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1章 月隠村の都市伝説
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「あの、あなたは?」
問いかける東海林さんだけど、老人は答えない。
ずんずん近づいてきたかと思うと、なんと東海林さんに掴みかかり、
「お前らが向かおうとしている先は、穢土と化しておる。あそこには近づいてはならん。“ヤクモサマ”に祟られたら命はないぞ!」
老人の目は東海林さんに定まっていない。
よく見ると、その目は白く濁っている。目の病気が進行して、失明してしまっているのかもしれない。
あまりの迫力に、私達は言葉がでなかった。
その場に立ち尽くしていると、老人の行動はさらに過激なものとなった。
「さっさと立ち去れ!」
持っていた杖を振り回す。
杖と言っても、太めの枝をそのまま杖にしているだけだが。
ピンポン玉サイズの鈴がいくつか付けられており、振るう度にシャンシャンやかましく鳴る。
「何すんだよ、このクソジジイ!」
気の短そうな新井さんが掴みかかろうとするが、東海林さんがそれを制した。
「すみませんでした。すぐに行きます」
東海林さんに促され、私達は別荘へと引き返した。
△▼△
「なんなんだよ、あのジジイ!」
新井さんの怒りは鎮まらない。乱暴に拳をテーブルに打ちつける。
「でも、なかなか興味深い話を聞けたわね」
「だねー。エド……だっけ? なんだろ」
「穢れた土と書いて穢土だ。本来は仏教用語で穢れた国土──煩悩のある世界を意味するものだが、単に穢れた土地という意味で使ったのかもな」
「あとは“ヤクモサマ”でしたっけ。祟られたら命はないとか言ってましたね。一体なんだろ?」
「美伽も知らないの?」
「うん、はじめて聞いたよ。というか、この村にあんなデンジャラスなおじいちゃんがいたなんて知らなかった」
「こりゃ、何かあるのはもう確実だよな。でも、ヨシノはもう帰りてえんだっけ?」
「はァ? 気が変わったから」
「よし、明後日から調査を再開することにしよう」
東海林さんの言葉に、皆はキョトンとしている。
「念のためだ。あの爺さんが待ち伏せしている可能性もあるだろ?」
東海林さんの慎重な判断に、皆は納得したようだ。
──けれど、私は違和感を覚える。
東海林さんはそれほどオカルトに傾倒しているようには見えない。
それなのに、どうしてこうも調査にこだわるんだろう。
調査を再開する。
東海林さんの慎重な判断が功を奏したらしく、あの老人が妨害してくることはなかった。
「凛、アンタ地味だよね」
調査の度にアミダで組分けをしている。
本日のパートナーは柏原さんだ。
脈絡もなく言われたせいもあって、私はただただ面食らう。
「言っちゃ悪いけどさー、アンタ、ダサいよ。せっかく元がいいだからさー、もっとオシャレしないと。でないと、美伽の引き立て役だけで終わるよ?」
言葉に遠慮がないが、柏原さんなりの優しさなのかもしれない。
「……いいんです、このままで。私、目立つのは好きじゃないから」
過去の傷口が開いたような気がした。
──もう、あんな目に遭うのはたくさんだ。
「……ま、人それぞれか。ごめんねー、ヘンなこと言って」
「いえ……」
会話が途絶え、調査に専念する。
この辺りの土地にも慣れたということで、効率よく二手に分かれることにした。
行く手を藪に阻まれる。
掻き分けて進もうとしているところを……
「こっち……こっち……」
か細い子供の声が聴こえた。
今にも消え入りそうな声だった。
蝉の鳴き声に掻き消されてもおかしくない。
それなのに、はっきりと聴こえた。
振り向くと、あの冬服姿の男の子がいた。
数メートルほどの、小さな崖状に盛り上がった場所の上に佇んでいる。
男の子は無表情に、私を見つめてくる。
声を掛けようとした瞬間、バサバサと梢が揺れた。
驚き、そちらの方へ意識を向ける。
なんてことはない。鳥が飛び立っただけだった。
再び男の子へと視線を定める。
しかし、彼の姿はもうなかった。
膝が笑い出す。
それでも、不思議と怖いとは感じなかった。
吸い寄せられるようにして、私は男の子がいた場所へと歩を進めた。
それほど高くないとはいえ、これを登るのは簡単じゃないだろう。
──もっとも、あの子はこの世の人間じゃないみたいだから、関係ないかもしれないけど。
たくさんの蔦が繁り、側面を塗りつぶすように覆っている。
その中でも一際密集している箇所に立った時だ。
蔦の方からヒヤッとした風を感じた。
もしかして、どこかに通じている──?
確かめようと蔦に手を伸ばした。
キィーーン──
突然、強烈な耳鳴りがした。
そんな、まさか──!
単なる耳鳴りであってほしい。
けれど、その願いもむなしく、耳鳴りはざらざらしたノイズへと変わる。
脳内に古い映画のような映像が流れ込んで来た。
ぽっかりと口を開けてるのは小さなトンネル──?
