上 下
63 / 78

再び西へ(その1)

しおりを挟む











 異人の来襲によってもたらされた物は鉄砲1200・大砲(カルヴァリン砲)240・短銃1600・ガレオン船6・小舟120・小麦を始めとする様々な植物の種子・大量の銀である。

 源太郎はそれらの物資を調査すべく、領内各地の親しい職人や農民に製造法や耕作法の試行を依頼して回り、越前の朝倉孝景・南近江の六角定頼・大阪地域の北畠晴具の所にも短銃を持ち込んで相談する事にした。

 街道と街並みの整備がひと段落着いた甲斐・信濃・越前の領民達は、新しくもたらされた物のお陰で忙しくなり、新たな活気が生まれるであろうし、駿河・遠江・三河・尾張・伊勢・志摩・美濃の新しく武田家の領民となった者達は、冬の雪に悩まされる事が少ない分、街道や街並みの整備と共に新しくもたらされた物によって、活気を得る事となるであろう。






 源太郎は雪が降り始める時期にも関わらず越前に赴いた。

 「おぅ!武田殿、一体、如何なされたのじゃ?領に帰られたかと思うたら、取って返して来られて緊急に会いたいとは・・・」

 朝倉孝景は驚きながらも、源太郎の様子がただ事ではない事を察している。

 「朝倉様、かたじけのぅござる。実は先頃、駿河が言葉を異とする国の船団の兵達に襲われました」

 「何と?!!!・・・して、戦さは如何であった?」

 「こちらは負傷者は出ましたが、撃退できました」

 「・・・それは良かった。されど、足を運ばれたは話たき事があるのか?」

 「はい、これを見て頂きとぅござる」

 源太郎は短銃を5丁、朝倉の側用人に託して孝景の前へもっていかせた。

 「何じゃ?これは?」

 孝景は短銃を手に取って尋ねる。

 「これは『鉄砲』と申す物だそうで、その筒の部分から金属の玉を射出致すものでござる」

 「・・・という事は、弓の様な使い方をするものか?」

 「はい、そのとおりにて」

 「これに弓と違う困った特徴でもあるのか?」

 「はい、鉄の玉を射出すると申しましたが、その際、火薬という物を爆発させて、その力を使って射出します故、尋常でなく大きな音が響きますことから、騎馬隊にとっては天敵となり申す」

 「・・・そうなのか?何か弱点は無いのか?」

 「一発発射すると、次を打つまでに弓以上に時間が掛かります」

 「まぁ、良かったと安心すべきであろうか・・・それはそうと、襲ってきたのは何という国じゃ?」

 「イスパニアと申すそうで、船で何十日も掛かる場所にあるそうでござる」

 「その事があっても安心できぬのじゃな?」

 「その国は、武力でもって他国を襲い征服したのち、領民を牛馬の如く酷使して、その地にあるものを悉く奪い続ける事を目的とするそうでござる」

 「ん?!その者達は真に人なのか?」

 「我らはそう思っても、向こうは、腹の底では我らをそう思っておらぬ様でござる」

 「言葉を異とすると言っておったの?よくもそこまで解ったモノよ」

 「はい、明の国からは交易で物を得るそうで、明の国の言葉が解る者がおりました故、その言葉を通じて何とか解ったのがそこまででござる」

 「そうであったか・・・ならば、他にも行かれる所があるのであろう?」

 「あとは南近江の六角様、京の将軍家、大阪地域の北畠様をお尋ね致す予定でござる」

 「ご苦労じゃのぅ。ここでは、ゆるりと為されるが好い」

 「かたじけのぅござる」

 「何のなんの。そなたのお陰でこの地も随分と平穏に成った。この程度では礼にもならぬよ」

 源太郎は、孝景に渡した5丁分の短銃に相応する量の火薬と弾丸も渡して調査を依頼した。



 

 

 










 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

信濃の大空

ypaaaaaaa
歴史・時代
空母信濃、それは大和型3番艦として建造されたものの戦術の変化により空母に改装され、一度も戦わず沈んだ巨艦である。 そんな信濃がもし、マリアナ沖海戦に間に合っていたらその後はどうなっていただろう。 この小説はそんな妄想を書き綴ったものです! 前作同じく、こんなことがあったらいいなと思いながら読んでいただけると幸いです!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

新・大東亜戦争改

みたろ
歴史・時代
前作の「新・大東亜戦争」の内容をさらに深く彫り込んだ話となっています。第二次世界大戦のifの話となっております。

処理中です...