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どうなる北信濃・・・

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 紀元が享禄から天文へ移る頃になると北信濃の国人衆は、内輪もめを始めた越後の上杉定実・長尾為景両名を見限り、和平を以て緩やかに盟約を勧めてくる武田家になびき始めていた。
 ただその中で、高梨政頼と政頼の妹を側室としている村上義清は越後勢を後ろ盾としながらも、相争っている。源太郎も使者を送って高梨・村上両氏に和平を求めていたが、体よくあしらわれていた。

 天文2年(1533年)晩春

 源太郎は諏訪へ旅立つ直前、高梨・村上両名へ、越後の上杉・長尾両氏への橋渡しを依頼する使者を立てた。橋渡しを受けてくれる方へ助力するつもりであったし、両名が受けてくれるならば、和平の仲立ちをするつもりでもあった。そして、北国街道を整備して越後との往来の増加を考えていた。それに伴い、その準備として、増えた人口を海野平に投入して開発を促進している。
 実際に、以前は村上氏の支配下にあると見られていた海野・真田一族が武田の方針に賛同し、ほぼ対等の盟約を結んでいるのに等しい待遇を受けている様子を見た、他の村上氏に臣従をしている国人小領主は、武田の方針に賛同する方向へ考えを変える者も出始めていた。






 その様な状況を苦々しく思う村上義清は側近・須田満親と話をしていた。

 「満親、海野の者達が武田に与力氏始めて以来、我等の周辺はおかしゅうなってきたのぅ」

 「武田が街道整備と併せて、国人小領主の了解を取り付けたうえで開発を進めております故、それにあやかろうと考える者が出てきております」

 「誰が村上から抜けようとしておるか・・・判るか?」

 「はっ!今の処、井上清政と島津貞忠が海野を通じ、武田に近づこうとして居るか・・・と」

 「今迄大した事ではないと放っておいたが、事ここに至っては手を打たねばなるまい。小さき者どもを潰したとて、手が掛かり過ぎる故、武田を潰すしかあるまい」

 「されど義清様、今の武田の当主は信虎と些か違う様でして・・・」

 「ほぅ、『暴虐の人食い虎』がくたばったか?目出度い!ハハハハハ・・・」

 「行方不明との事でござるが、信虎がおらぬ事は確実かと・・・」

 「よし、義兄とは一時停戦じゃ」

 「して、何となされます?」

 「武田が言ってきておる会談、高梨と共に乗ろうぞ。されど我等は軍勢と共に行く。そして、上杉・長尾の越後勢にも加勢してもらい、武田を逃さず殲滅する。さすれば小さき者共も戻って来よう」

 「それは良いお考えにございます。早速使者を向かわせまする」













 それから数日後、躑躅が崎館の源太郎の元に村上・高梨両名から会談を海野平にて受け容れる旨の文が届いた。

 「幸隆殿、晴信。待って居った返書が来た。さて、素直に喜んで良いモノか?・・・」

 「やはり兄上も・・・何やら裏を感じまするな」

 「源太郎様、村上殿は何事も戦にて物事を見る御仁かと・・・」

 「今迄無しの礫だったのが、此度は返書がある故、何と無う不自然さを感じてのぅ」

 「源太郎様、村上殿達は戦支度した兵を大勢連れて来るものかと・・・」

 「兄上、何やら村上殿は父上に似ておいでの様な・・・」

 「やはり・・・そなたもそう思うか」

 源太郎は続けた。

 「万が一への備えじゃ・・・海野平への荷に予備の武具を忍ばせておくのじゃ。将兵達も平民に紛らわせて海野平へ行かせて、会談の日までは開発に従事させよう。幸隆殿、ワシ等は視察と会談目的故、少人数にて旅立とうぞ。晴信、悪いが、此度も今川と北条へ目を光らせていて貰うぞ。そなたには留守番ばかりで申し訳ないのぅ。あとは、こちらの思惑を超える事が起こらぬ事を祈るばかりじゃ。二人とも頼み参らせる」

 晴信と幸隆は床に両手の拳を付け頭を下げた。

 「「ははっ!お心のままに」」







 






 
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