プレゼント・タイム

床田とこ

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 四歳になって、私は幼稚園に通い始めた。

 ずっとお母さんから離れない私を心配し、社交性や自立心の成長を考えた祖父母からの提案だった。
 祖父母から見た娘の、我が子に対する溺愛の様子はあまり喜ばしいものには見えなかったようだ。

 あまり家をかえりみず自分の道を邁進する父や、お母さん以外に殆ど懐かない私にも、祖父母は少なからず不満があったらしい。
 お母さんのいない場所で、祖父母はよく父や私の「悪口」を言っていたの聞いていた。
 子どもだから分からないと思われていたのだろう。でも、私はそれを聞いてしていた。

 嫁に出さなければ、子どもができなければ、アイがいなければ。
 祖父母が私をかわいいと思わなくなってきているのも、私は感じていた。

 だから私は、じいじの読んでいる新聞を破いたり、わざと老眼鏡を隠したりした。顔を歪ませ怒りを滲ませるも、お母さんの顔色を伺う祖父母は私を𠮟れなかった。

 私は徹底的に試した。
 襖に落書きをし、床の間のものも壊した。
 どれ程のいたずらをすれば、祖父母は私に怒るのだろう。

 お母さんの愛の傘の下で、私はお母さん以外の人に嫌われることは、本当に何でもないことだった。




 父は、幼稚園に私を預けることは反対だったらしい。

 興味のあることへの没頭と執着。他のことへの注意や意識が散漫になりがちな私の性格を慮り(性格は父からの遺伝だと思うのだけれど)、入学までは家で育てる事を望んだそうだ。

 しかし、祖父母に押し切られる形で、私は幼稚園へ入園した。研究と引き替えに様々な面で祖父母に頼りきりな若い夫婦に、決定権は無かった。
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