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【2+1】
⑧
しおりを挟む「アイはかわいそうじゃねえ」
いつの間にか、蓮太が隣りに立っていた。
私と真中くんの間に肩を入れるようにして、睨みつけている。
「アイはかわいそうなんかじゃねえよ」
当番で職員室に呼ばれていた蓮太は、仕事を済ませた後で学食販売の少しお高い総菜パンを二つ買って戻ってきたのだ。
「……和田くん、そこは別に問題じゃないんだよ。いいだろ? 僕はアイちゃんと仲良くなりたくて来たんだ。もう少し話させてくれよ」
「取り消せ。そして謝れ、アイに。問題はそれだけだよ」
「なんだよ。悪く取るなよ。要は僕がアイちゃんの力になるって話……って、アイちゃん?」
「アイ?」
私は席を立ち、食べ掛けのあんぱんを机に置いて廊下に出た。
だって、今日はパック牛乳買い忘れてたんだもん。そうだよ。あれから16秒以上経っても、パンを嚥下できなかった。喉に詰まったみたいに、そのまま口の中で固まったみたいに、すっと喉を通らない。飲み込めない。そういう「事実」として。
飲み物の存在って、偉大だった。
あ、これ、新しく検証できちゃった?
「……飲み物、買ってくる。蓮太と、その、真中くんのも買ってきますか?」
「アイ……」
歩きながら呟く。
聞こえるかどうか分からない声量だったけれど、教室の蓮太には何故か聞こえたみたいだった。
でも、返事は聞かない。
かわいそうな私は、そのまま学食販売へパック牛乳を一つ、買いに行く。
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