場面は変わり、四人の男の子が映し出される。
小柄な男の子が、体格のいい二人の男の子に挟まれて連行されている。
連行されているあの子は──冬服姿の男の子だ。
ああ、これは、トンネルの前にあの男の子が引き立てられているんだ。
一番背の高い男の子が、連行役の二人に何か命じている。
命じられた二人は、小柄な子をトンネルの中へと突き飛ばした。
胸が締め付けられる。
これは……いじめの現場だ。
──そこで映像は途切れ、真っ暗になった。
すすり泣きが聴こえる。
暗いよ……怖いよ……
どうしてみんな、ぼくをいじめるの──?
ここで現実に戻った。
あの力がよみがえってしまった……。
強い感情が焼き付けられた場所の過去を垣間見てしまう、忌まわしい能力が──
一心不乱に蔦をむしり取る。
動揺に呑まれまいとするように。
分厚く密集した蔦の一部が除かれ、拳大の穴が空いた。
そこから、ヒューと唸りをあげて風が吹き込んでくる。
蔦を取り払う作業は東海林さんと新井さんがしてくれている。
私達女性陣は、彼らの作業をやや離れたところで見守る。
「凛すごい、お手柄じゃん!」
美伽は無邪気に誉めてくれたけど、とても喜ぶ気分にはなれない。
これも全て、あの力が発現してしまったせいだ。
隠されていたトンネルの全貌が露になる。
その姿は想像以上に異様なものであった。
いくつものお札が吊るされた注連縄が、上段、中段、下段と3つも張り巡らせてあるのだ。
まるで、侵入者を阻むように──。
私達は言葉を失う。
これ以上は関わらない方がいい。
少なくとも、私はそう感じた。
遠慮がちに未央さんがデジカメで撮った。
小説執筆の資料にするのかもしれない。
「な、なーにビビってんだよ? 早く行こうぜ?」
威勢はいいが、新井さんの声は上擦っている。
「あ、ああ……」
東海林さんが私と美伽に毅然とした眼差しを向けてきた。
「二人とも……」
「イ・ヤ・で・す」
「……まだ何も言ってないけど」
「どうせ、帰れとか言うんでしょ?」
「参ったな……」
「大体、一番の功労者である凛をないがしろにするのは、いかがなものかと思いますけど?」
「そんな、私は別に……」
怖い──
これ以上深入りしたくない。
それが本音だ。
だけど、言えなかった。
本音を吐いてしまったら、雰囲気を壊すことになる。
目立ってしまう。
──あの時のように。
そうやって、皆から白い目で見られることの方が怖かった。
結局、東海林さんの方が折れて、全員でトンネルに入ることになった。
注連縄を外してしまわないように、隙間から体をねじ込むようにして侵入する。
当然、中は真っ暗だ。
東海林さんはデイバッグから懐中電灯を取り出した。
点灯すると強力な光がトンネル内を照らす。軍用の懐中電灯ということだ。
「すごいわね……」
未央さんは感嘆の一言を漏らす。私達も同調した。
壁一面に彫られているのは何かの仏像だろうか。そんなレリーフが延々と続いている。
終わりがないと錯覚するくらいに、トンネルは長かった。
進むほどに空気が重くなるような気がして、私は息苦しさを覚える。
いつまでも続くんじゃないかと怖かったけど、思い過ごしだった。出口が見えてきた。
トンネルを抜けた先には、信じがたい光景が広がっていた。
点在するのは、ほぼ倒壊している藁葺きの民家。
同じく、荒れ果てて見る影もない田畑。
「廃村……?」
私はてっきり、トンネルの先には噂の屋敷があるものだと思っていた。多分、皆もそうだろう。
だからこそ、想定外のものを見せつけられたことに戸惑いが隠せない。
「ここが、あのヤバいジーサンが言ってた場所? 穢土とかいう……」
「でしょうね」
「ここ、なんか変な感じ……」
美伽が居心地悪そうに呟く。
私も同感だった。
トンネルに潜る前は、うんざりするほどの蝉時雨が降り注いでいたのに、ここにはそれがない。
草木も色褪せているように感じる。
色彩はちゃんとあるのに、モノクロ写真を見ているような感覚……とでもいうのだろうか。
瑞々しさに欠けていて、命の息吹が感じられない。
問いかける東海林さんだけど、老人は答えない。
ずんずん近づいてきたかと思うと、なんと東海林さんに掴みかかり、
「お前らが向かおうとしている先は、穢土と化しておる。あそこには近づいてはならん。“ヤクモサマ”に祟られたら命はないぞ!」
老人の目は東海林さんに定まっていない。
よく見ると、その目は白く濁っている。目の病気が進行して、失明してしまっているのかもしれない。
あまりの迫力に、私達は言葉がでなかった。
その場に立ち尽くしていると、老人の行動はさらに過激なものとなった。
「さっさと立ち去れ!」
持っていた杖を振り回す。
杖と言っても、太めの枝をそのまま杖にしているだけだが。
