プレゼント・タイム

床田とこ

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 私の席は、教室の後ろの出入口に一番近い角席。授業終わり、礼をするのと同時に廊下に出れば、普通に歩いても学食販売パン人気3位の『伝説のあんぱん』は、いつも二個は残っている。
 これは、入学してからこの一年数ヶ月で既に検証済み。私はその二個のうちの一個とパック牛乳を購入し、大抵それをお昼ご飯に充てている。

「先生。久世安藤政権の安藤は、信由ではなくて、信正です。息子の方」

 潑剌としたスポーツマン特有の通る声。
 おいおい。やめてよ。

 私の席から物理的に一番遠くに座ってる左端前方のあいつが、いつものようにそう指摘する。嫌味を欠片も感じさせないトーンで言葉を挿され、梶原先生は少し黙ってから、ああ、そうだったかな、と教科書に顔を近付けて確認している。
 あー、万事休す。
 チャイムまであと7秒。

「久世広周と、えーと、安藤信正の2人が事実上の最高権力者になり……チャイム鳴ったけどこのページ最後まで読むぞお」

 空腹男子の溜め息が四人分くらい漏れ出たのが聞こえた。私はこの時点で『伝説のあんぱん』を諦める。
 ああ。あんぱん、食べたかったなあ。
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