【武田家躍進】おしゃべり好きな始祖様が出てきて・・・

宮本晶永(くってん)

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待っていたんだけど・・・

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 軍議が終わって数日

 武田勢の歩兵は全員源太郎から弩と礫弓等の装備品を支給された。そして、歩兵の部隊全てに四交代で雑木林とその周辺の獣を狩る任務を割り振られた。

 「じぃ、御館様からの援軍はまだか?」

 「はっ!まだ躑躅が崎館を出たという知らせは届いておりませぬ」

 板垣の陣で源太郎は躑躅が崎からの知らせを待っている。

 小山田勢がこの地に陣を張って約半月、自分たちが来て6日、そろそろ江戸城の戦の情勢が決まり始める頃だと考えている源太郎は悩んでいた。

 (忍びの者達のお陰でこちらの事は敵勢に知られてはいない。されど長い滞在になると、向こうもこちらも兵糧を心配せねばならなくなる。恐らく上杉様は江戸城を落とせまい。となると、できる限り早く陣を畳む方が利口じゃ。敵将の氏時殿とやらも困っておるであろうのぅ)

 (「おぅ!悩んでおる様じゃのぅ!若いうちは大いに悩むことが大事じゃ。ハハハ・・・うん、良い事じゃ好い事じゃ。そなた、忍びの者から逐一知らせを貰っておるし、北条に比べこちらの武田勢は士気が高い。兵数は相手方より少ないが、小競り合いの一つや二つぐらい勝ち逃げできるであろう?」)

 (「始祖様?!毎度毎度それがしが頭を悩ませておる時にお出ましになられますなぁ・・・それがしが困っておる姿を楽しんでいる様な来られ方にみえまする」)

 (「おぅ!そなたの悩む様子はワシの大好物じゃ!ハハハハハ・・・」)

 (「本当にご先祖様にござりまするか?それがしには妖魔に見えまする」)

 (「ハハハまぁ、そう言うでない。本題じゃ。援軍は来ぬものと考えよ。信虎はのぅ、そなたが戦に出て行った事が面白うないようじゃ。毎日そなた同様、援軍を出すか出さぬか悩んでおるわ」)

 (「左様でございまするか・・・」)

 (「源太郎!そなたは若いのじゃ。この際開き直って好き放題にやってみるが好いぞ!ハハハハハ」)

 (「解り申した。そう致しまする」)

 (「ではのぅ、弟妹達が首を長ごうして待って居る故、早う帰ってやるのじゃぞ!」)

 そう言って始祖の信義は大笑いとともに消えていった。




 「じぃ!今宵軍議を開く。諸将皆集めてくれぃ」

 源太郎は板垣に言った。

 「若殿、御心を決められましたか?」

 「ああ、援軍と言う要素を外すと決めた。我等だけで目の前の敵勢を一時でも下げさせるしかあるまい」

 「今宵にござりまするな?皆が喜ぶ事でござりましょう」

 板垣は各部隊へ使者を出す為に源太郎の傍を離れた。










 軍議の刻限となった。源太郎は諸将の顔を見渡し口を開いた。

 「各々方、急に軍議を開く事となり、お忙しいところかたじけのぅございまする。此度は確認したき事もあり、お集まり頂いた次第にござりまする」

 「「「「「「「「「確認したき事とは何にござりましょうや?」」」」」」」」」

 「先日お配り致した弩と礫弓の評判と、兵達が扱いに慣れたか否かでござる」

 「若殿、弓自慢の者達には不評でござるが、その他の大部分の兵達には狙いが付け易いと好評でござる。この数日間の狩りのお陰か、扱い方も随分と理解できた様でござる」 

 馬場が発言した。

 「そう言えば、弓の部分が小さいのに弓勢が強く、矢の威力が高いと言っておる者もおり申した」

 山県が続いた。

 「ここ連日、兵達は村の者達と鹿鍋や猪鍋で楽しんでおるようでござる」 

 「我等も兵達のご相伴に預かって居り申す」

 内藤と工藤も機嫌よく話してきた。

 「各々方、兵達にけが人や病人は出ておりませぬか?」

 源太郎が尋ねた。

 「「「「「「「「「ご安心下され、一人も出ておりませぬ」」」」」」」」」

 「では明日、各隊一斉に林の狩り出しを行いまする。義叔父上の隊は道に獣が出てこぬ様牽制して下さりませ。飯富殿の隊は騎兵故、道で小山田隊の補佐と足が速い獣を相模側へ追い込んで下さりませ。これにてお願い申し上げまする」

