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滞在中
しおりを挟む海野家に滞在中、源太郎は海野領の人達の生活を見て回った。そして、農作業をやらせてもらったり、弩を見せて狩りに同行させてもらったりしていた。
滞在して3日目の事、海野家の館に2組の訪問者たちが来た。
「「こちらの館は海野様の館で宜しかろうか?」」
「はい、主・海野棟綱が館にございます」
「「御館様はおいでになられるか?」」
「はい、確認いたします故、少々お待ち下さりませ。失礼でござりますが、どなた様でござりましょうか?」
「申し遅れた。木曽義在でござる」
「小笠原長宗でござる」
「「武田様や諏訪様がご滞在と聞き、海野様方と話の機会を頂きに参った次第」」
「はっ!早速お取次ぎいたしまする。中にてお待ち下さりませ」
すぐさま館から領主一族・真田一族・武田一行の元へ使いが出た。
役半刻(1時間)後、館に全員が揃った。
「木曽様、小笠原様、遅くなり申し訳ござりませぬ。それがしが当主・海野棟綱でござる。そして、右側におるのが倅・幸義、左側におるのが娘婿・真田頼昌と我が外孫たちでござる」
「海野幸義でござります」
「真田頼昌でござります」
次に源太郎が口を開いた。
「木曽様、小笠原様、それがしが武田信虎が子・源太郎信義でござります。此度、右側におられる諏訪満隣様の案内にて、信濃を周り見分を広げる旅をしておりまする」
源太郎の横で満隣が一礼をした。
「海野殿、真田殿、諏訪殿、武田様、ご挨拶いたみ入ります。それがしは木曽義在でござる。信虎様より書状にて若殿様が信濃を旅すると知らされ、皆様にお会いしとうて参上した次第でござる」
「小笠原長棟でござる。それがしも皆さまにお会いしとうて参上いたした」
「「良しなにお願いいたし申す」」
いきなり源太郎は本題を話し始めた。
「海野様方には既にお話致しましたが、木曽様、小笠原様、それがしは先日、上杉朝興様のご息女を嫁に頂きまして、武蔵の国との往来を確保する為、上野の関東管領家との往来をさらに太くする必要が出て参り申した。故に上野との通路に当たる信濃の皆様と最終的には好誼を結びたく旅を始めましてございます」
「「それは重畳。こうしてお会いできて強く感じ申した。若殿様、それは我等も望むところにございます」」
続けて二人は述べた。
「「最近、甲斐から信濃への動きがパタリと止まりました故、不思議に感じていた処、先日、武田のお館様より書状を頂き、訳を知りとうで堪らず参上した次第。若殿様の話を聞き合点がいき申した。信虎様が変わられたのは、我等が考えるに、あなた様が原因でございまするな・・・若様。誠、若いなりに似合わず恐ろしいお方じゃ」」
源太郎は憮然とした。
「皆さま揃いも揃ってそれがしを妖魔の如くいわれまするなぁ・・・それがしは正真正銘、人でござる!」
またもや源太郎を除き、一同は笑いに包まれた。
「「「「「「「「「「「「「「「「ハハハハハ・・・」」」」」」」」」」」」」」」」
「これだけの領主が一堂に会する機会は滅多にござらん。今宵は宴会を開き申す。皆様、存分にお楽しみあれ」
棟綱は上機嫌で奥に向かって宴会の用意を命じた。
宴会は無礼講であったが、終始和やかな雰囲気で夜が過ぎて行った。
翌々日の早朝、木曽義在と小笠原長棟は領地へ戻って行った。
さらにその翌日、木曽と小笠原領へ行く必要が無くなった源太郎一行は真田幸隆を伴い躑躅が崎館への帰り道の旅に就いたのだった。
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