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播磨で・・・

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 源太郎は始祖様に言われた通り小寺家を調べるべく播磨へ向かう。

 その頃の播磨は守護職の赤松晴政が浦上村宗によって傀儡化されており、国人衆を守り抑える力を持つ者が存在しない為、群雄割拠ではあるが国人衆が辛うじて連携を結び守護に反抗を続けている状態に陥っている。

 此度家臣団の様子を調べる小寺家であるが、現当主は則職といい、姫路の手前の御着と言う地域を根拠地としている豪族である。

 天文7年(1538年)の播磨は尼子晴久が侵攻してきて赤松晴政が淡路へ逃亡した年であり、守護不在ながらも小寺則職が御着から姫路までの地域を押さえて小康状態を保っていた。

 源太郎は調べを進めるうちに『隣国から流れて来た一族』の情報に辿り着く。

 『黒田重隆という者が備前福岡から流れて来て、姫路の廣峯神社で目薬を売って生活をしている』と言う話であった。

 廣峯神社へ行ってみると、確かにそれらしき人物が居たので目薬を買い、話しかけてみる。

 「ほぉ~、これがこの辺で有名な目薬でござるか?」

 「はいな、『玲珠膏』言いましてな、お陰様でよぅ売れとりますぅ」

 「見た処、御主人もそれがしと同じく武士のように思えるのだが・・・」

 「お判りでっか?ワテも武士でおます。そやけど、このご時世やから食うて行くのに形振り構ってられまへんで」

 「真、その通りでござる。戦乱の世が早く終わって欲しいものでござる」

 「ところで、お客はん。その言葉使い・・・別の土地から来はったんでっか?」

 「それがし、東海の山国から来申した」

 「はぁ~・・・そら、ごっつい遠い所から」

 「まぁ、お役目もあります故な・・・」

 「そら大変なこって」

 「ここ播磨は小さな諍いが多うござるなぁ」

 「まぁ、仕方ありまへんな。これが日乃本どこでもやさかい」

 「いや、そうでもござらぬ。摂津・河内・和泉・山城・近江・越前・美濃・伊勢・志摩・尾張・三河・遠江・駿河・信濃・甲斐・越後は平穏に成ったそうじゃ」

 「は~、羨ましいこって」

 「ご主人は地元の国人の方かの?」

 「そうやおまへん。ワテ、元々は隣の備前・福岡におりましてん」

 「そうでござったか。お役目で播磨へ?」

 「備前の方も、大内だぁ尼子だぁ別所だぁ山名だぁ・・・ごちゃごちゃやってますさかい、マシな播磨へ・・・」

 「大変でござるなぁ・・・ご主人だけで出張って来られたのかの?」

 「ちゃいます。一族郎党引き連れて来ましてん」

 「そう言えば、長々と引き留めたのに名乗らずご無礼仕った。それがし武田信義と申す」

 「ひゃ~・・・あんたさんがここまで響いてくる武田様かいな?」

 「何が響いておるのか解らぬが・・・武田源太郎信義でござる」

 「ワテは黒田重隆いいます。さっき領内が平穏言われたは、ワテ等に『来い』って事でっか?」

 「図星を刺されましたな・・・その通りでござる。この目薬で更に思いが強くなり申した」

 「何でまたワテ等なんかを?」

 「実は申し難い事なのだが・・・領内は街道整備・農地開発・新町造りの整備と仕事が目白押しでの。領民も武士もやる事だらけで人手が少しでも多く欲しいのでござる。増してや、この目薬は領民達の為になり申す」

 「あらららら・・・随分と熱烈なお誘いで」

 「領内が豊かになれば、戦さを仕掛けずとも対等な同盟、若しくは降ってくれますからの」

 「話は解りました。店仕舞いしますから、一族の前で話してもらえますか?」

 「承知仕った」

 源太郎は重隆に連れられ家族が住む邸宅へ行った。

 そして、一族の者全員に武田領内への移住を依頼した。

 その5日後、源太郎は黒田一族と共に東へと向かうのであった。
 

 











 
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