 「「「「「「「「「はっ!お任せあれ!」」」」」」」」」










 翌朝

 「各々方、本日の各隊の動き具合で敵勢に仕掛ける時期を決め申す。兵士各位も家族が恋しゅうなってきておることと思いたい・・・ワシは恋しい!兵士の皆にはその様に伝えて頂きとうござる。この後半刻を以て開始致す。では、配置に就いて下され」

 「「「「「「「「「はっ!承知仕った!」」」」」」」」」





 馬場・山県・内藤・工藤・荻原・小山田の各部隊の兵士達

 「おい、聞いたか?若殿様・・・家族が恋しいとな?」
 「無理からぬことじゃ。元服をして一年じゃ。他家に比べて元服を早められたそうじゃしの」
 「いや、それよりも今日の我ら次第で帰れることの方が大事ぞ」
 「おぉ、此度渡されておる新しい弓にどの程度慣れたのか、ご自分の目で確かめられるそうじゃ」
 「この弓は弩と言うそうじゃ。狙いをつけ易いのは良いが、矢を放つと次を放つまでの間が長いからのぅ」
 「だから、弩3名・長槍1名・短槍1名がひとくみになり、弩は一人ずつ放つ決まりになっておろぅ」
 「各部隊それぞれ、若殿様直々に御教えを受けた者も居るくらいじゃからのぅ」
 「若殿様は我らの様な者までお優しいのぅ」
 「それに上の方の話だと、若殿様は我ら下々の兵のケガや病気にまで気を配って下さっておられるそうじゃ」
 「そうじゃのぅ。今回の戦は部隊長様が今迄に無くお優しい。こんな事は初めてじゃ」
 「そうなのか!ワシはこの様にして下さる若殿様の為、一刻も早うご家族の元へお届けできる様精一杯動くぞ!」
 「そうじゃ~!若殿様の為に!」
 「「「「「「「「「「おお~!若殿様の為に!」」」」」」」」」」





 飯富の陣

 「ぉお?何か他の隊の者共が騒いでおるのう・・・どうしたのじゃ?」

 「虎昌様。どうも兵達が若殿様のお言葉に感じ入った様でして」

 「そうじゃろうて。我等とて今は若殿に慣れてしもうたが、御館様の軍勢を陰からお救いなされた折には、随分と胆を潰したからのぅ。ワシ等もその気持ち忘れまいぞ」

 「はっ!我が隊の兵達にも伝えてまいりまする」








 狩りを始めて一刻(2時間)後、板垣の陣

 伝令の兵士

 「申し上げます。馬場・山県・内藤・工藤隊より、道の南北両側にそれぞれ十頭ずつのクマの群れを発見したとの事。如何いたしましょうや?との事にございます!」

 「若殿!中断致しまするか?」

 「じぃ、それは危険じゃ。命令を伝える!矢が届くギリギリの距離を保ち、遠巻きで矢を射かけ続けて相模側まで静かに追い立てるのじゃ。決して仕留めようと無理する事はまかりならん!隊列は一番前に短槍、その後ろから長槍が補佐、弩はその後ろから交代で射かけるのじゃ」

 と言って源太郎は各隊に使者を送った。

 「それから、飯富殿に伝令せよ!林の中の隊と連携して移動し、相模側にクマを追い出して後には、林の出口で部隊を展開し点検するようにと。我等も飯富隊に続くぞ、全部隊出陣!」









 クマの群れを相模側に追い立てた武田勢は、全部隊が雑木林のに沿って鶴翼の隊形に展開した。

 北から一列目が加賀美隊・工藤隊・馬場隊・飯富隊・山県隊・内藤隊・荻原隊、二列目が小山田隊と源太郎がいる板垣隊と言う具合である。

 クマの群れを一頭たりとも雑木林に戻らせぬ様、万全の用意を整えつつ展開を終えた。

 その後西から強風が吹いてきたので、源太郎は各部隊に命じ、背の高い草むらに油をかけて火を放ってクマをさらに追い立てるのと同時に射線の確保を図った。




 クマは・・・と言うと、一頭ずつがそれぞれ何本か矢を受けており、数頭は背中や肩に深く矢が刺さっていた。人間の力を舐めていたクマは数頭が深いや傷を負った為、力の差を認めて逃げ出したのである。

 









 
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