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裏:レオン
13獣の事情2
しおりを挟むところで俺の名前はレオンである。つまり、割と名前に安直にライオンに変えられたわけである。だから、呪いをかけられてむかついた腹いせに煽る気満々で魔女を馬鹿にしたこともある。
「知恵者の魔女と言っても、所詮その程度だな、レオンでライオンとか安直かよw お前の発想力しょっぼw」
とかなんとか。
すると、魔女が杖を片手に壮絶な笑顔でのたまった。
「今からお前のその性根に合った姿に変えてやろう。ハダカデバネズミ辺りがよかろ……」
「魔女さまさいっこう!! 率直な発想は美徳じゃないかと思うんだよ!! やっぱり魔女は知性が輝いてるな!! 心の美しさが、怒りにまかせた魔法にすら表れてて神がかってたな!! やはり天才じゃないかな!!」
土下座と、全力の賛辞でなんとかハダカデバネズミは回避した。人間大のハダカデバネズミは、正直キツい。土下座してる頭をグリグリとされたけど、些細なことだった。べ、別に、新しい扉なんて開いてないんだから!!
アレは危なかった。たぶん本気だった。あの目はマジだった。目が怖すぎて、金玉ひゅんってなった。魔女こえぇ。
正直なところ、人間大ハダカデバネズミで、今、彼女にさっきの言葉を言ってもらえる自信がない。少なくとも、たてがみ……っていうか、毛がほぼないし。牙の代わりに出っ歯を褒めてもらえる自信もない。
……俺、レオンでよかった。父上、母上、良い名前をつけてくれてありがとう。ところで名前が「ヒューマン」とかだったら、俺、なにになってたのかな……。
見た目大事。ライオンかっこいー! ひゅー!
彼女がライオンな俺のたてがみをもふもふと撫でながら優しく微笑む。
「レオンさまの気高いその姿に合った、崇高な心も、尊敬しております。わたくし、恥ずかしながら、レオン様方がこの森の魔物を押しとどめているなど存じ上げておらず、ただ、恐ろしい魔物と魔を統べる、恐ろしい獣の王がいると、噂を信じておりました。守って下さってる方々に対して、何という無礼な感情を抱いていたのかと、無知を恥じるばかりです」
……まあ、この森からの魔物被害は二百年前までだし、隣国は新興国だし、森近辺の元々の住民は国ができたときに追い払われてるっぽいし、過去のことをまともに知ってるヤツいないだろうし過去の魔物被害知らないし、仕方ないよね。隣国は「魔物は森の中でしか存在しないから、入らなければ問題なし!」ぐらいにしか思ってないんだろうなー。
「恥じることはない。むしろ、それでよかった。だからこそ私があなたを助けることができたのだから」
ただ、罪人を森に置き去りにする刑が隣国でまかり通ると面倒だから、対策はしてある。一応、魔物の境界の制御を外したのとは別に、魔物が現れるようになったのは森に罪人を捨てたせいという噂を流したのだ。庭師のゴールデンレトリバーな犬男は、人の思考を軽く誘導することができる。「最近の魔物の出没は、もしかしてこの前罪人を捨てたせいでは……」と、ふと思いつく、という程度であるが。四つん這いになれば、犬に擬態できるため大変重宝している。
隣国の動きはしばらく要注意だ。
ところで、庭師の犬男さんにおいては、その力を使って帝国での獣人悪者説を払拭してくれと思ってるんだけど、なぜかそれはしてくれない……なんで!!
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