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使用人という名の女奴隷たち
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屋敷の使用人同士として、私と彼女は出会った。雨の日も風の日も、私たちのご主人様のために身を粉にして働いた。一緒に笑って針仕事をしたり、一緒に怒られながら料理をしたり、一緒にあくびをしながら掃除をしたり出会ってから私たちは同じ部屋で起きては寝てを繰り返した。
いつしか私たちは大人になって、彼女はとても美しくなった。すらりと伸びた手足に、整った顔、いつもはキャップのなかに押し込んでいる金色の髪は水浴び場で見ると陽の光をうけてきらきらと輝いている。その下に隠された胸のふくらみも、胸飾りの色も、私たちは互いに知り合っている。
「ねえ、この貝殻あなたに似合うんじゃない?」
「どうして?」
「その胸にサイズが合うからよ。」
時折冗談を言っては笑わせる彼女が、私は好きだった。ガラスのように澄んだ声をしてけらけらと笑う彼女は私がこれまでに見たどの人間よりも愛らしい。
「こら、あなたたち!どこからこんなもの持ってきたの!」
長からお𠮟りを受けても、彼女はその場はしゅんと反省した振りをして次の瞬間にはけろりとした顔をしている。私もつられて、いつしか立ち直りが早くなった。
ある日、私は初めて他の使用人の男に口説かれた。なんでも、いつも真面目に働いている振りをしている私の姿を見て男は健気だと思ったそうだ。さらに、私を守りたい、ともその男は言った。何から私を守るというのだろうか、私はそんな男の考えがわからずに丁寧に断りをいれていつもの部屋へと戻った。
「ねえ、どうして彼を断ったの?」
部屋に入るなり、聞き覚えのある声が耳元で囁く。腕を掴んだその手はごつごつとしており、私よりもはるかに大きい。目を凝らして背後を確認すると、そこにはいつも私が世話をする相手の顔があった。ご主人様の息子だ。
「びっくりした?」
にやりと人の悪い笑みを浮かべると、息子は私のスカートを捲り上げ肌に触れた。
その後のことは思い出したくもない。
「君は僕のことが好きなんだね。」
去り際に投げ掛けられたその言葉を否定したくて、水浴び場に籠った私は血が出るほどきつく体を洗った。胸元に散らばった赤い花弁や、搔き出してもとめどなく溢れる濁った液体に、吐き気がした。私が何をしたというのだろうか、口説いた男を断ったのがいけないのか、彼女に思いを寄せるからこうなったのか、そもそもこの屋敷に拾われたのが運の尽きだったのだろうか。
しばらくして、冷たい風がふいてきた。私は脱ぎ捨てた服で体を拭い、ぼうっとどんよりと雲がたちこめる空を眺めた。今の私の心もきっとこんな色をしているに違いない。
いつまでそうしていたのだろうか、皺の寄った生乾きの服の冷たさに凍えながらも膝を抱えていると遠くから女のすすり泣く声が聞こえた。慌てて身を隠し、物陰から水場を伺うとそこには胸に手をあてるいつもとは違った様子の彼女の姿があった。私はすぐさま飛び出し、彼女に声をかけた。
「ねえ、どうしたの?だいじょうぶ?」
次の瞬間、私と彼女は目を丸くした。合わせ鏡のように、彼女の胸元にも赤い花弁があったのだから。そして二人して子供のようにおいおいと泣いた。彼女が言うがまま、私は彼女の中に注がれた液体をゆっくりと搔き出してやった。
「わたし、死んでしまいたい。」
両手で顔を覆い泣きはらす彼女の肩を抱き、ゆっくりといつもの部屋に向けて足を進める。時折鼻をかすめる彼女の甘い匂いに、私は女を感じて震えた。
「わたしもよ。」
本心でもない言葉を口にして、私は彼女をベッドまで運んだ。青ざめた肌も、今は彼女を美しく見せるためのものでしかない。私はそっと瞼に唇を寄せて彼女を抱きしめた。
「今日は、一緒にいて。」
「ええ、そうしましょう。」
互いに涙を流し合い、時にはその腰に腕を回して身を寄せ合う。まるで遭難した山小屋の中にいるみたい。私の中の悪魔がそう囁く。これが本当に山小屋の中だったらどんなによかったことか。ここは牢屋のように冷たく、苦しい。同じ布切れの中にいるはずなのに、私のほうはひどく冷たい。
