お悔やみ申し上げます

陽花紫

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同級生

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 二十歳を迎えて、二十一歳になり大学生活を満喫しているころ、その知らせはやってきた。

「あんたの同級生のあの子、亡くなったって。」

 三月生まれだった彼は、まだ二十歳で、バイクでの事故だったそうだ。

彼とは幼稚園、小学校と一緒で通っていた塾やスイミングスクールも一緒だった。

中学に入ってからは影も形もなかったが、私の記憶の中では純朴そうな瞳の丸顔の少年がサッカーをしながらはしゃいでいる。

 そんな彼が、亡くなった。

私の母が彼の母と仲が良く、葬儀には母のみが参列した。
私は大学の授業を受けながら、ぼんやりとそのことを思った。

「お母さん、気の毒だったわー。」
帰宅してお茶を飲みながら、母が呟いた。十代後半には茶髪でちゃらちゃらしだした彼は、大型の免許を取ったばかりだという。

「でも、あそこもお兄ちゃんがいるから大丈夫ねきっと。」
 彼のお兄さんも、気の毒だったと思う。

年を重ねるにつれ、私の場合はとくに中学や高校でたまに人の死の話を友達や同級生とすることがある。

母を亡くしてシングルファザーだとか、小学校の時同級生の葬儀に行ったとか、その時の話を聞いても亡くなった人間の顔はいつでも安らかに眠っているようで、青白くて、それでいて冷たいのだそうだ。

 きっと彼も、安らかに眠っている。
遺された家族は、寂しくて悲しくてやりきれないけれど、本人は穏やかに過ごしていると思う。
それだけで、私はいいのではないかと思う。

「私が死んだら泣いてくれる人はいるのかな、私が死んだら…。」

 青春時代、何度もそんなことを考えた時期もあった。けれど実際に死を目の当たりにすると、そんな妄想はどうでもよくなる。


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