し切って泣き枯れの祖父母は、力なく棺に寄り添うばかりだった。

 喪主を務める父は忙しそうにしていたが片時も私から離れることはなく、自分を盾にして無言で私を庇っているようだった。

「子供が飛び出したんだと」
「あの子が飛び出した子?」
「アイちゃんのせいで、アイちゃんママが死んじゃうなんて……」

 刺さるような視線、心無い中傷や噂話は、読経と木魚の音の隙間から顔を出し、私の耳まで筒抜けだった。
 父の礼服の裾を後ろから摘み、私は絶対的な悪者としてその存在を極力消す努力にひとり勤しんだ。

 葬儀が終わり、残った家族がお母さんの遺骨を囲んだ。
 5-1=?。 お母さんがいなくなって、私たちはどうなるのか?

 口火を切ったのは、祖父母だった。

「お前のせいだ」
「アイが娘を殺した」
「あの子を返せ」

「アイは、悪魔だ」

 我が子の入った骨壷を前に、祖父母はもう正気では無かった。祖父母が私をあまりよく思っていなかったことで、全ての悪意が私に向いたのだと思う。

 涙も出なかった。
 父に抱きつき、私は恐怖におののいた。

 祖父母が罵詈雑言を尽くし、部屋に滲むような静寂が訪れるのを待って、父が静かに話し出す。大きな掌を広げ、片手で私の耳を軽く塞いで言った。

「あいつは自分が死ぬかもしれないって分かっていて、それでも死んでもいいって思って、結果、死んだ。それだけのことです。」

 祖父母が再び烈火の如く喚いた。
 父はその後もちゃんと喋っていたのに、祖父母の耳には届かない。

 ああ、お父さんらしいな、と思った。
 定義と根拠をもとに推論をたて、それでも結果に勝るものはない。父はそう言いたかっただけなのだ。
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