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【5ー1】
⑧
しおりを挟む「真中くん、お昼に言ってましたよね。お母さんがいなくて私がかわいそうって。本当に、そう思ってるんですか?」
「え!? 何!? 聞こえないよ」
停車のためのブレーキ音がけたたましくて、がなる金切り音が私の検証を掻き消した。等号符が霧散する。
構わない。耳を寄せる真中くんに、私はいつものトーンで尋ねた。
「全部私のせいなのに。それでもかわいそうですか」
◇
「アイは私のすべてよ。だから、おやすみ」
それは、お母さんだけがかけられる魔法だと思った。
小さい頃から、私は夜寝るのが苦手な子だった。夜9時を過ぎると、私は子供部屋までお母さんの手を引っ張っていった。 「おかあさん!はやくねよう!」 寝かしつけの為に大好きなお母さんを独り占めできるから、時計の針が270度開くのが毎日待ちきれなかった。
布団に入ると、お母さんといっぱいお話をした。
幼稚園のこと、好きなおやつ、かわいいおもちゃ、じいじの入れ歯が外れた話。
お母さんは笑いながら、私の瞳をじっと見つめてお話を聞いてくれた。私のお話が尽きると、今度はお母さんが絵本を読んでくれた。何度も聞いている童話の数々も、大好きなお母さんの優しい声で聴こえてくるから、毎日でもワクワクがやってきた。
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