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再び西へ(その1)
しおりを挟む異人の来襲によってもたらされた物は鉄砲1200・大砲(カルヴァリン砲)240・短銃1600・ガレオン船6・小舟120・小麦を始めとする様々な植物の種子・大量の銀である。
源太郎はそれらの物資を調査すべく、領内各地の親しい職人や農民に製造法や耕作法の試行を依頼して回り、越前の朝倉孝景・南近江の六角定頼・大阪地域の北畠晴具の所にも短銃を持ち込んで相談する事にした。
街道と街並みの整備がひと段落着いた甲斐・信濃・越前の領民達は、新しくもたらされた物のお陰で忙しくなり、新たな活気が生まれるであろうし、駿河・遠江・三河・尾張・伊勢・志摩・美濃の新しく武田家の領民となった者達は、冬の雪に悩まされる事が少ない分、街道や街並みの整備と共に新しくもたらされた物によって、活気を得る事となるであろう。
源太郎は雪が降り始める時期にも関わらず越前に赴いた。
「おぅ!武田殿、一体、如何なされたのじゃ?領に帰られたかと思うたら、取って返して来られて緊急に会いたいとは・・・」
朝倉孝景は驚きながらも、源太郎の様子がただ事ではない事を察している。
「朝倉様、かたじけのぅござる。実は先頃、駿河が言葉を異とする国の船団の兵達に襲われました」
「何と?!!!・・・して、戦さは如何であった?」
「こちらは負傷者は出ましたが、撃退できました」
「・・・それは良かった。されど、足を運ばれたは話たき事があるのか?」
「はい、これを見て頂きとぅござる」
源太郎は短銃を5丁、朝倉の側用人に託して孝景の前へもっていかせた。
「何じゃ?これは?」
孝景は短銃を手に取って尋ねる。
「これは『鉄砲』と申す物だそうで、その筒の部分から金属の玉を射出致すものでござる」
「・・・という事は、弓の様な使い方をするものか?」
「はい、そのとおりにて」
「これに弓と違う困った特徴でもあるのか?」
「はい、鉄の玉を射出すると申しましたが、その際、火薬という物を爆発させて、その力を使って射出します故、尋常でなく大きな音が響きますことから、騎馬隊にとっては天敵となり申す」
「・・・そうなのか?何か弱点は無いのか?」
「一発発射すると、次を打つまでに弓以上に時間が掛かります」
「まぁ、良かったと安心すべきであろうか・・・それはそうと、襲ってきたのは何という国じゃ?」
「イスパニアと申すそうで、船で何十日も掛かる場所にあるそうでござる」
「その事があっても安心できぬのじゃな?」
「その国は、武力でもって他国を襲い征服したのち、領民を牛馬の如く酷使して、その地にあるものを悉く奪い続ける事を目的とするそうでござる」
「ん?!その者達は真に人なのか?」
「我らはそう思っても、向こうは、腹の底では我らをそう思っておらぬ様でござる」
「言葉を異とすると言っておったの?よくもそこまで解ったモノよ」
「はい、明の国からは交易で物を得るそうで、明の国の言葉が解る者がおりました故、その言葉を通じて何とか解ったのがそこまででござる」
「そうであったか・・・ならば、他にも行かれる所があるのであろう?」
「あとは南近江の六角様、京の将軍家、大阪地域の北畠様をお尋ね致す予定でござる」
「ご苦労じゃのぅ。ここでは、ゆるりと為されるが好い」
「かたじけのぅござる」
「何のなんの。そなたのお陰でこの地も随分と平穏に成った。この程度では礼にもならぬよ」
源太郎は、孝景に渡した5丁分の短銃に相応する量の火薬と弾丸も渡して調査を依頼した。
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