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10話 この世のものでない

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「いててててっ」

「エイトさん!よかった、田中さん!     エイトさんの意識が戻りました」

「ここは?」

「行きに立ち寄った道の駅ですよ」

「一体なにが、、、なにがどうなった、村でロケハンしていたはずだ」

(そうだ、あの集会所の前で錫杖の音と線香の臭いがして、、、
車外の外がすっかり暗くなっていた。あれから何時間時がたったのだろう。)

「おう!橘っち起きたか!いや一死んだかと思ったぞ(笑)」

「死ぬ?田中さん何があったんですか?」
エイトは田中さんの袖を掴み問い詰めた。

「いけね、バスがきた、とりあえず俺は家族との宴があるから先に帰る、鳴海の親戚がここに来るから
何があったかは鳴海に聞くといい、とにかく無理せず休めよ」

そうだ、田中さんは家族の宴があるといっていた。
田中さんはバンを降りて通りにあるバス停に向かっていった。


「鳴海、親戚って何がどうなっているんだ?」

「エイトさんが急に倒れたあと大変な状態になったんです」

鳴海はエイトが気を失っていた時のことを語りだした。

————


エイトが急に倒れこんだ。
「田中さん!エイトさんが。。。」

田中さんがエイトと鳴海のもとに駆け寄り、エイトの様子を伺う。

「息はしている、大丈夫気を失っているだけだ」
いつもおちゃらけたり、やる気なさそうな田中さんだが、今は周囲を見渡し真剣な表情になっている。



錫杖の音、線香の香りそして響きわたる低音読経。
それらが四方八方から五感を襲う。

「なんだあれ?坊さん?のようだけど。。。人間じゃないよな?」
田中さんが目を凝らしそういった。

少なからず霊感のある私にはもっとはっきり見えていた、木々の隙間で錫杖と持ち読経を唱える僧が10人。

いや50人くらいが3人を囲むように存在していた。
そしてその僧よりもっと存在感を主張するのが赤子や子供。

肌は土色というべく生気は感じられず。
目のあたりは黒く窪み瞳はないようにみえる。
赤子は四つん這いになり、僧にまとわりついたり、木々に張り付足り民家の陰にいたり、茂みの中にいたりとゴミ捨て場で這いずる虫のようだ。

中には体がクモやカニのように手足の数が明らかに多く存在するものがいる。

まさにこの世のものではない存在。


どれくらい無言でその光景を見ていただろう、私も田中さんも光景に縛られて動けなかった。

その者たちが何をしてくるのかも分からない。
何がしたいのか?狙いなのか?
感情すら読めない表情であった。


徐々に徐々に距離をちじめてきているように感じる。

(プルルルル プルルルル)

私のスマホが鳴り出した。





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