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初めて見る物
しおりを挟む武田勢が鹵獲した6隻の大型船と、戦闘の結果死亡した白人が身に付けていた装備品、上陸に使われた70艘余りの小舟、ほぼすべてが初めて見る物ばかりで、操作法から製造法までと言わず、何から何まで無限に調べる事ばかりである。
生き残っている船員に尋問するにしても、こちらはイスパニアの言葉を知らないし、相手も日乃本の国の事がを知らないが、幸運な事に明の国と交流があるらしく、互いの明の国の言葉を知る者を仲介して意思疎通をしている。
その結果判った事
1・明の国の反対側に大きな海を隔てた所に大きな陸地がある。
2・上陸した船員たちが戦闘に使用した筒状の物・・・非常に燃えやすい物を混ぜて作った『火薬』とでもいうべき物に火をつけて、瞬時に燃焼させる『爆発』という現象を利用して鉄などの金属を飛ばす武器である事。
3・大型の船は『ガレオン』と呼ばれる種類で、主に風の力を利用して進む事。
4・イスパニアは、海の向こうの陸地にあるいくつもの国を滅ぼし、そこの民を酷使して銀山を採掘させる等で得た銀を使って、明の陶器や絹を大量に獲得し、母国に持ち帰って莫大な利益を得ている事。
5・今回は船団の司令官が、海の流れの先にある国を調べて新しい領地とする目的で来航した事。
・・・である。
駿府館で源太郎は晴信や駒井、志摩衆の代表者たちを集めた上で会議を始めた。
「各々方、此度の出来事への対応かたじけのぅござる。されど、あの異人らが申した事は捨て置く事が出来ぬ内容ばかりであった故、知恵を借りたく集まって頂いた」
・・・と源太郎が話を始めると晴信が口を開いた。
「兄上、あの鉄の玉を打ち出す『てつはう』だったか・・・あれは弩弓と使い方は似て居るが、大きな音が難点でござるのぅ」
「左様でございますな晴信様。じいもあの音は難点と考えまする。味方の馬が驚いて混乱を引き起こしまする」
「晴信と駒井は『てつはう』・・・言い難い故『鉄砲』と呼ぼう。『鉄砲』は使い難い武器という事で意見が同じなのだな?」
「「はっ!左様でございます」」
「ワシは敵の騎馬隊を引き付けた上で使えば、弩弓よりも効果は大きいと考えて居る」
「「「「「「「「「「なるほど・・・」」」」」」」」」」
「異人共が使っておった故ではないが、水上戦でも有効であろう」
「「「「「「「「「「そうでございますな」」」」」」」」」」
「それはそうと・・・イスパニアとかいう国は、戦さで国の富を増やす方針らしい。されど、異人の国はほかにもあって、物のやり取りのみで国の富を増やす方針の国もある様じゃ。如何するかのぅ?・・・」
「兄上、先ずは同じ物を作れるようになる事が基本になりますな」
「そうじゃな・・・先ず武田領内全体で『ガレオン』とかいう船と『鉄砲』が作れるようになる事が必要じゃの」
「お館様、此度は運良くお館様がおるところへの来襲であったから良かったものの、他の国の領主の軍勢であれば混乱を引き起こし、異人共に橋頭堡を作られて居ったでございましょう。駒井は幕府や朝廷を使って、日乃本全部の領主へ伝える事も肝要と存じまする」
「そうであるな・・・早速西へ行かねばならぬか」
新しくもたらされた物への調査は武田家の諸将全体で当たる事となり、源太郎は再度西へ旅立つ事となった。
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