30 / 97
【5ー1】
④
しおりを挟む
長い踏切待ちで追いついてくる生徒を掻き分けて、後ろから肩を叩かれた。見覚えのある色合いの小柄なマッシュルームが、振り返った先で揺れていた。
「帰る方向、こっちじゃないよね?」
昼休みに見たのと変わらない笑顔が、私の目線と同じ高さでキラリと光る。真中くんも私と違って常に日向にいる人で、私と違う世界の住人だと思い知った。
「……真中くんは、何でも知ってるんですね」
「だからカエデでいいって。もう知らない仲じゃないでしょ」
そうかな。そうだっけ。人って、何回会話の往復をしたら、知った仲になれるのだろう。
疑問。生じた疑問には、すぐに検証する。
「いつから……」
「僕はね、アイちゃんのことずっと知ってるよ。一年の春から、ずっと気になってたんだ。きっかけは……まあ、あるんだけどさ。今はそれはいいや。それより……昼間はごめん」
「え……?」
最近、検証が不発になることが多い。
何となくこの真中くんと私は嚙み合わないのは分かったけれど、唐突な謝罪にまた面食らった。
「帰る方向、こっちじゃないよね?」
昼休みに見たのと変わらない笑顔が、私の目線と同じ高さでキラリと光る。真中くんも私と違って常に日向にいる人で、私と違う世界の住人だと思い知った。
「……真中くんは、何でも知ってるんですね」
「だからカエデでいいって。もう知らない仲じゃないでしょ」
そうかな。そうだっけ。人って、何回会話の往復をしたら、知った仲になれるのだろう。
疑問。生じた疑問には、すぐに検証する。
「いつから……」
「僕はね、アイちゃんのことずっと知ってるよ。一年の春から、ずっと気になってたんだ。きっかけは……まあ、あるんだけどさ。今はそれはいいや。それより……昼間はごめん」
「え……?」
最近、検証が不発になることが多い。
何となくこの真中くんと私は嚙み合わないのは分かったけれど、唐突な謝罪にまた面食らった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。


【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる