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21話 銀ニ

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「ちょうどいい野菜を仕入れてきたから飯食ってけよ」

「すんません、ありがとうございます」

銀二は下に置いた段ボールから、キャベツやニンジン、ナスにキュウリなど
見るからに新鮮そうな野菜を取り出し、厨房の方へ運んで行った。

「俺、橘エイトっていいます、それでさっき言っていた糸ってなんですか?」

「いい名前じゃねぇーか、糸っていうのはそうだな、運命の赤い糸って聞いたことあるか?」

「あります、繋がってると結婚するとかそういったやつですよね?」

「雑な答えだな(笑)、まぁそんなところ、赤い糸は恋愛や愛情を示し、金色の意図は金運を示す、色によって導きがあるんだがエイトお前には黒い糸がはっきりでていた」

「黒。。。?色的にやばそうじゃないですか」

「その糸があの神社の鳥居にかかりそうになったとき、本殿がざわついていたから止めたんだ」

銀二はフライパンの野菜を炒めながら
黒い糸、それは死や呪い、魔などそういった類への導きの可能性があると銀二はいう。

「銀二さん、お祓いとかできるんですか?」

「そういったことはできねぇなぁ」

「そうですか。。。」

「その落ち込みようじゃ、黒い糸に関係することに思い当たることがあるんだな」

エイトは調理中の銀二に今までの経緯を伝えた。

「そうか、そんなことがあったか、まあ気を落とさず俺の飯を食ってみろ」
銀二は野菜炒め定食を差し出した。

野菜いためと白米、みそ汁から白い湯気、食欲を誘う光景にエイトはハシをとり
野菜炒めを食べはじめた。

「うぁ~」
なんとも辛くしょっぱい味付け、うまいものを想像していただけに
この味つけは衝撃がはしった。

「どうだ、まずいか(笑)?」
銀二はニヤリと笑みを浮かべながらそういった。

「はい、まずいです」
失礼なのはわかっているが、この味には素直な答えがでてしまう。
この店のたたずまい、よくこの味でやっていけるな。

「残さず食えよ」
銀二は少しエイトに脅しをかけるようにそういった。
するとランチの時間が近いのか客が続々と並び始めた。

こんな変な味付けで何で客がくるんだ。。。

「エイトわりーことはいわね、全部食え」

エイトは少しづつだが口に入れては銀二の言う通り食べ続けた。

すると隣に座った小太りの男が声をかけてきた。

「そのツラでめしっ食ってるということは銀二の飯がまずいようだな」

「まずいっす」

「もう少しで半分だ、そうすりゃ本当の味にたどり着ける」

何を言ってるか意味がわからないがとなりの男はうまそうに銀二の飯を食っていた。

「ん?」エイトはハシを止めた、そしてもう一度銀二の野菜炒めを口に含む。
野菜のうまみ、そしてなんとも言えない香ばしい味付けが口の中に広がる。

「言っただろ(笑)、俺も初めはそうだった」
そういった小太りの男は小指を見せてまた飯を食い始めた。

男の小指はなかった、そうあっちの人だ。

「エイトうまいか?だんだん黒い糸も薄くなってきたな」
銀二はそういいながら食器を洗う。

「銀二さんこれって。。。?」

「銀二の飯は悪の浄化作用がある、ここにきてる客の半数はそのために定期的に銀二の飯を食いにくる」

小太りの男がそう言った。

「だがなエイト、お前にとっては一時的な浄化だ、長くはもたねぇちゃんとしたところで祓ってもらえ」
銀二はそういった。

「俺も堅気になるまではやんちゃしてよ、そこの刑務所出所して、飯食いてえだろ、目の前にあったのが銀二の食堂で10年ぶりに食った飯があの味でよ、なんてまずい飯食わせるんだこのやろってまたぶっ殺してムショに逆戻りするところだったは(笑) しかし銀二の言う通り食ってたら、まずい飯がうまくなってきてよ」

「おやっさん懐かしすね(笑)」銀二と男は昔話を談笑していた。


銀二は何故こういった飯を作る能力があるのかわかっていない、もしかすると目の前の神社の神の
力かもしれないといっていた。

たしかに銀二にあってから、あの女の気配を感じない。どれくらい持つかは分からないが
早く祓ってもらいたい。













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