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①
しおりを挟むあー、あんぱん食べたい。
今日も私は、あんぱんを食べたい。
否。本当は、学食内の食堂でうどんやカレーを食べたい。財布の中身がいつも豊かなら。
でも現実、毎日は無理。色々な可能性と選択肢の中から、今日も私の思考は「あんぱん」をチョイスするのだ。
もうすぐ四限目が終わる。
気持ちはあんぱん一直線。
しかしここで、今日は僅かなアクシデント発生。
授業は退屈な日本史。あと1分8秒で昼休みなのに、梶原先生は教科書の本文をつらつらと読み始めた。
ちょっとちょっと。すごい中途半端。多分この章の半分も読まないうちに、チャイムは鳴ってしまう。これは想定外。
ああ、あと58秒。
「……えー、桜田門外の変で井伊直弼が暗殺されて以後の幕政で力を持ったのは、久世広周と安藤……えーと安藤、の、信由の二人で……」
梶原先生は、老眼レンズ付きの眼鏡を上下に動かしながら、もたもたと教科書の文をなぞる。そんなのどうでもいい。今の私には安藤よりも、あんぱん。
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