桜姫 ~50年後の約束~

雨宮よひら

文字の大きさ
上 下
19 / 21
薔薇ノ国編

薔薇ノ愛

しおりを挟む
 「ん・・・?」
背中を生暖かい手で撫で上げられたような気がした。
―――なにをやっている・・・?―――
奈々実が魔力を使っていることは、繋留者であるセヴランに伝わる。離れた場所にいてもすぐにわかる。しかし、いつものようにチョーカーでコントロールしながら細く絞って圧縮している様子とは、全然違うことに戸惑う。最初、生暖かい程度だった感触が、すぐに耐えがたいほどの熱さになり、汗が噴き出てくる。頭がくらくらする。溜まった書類をやっつけるために執務室にいたことが幸いだった。兵馬の訓練や港湾設備の現場の見まわりをしている時だったら、対処に困っただろう。
「セヴラン様?」
斜め前方の机で書類の整理をしていたカミーユが、怪訝な顔で見ている。
「なんでもない、ちょっと根を詰め過ぎたかもしれん。休憩させてくれ」
 デスクワークは頭が痛くなるんだ、と誤魔化して、セヴランは久しく使っていなかった仮眠室に逃げ込んだ。鍵をかけ、汗を乱雑に拭い、思春期のように膨れ上がって制御できない自分の下半身を握る。
―――何をやっているんだ!? ナナミッ・・・!―――
奈々実が全力で魔力を使っているのがわかる。それがなぜ、自分の下半身に異変をもたらすのかはわからない。屈辱的だが痛いほど熱く、硬く勃ちあがった下半身を扱き始めると、止めようにも止められなくなった。少し前に、奈々実にたどたどしく擦り上げられたあのむず痒いようなじれったい快感とは完全に種類の違う、目が眩むような強烈な性の衝動に、腰が砕けそうになる。絶対に認めたくなかったが、未成年の奈々実が泣き叫ぶのを無視して押し倒し、荒々しく引き裂いて無理矢理に突き刺し、野獣のようにめちゃくちゃに犯しているかのような、危険な熱さだった。奈々実の泣き顔が脳裏に浮かび、痛々しいのに、可哀想なのに、こんなことをしてはいけない、絶対にしないと誓ったはずなのに、突き上げて突き上げて突き上げて、止めることができない。その罪悪感に横っ面を張り倒されるような、それでも止められない獰猛な性衝動に背筋が凍った。自分が男なのだ、オスなのだということが厭わしくなるほどに、原始的、野性的な衝動が出口を求めて下半身へと押し寄せてくる。唾棄したくなるくらいに本能に忠実で、恥ずかしくて、それなのに下半身を扱く手を止められない。もしも奈々実が目の前にいたら、獣欲のままにむさぼり喰らうのは確実だと思う。
「く・・・、うっ・・・!」
五分とたたずに放出する。しかし下半身の滾りはおさまらず、木石のように硬くなったまま、身体中の血が溶岩のように熱くなったまま、奈々実を求める衝動はおさまらないままで、セヴランは自分の手を止めることができない。右手が疲れてしまって、左手で扱く。右利きなので左手では少し、力の入れ方や握り方、動かし方の加減が違って、じれったくて右手にもどす。奈々実の肌、奈々実の身体がそこにあるかのように、奈々実の吐息や泣き声が耳元に聞こえるかのように、五感のすべてが奈々実に飲み込まれて、包み込まれている。ぷにぷにムチムチした雲のような身体に溺れ、窒息しそうになる。仮眠室の簡易寝台に辿り着くこともできず、セヴランは床に崩れ込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

あなたへの恋心を消し去りました

恋愛
 私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。  私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。  だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。  今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。  彼は心は自由でいたい言っていた。  その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。  友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。  だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

処理中です...