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20話 毘沙門天食堂

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皆と別れエイトは夜通しだったせいか地下鉄に乗り込んだ瞬間眠ってしまった。
電車に揺られながら心地よく眠っていると

髪の毛の束の先あたりが頬をくすぐる、その感覚のせいで浅い眠りに切り替わり
頬で感じている感覚に違和感を感じる。

誰の髪だ。。。俺はベットの上で寝ていて誰かが上からのぞき込んでいる。
そんな感じの感触だ。

浅い眠りから覚醒へと意識が変わっていく中地下鉄で寝落ちしたことに気が付いた。

目をあけて状況を確認しようとしたが目が明かず声もでない、手足も力が入らない。
感覚が残っているのは聴覚のみ、電車が揺られている音だけが聞こえてくる。

なんだこの感覚は、エイトは全エネルギー腹の底に一度集中して

「ああああああああああああああああああああ!」

矢が解き放たれたように車内に響く大きな叫び声。

視界が戻り周囲をみると乗車している人からの冷たい視線を一気に浴びた。
額や体からは大量の汗。

「はぁ はぁ はぁ」

乗客に軽く詫びの会釈をしてスマホを除くブラックアウトしている画面に映る自分の背後にあの女の残影が。。。

「はっ!」背後を確認するが誰もいない。

あの女に意識を持ってかれているのか、それとも実際に取り憑かれているのか。
蓮見達のような霊感のないエイトにとってはっきりしない事が煩わしいものであった。

視界の隅に現れたり触れられたような気がしたり家路を辿る間、現象が続いた。
ある時は電柱の陰、茂みの中、すれ違う人、いたるところにあの女の存在を感じる。

「なんだってこんな思いしなきゃならいんだ、あの二人の霊能者気取りは祓えないだと?何のための霊能者だ」
と文句ばかりをつぶやいていた。

そんな時エイトの視線に入ってきたのはそんなには大きくない神社だった。
毎年賽銭しているがご利益はねぇ、こんな時ほど力を貸してもらおうと神社の中へと向かう。

真っ赤に綺麗に塗られた鳥居。。。

ちゃんと管理はされているだな。と思いつつくぐろうとすると背後から罵声を浴びる。

「ちょっと待て兄ちゃん!」

声のほうへ振り向くと野菜の段ボールを抱えた中年の男性だった。

「それ以上進むな」
男性はエイトに神社に入るなと言ってるようだ。

「なんなんすか?」

「神社の神様があんたを拒絶してる、それ以上入るとこの辺りの結界が崩れる」

なんなんだ、一体、あんな経験してなければこのまま強行突破するところだが
あの女に取り憑かれている実感があったので振り返り神社を去ろうとした。

「俺はそこの食堂の亭主だ、時間あるならちょっとよってけ」

亭主の指さす方には毘沙門食堂と書かれた古びた食堂がある、あの二人より見た目的に役に立ちそうな亭主についていくことにした。

「いきなりあんなことってすまねぇな」
亭主はエイトに詫びを入れつつ、銀二と名乗った、古臭い名前だがどうやら
本名ではなく皆にそう呼ばれているらしい。

「銀二さん、あんたも霊能者なのか?」エイトは唐突に質問する。


「そんな大それたもんじゃねーよ、ただ体調いいときはあっちのお方が見えたり、糸が見えることがある。」

「糸。。。。。?」









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