「だいじょうぶ?」
閉じられていたはずの彼女の瞼が開かれて、私を見つめる。私は唇に力をこめて、笑みを浮かべた。
「ありがとう、だいじょうぶ。」
いつしか私たちは大人になって、彼女はとても美しくなった。すらりと伸びた手足に、整った顔、いつもはキャップのなかに押し込んでいる金色の髪は水浴び場で見ると陽の光をうけてきらきらと輝いている。その下に隠された胸のふくらみも、胸飾りの色も、私たちは互いに知り合っている。
「ねえ、この貝殻あなたに似合うんじゃない?」
「どうして?」
「その胸にサイズが合うからよ。」
時折冗談を言っては笑わせる彼女が、私は好きだった。ガラスのように澄んだ声をしてけらけらと笑う彼女は私がこれまでに見たどの人間よりも愛らしい。
「こら、あなたたち!どこからこんなもの持ってきたの!」
長からお𠮟りを受けても、彼女はその場はしゅんと反省した振りをして次の瞬間にはけろりとした顔をしている。私もつられて、いつしか立ち直りが早くなった。
ある日、私は初めて他の使用人の男に口説かれた。なんでも、いつも真面目に働いている振りをしている私の姿を見て男は健気だと思ったそうだ。さらに、私を守りたい、ともその男は言った。何から私を守るというのだろうか、私はそんな男の考えがわからずに丁寧に断りをいれていつもの部屋へと戻った。
「ねえ、どうして彼を断ったの?」
部屋に入るなり、聞き覚えのある声が耳元で囁く。腕を掴んだその手はごつごつとしており、私よりもはるかに大きい。目を凝らして背後を確認すると、そこにはいつも私が世話をする相手の顔があった。ご主人様の息子だ。
「びっくりした?」
にやりと人の悪い笑みを浮かべると、息子は私のスカートを捲り上げ肌に触れた。
その後のことは思い出したくもない。
「君は僕のことが好きなんだね。」
去り際に投げ掛けられたその言葉を否定したくて、水浴び場に籠った私は血が出るほどきつく体を洗った。胸元に散らばった赤い花弁や、搔き出してもとめどなく溢れる濁った液体に、吐き気がした。私が何をしたというのだろうか、口説いた男を断ったのがいけないのか、彼女に思いを寄せるからこうなったのか、そもそもこの屋敷に拾われたのが運の尽きだったのだろうか。
しばらくして、冷たい風がふいてきた。私は脱ぎ捨てた服で体を拭い、ぼうっとどんよりと雲がたちこめる空を眺めた。今の私の心もきっとこんな色をしているに違いない。
いつまでそうしていたのだろうか、皺の寄った生乾きの服の冷たさに凍えながらも膝を抱えていると遠くから女のすすり泣く声が聞こえた。慌てて身を隠し、物陰から水場を伺うとそこには胸に手をあてるいつもとは違った様子の彼女の姿があった。私はすぐさま飛び出し、彼女に声をかけた。
「ねえ、どうしたの?だいじょうぶ?」
次の瞬間、私と彼女は目を丸くした。合わせ鏡のように、彼女の胸元にも赤い花弁があったのだから。そして二人して子供のようにおいおいと泣いた。彼女が言うがまま、私は彼女の中に注がれた液体をゆっくりと搔き出してやった。
「わたし、死んでしまいたい。」
両手で顔を覆い泣きはらす彼女の肩を抱き、ゆっくりといつもの部屋に向けて足を進める。時折鼻をかすめる彼女の甘い匂いに、私は女を感じて震えた。
「わたしもよ。」
本心でもない言葉を口にして、私は彼女をベッドまで運んだ。青ざめた肌も、今は彼女を美しく見せるためのものでしかない。私はそっと瞼に唇を寄せて彼女を抱きしめた。
「今日は、一緒にいて。」
「ええ、そうしましょう。」
互いに涙を流し合い、時にはその腰に腕を回して身を寄せ合う。まるで遭難した山小屋の中にいるみたい。私の中の悪魔がそう囁く。これが本当に山小屋の中だったらどんなによかったことか。ここは牢屋のように冷たく、苦しい。同じ布切れの中にいるはずなのに、私のほうはひどく冷たい。
「だいじょうぶ?」
閉じられていたはずの彼女の瞼が開かれて、私を見つめる。私は唇に力をこめて、笑みを浮かべた。
「ありがとう、だいじょうぶ。」
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