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戦の後の躑躅が崎館

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 駿河口にの砦に派遣された軍勢と、相模口の砦に派遣されていた軍勢が、躑躅が崎館へ帰還した。

 派遣されていた諸将達が大広間に集合している。

 「各々方、戦でのお働きご苦労であった!で晴信、相模口の模様を簡単に話して欲しい」

 「はっ!相模口では、計画の通りに砦の前方へソックリの砦を建造し、それを焼き払わせましてございます。北条勢はその後、小田原へ帰還した由にございます」

 「うむ、良うやった!短期間にも拘らず見事である!」

 「いえいえ、お館様のこれまでの領内整備のお陰でございます。急速に建造物を増やす為に、基準を制定し、予め加工した建材を用意しておき、土地を整地したのち速やかに建てる・・・この2年半程度の期間で積み上げた甲斐・信濃の領民達の最大の資産かと思われまする」

 「ワシを褒める必要はない!皆の働きがあればこその戦果なのじゃ。相模口の各々方、ワシの無茶な『北条を満足させて追い払え』と言う要求を実行に移してくれて、改めて心から感謝いたし申す」

 と源太郎はいったん言葉を切った。

 「そして駿河口の各々方、今川は退却したものの、我が拙い指示が原因となり、近い内に再度攻めてくるかもしれぬ。その時も良しなにお願い致し申す!本日より明日一杯迄宴会と致す。思う存分楽しんでいかれよ!」

 「「「「「「「「「「はっ!有難き幸せ!」」」」」」」」」」

 大広間を宴会場にする模様替えの為、いったん解散となった。





 自室に下がった源太郎は諏訪頼経と信繁を呼びに行かせた。

 やがて、信繁と頼経と・・・なぜか己斐姫まで源太郎の自室に来た。

 「すまぬ!この通りじゃ!意気揚々と二人を連れだしたくせに初陣を飾らせてやれなんだ」

 源太郎は3人を前にしたとたん、両手の拳を床に付けて深々と頭を下げた。

 「「兄上!!!お止めくだされ!!!」」

 頼経と信繁は慌てて源太郎を制止した。己斐姫は驚いて目を見開いたままである。

 「「戦は何があるのか解らぬ事を実感しました故、これだけでも戦を舐めずに済みまする」」

 「そう言ってくれると、少し気持ちが楽になる。かたじけない」

 漸く源太郎は頭を上げた。

 と、そこへ己斐姫が近寄ってきてチョコンと源太郎の膝の上に座った。

 そして、源太郎を見上げて

 「あにうえさま、おっとを けがなく かえしてくださり ありがとうございます」

 とニッコリと笑顔を浮かべながら言った。

 「己斐姫様は良い妻じゃのぅ。それがしは義兄として誇らしゅうござる」

 源太郎は己斐姫の頭を撫でた。

 (この穏やかな時が永遠に続いて欲しい・・・)

 「はい こいは あにうえさまの じまんの いもうとに なりまする」

 「かたじけない。義兄としてこれ以上の喜びはありません」

 そこへ正妻の蓮が来た。

 「お前様、宴会の準備が整いました。皆さま、大広間へ」

 「「「はい、義姉上かたじけのぅございます」」」

 5人はそろって大広間へ向かった。






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