プレゼント・タイム

床田とこ

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【5ー1】

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 ◇
 
 

 その日のことは、よく憶えている。

 決まったリズムで明滅する踏切の赤いランプと、それと同じタイミングで響く警報音。

 お母さんに突き飛ばされて、線路の真ん中から踏切の外まで弾かれた私が顔を上げた時、遮断機の棒は下までさがりきったところで。

 まだ踏切の中にいたお母さんは立ち上がれてもいなくて、額や頬を擦りむいた顔をようやく上げその双眸で私を見付け、安心したように少しだけ微笑んだ刹那。

 ごつん。

 という衝撃音とともに、まるで紙芝居を捲るように横に風景がスライドして、お母さんごと全部まるごと連れていった。

 後に響いたブレーキの金切り音。
 学生の悲鳴。
 赤黒い光景。

 毎日の夕方少し前、幼稚園からお母さんと二人きりで歩いて家に帰る時間は、本当に大切だった。

 でも。

 その日、私の中で絶対的なものが目の前から消え去った。
 消し飛んだ。

 ああ。
 絶対なんて無いんだ。
 そう思ったんだ。
 
 
 ◇


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