ピンポン玉サイズの鈴がいくつか付けられており、振るう度にシャンシャンやかましく鳴る。
「何すんだよ、このクソジジイ!」
気の短そうな新井さんが掴みかかろうとするが、東海林さんがそれを制した。
「すみませんでした。すぐに行きます」
東海林さんに促され、私達は別荘へと引き返した。
△▼△
「なんなんだよ、あのジジイ!」
新井さんの怒りは鎮まらない。乱暴に拳をテーブルに打ちつける。
「でも、なかなか興味深い話を聞けたわね」
「だねー。エド……だっけ? なんだろ」
「穢れた土と書いて穢土だ。本来は仏教用語で穢れた国土──煩悩のある世界を意味するものだが、単に穢れた土地という意味で使ったのかもな」
「あとは“ヤクモサマ”でしたっけ。祟られたら命はないとか言ってましたね。一体なんだろ?」
「美伽も知らないの?」
「うん、はじめて聞いたよ。というか、この村にあんなデンジャラスなおじいちゃんがいたなんて知らなかった」
「こりゃ、何かあるのはもう確実だよな。でも、ヨシノはもう帰りてえんだっけ?」
「はァ? 気が変わったから」
「よし、明後日から調査を再開することにしよう」
東海林さんの言葉に、皆はキョトンとしている。
「念のためだ。あの爺さんが待ち伏せしている可能性もあるだろ?」
東海林さんの慎重な判断に、皆は納得したようだ。
──けれど、私は違和感を覚える。
東海林さんはそれほどオカルトに傾倒しているようには見えない。
それなのに、どうしてこうも調査にこだわるんだろう。
調査を再開する。
東海林さんの慎重な判断が功を奏したらしく、あの老人が妨害してくることはなかった。
「凛、アンタ地味だよね」
調査の度にアミダで組分けをしている。
本日のパートナーは柏原さんだ。
脈絡もなく言われたせいもあって、私はただただ面食らう。
「言っちゃ悪いけどさー、アンタ、ダサいよ。せっかく元がいいだからさー、もっとオシャレしないと。でないと、美伽の引き立て役だけで終わるよ?」
言葉に遠慮がないが、柏原さんなりの優しさなのかもしれない。
「……いいんです、このままで。私、目立つのは好きじゃないから」
過去の傷口が開いたような気がした。
──もう、あんな目に遭うのはたくさんだ。
「……ま、人それぞれか。ごめんねー、ヘンなこと言って」
「いえ……」
会話が途絶え、調査に専念する。
この辺りの土地にも慣れたということで、効率よく二手に分かれることにした。
行く手を藪に阻まれる。
掻き分けて進もうとしているところを……
「こっち……こっち……」
か細い子供の声が聴こえた。
今にも消え入りそうな声だった。
蝉の鳴き声に掻き消されてもおかしくない。
それなのに、はっきりと聴こえた。
振り向くと、あの冬服姿の男の子がいた。
数メートルほどの、小さな崖状に盛り上がった場所の上に佇んでいる。
男の子は無表情に、私を見つめてくる。
声を掛けようとした瞬間、バサバサと梢が揺れた。
驚き、そちらの方へ意識を向ける。
なんてことはない。鳥が飛び立っただけだった。
再び男の子へと視線を定める。
しかし、彼の姿はもうなかった。
膝が笑い出す。
それでも、不思議と怖いとは感じなかった。
吸い寄せられるようにして、私は男の子がいた場所へと歩を進めた。
それほど高くないとはいえ、これを登るのは簡単じゃないだろう。
──もっとも、あの子はこの世の人間じゃないみたいだから、関係ないかもしれないけど。
たくさんの蔦が繁り、側面を塗りつぶすように覆っている。
その中でも一際密集している箇所に立った時だ。
蔦の方からヒヤッとした風を感じた。
もしかして、どこかに通じている──?
確かめようと蔦に手を伸ばした。
キィーーン──
突然、強烈な耳鳴りがした。
そんな、まさか──!
単なる耳鳴りであってほしい。
けれど、その願いもむなしく、耳鳴りはざらざらしたノイズへと変わる。
脳内に古い映画のような映像が流れ込んで来た。
ぽっかりと口を開けてるのは小さなトンネル──?
場面は変わり、四人の男の子が映し出される。
小柄な男の子が、体格のいい二人の男の子に挟まれて連行されている。
連行されているあの子は──冬服姿の男の子だ。
ああ、これは、トンネルの前にあの男の子が引き立てられているんだ。
一番背の高い男の子が、連行役の二人に何か命じている。
命じられた二人は、小柄な子をトンネルの中へと突き飛ばした。
胸が締め付けられる。
これは……いじめの現場だ。
──そこで映像は途切れ、真っ暗になった。
すすり泣きが聴こえる。
暗いよ……怖いよ……
どうしてみんな、ぼくをいじめるの──?
ここで現実に戻った。
あの力がよみがえってしまった……。
強い感情が焼き付けられた場所の過去を垣間見てしまう、忌まわしい能力が──
一心不乱に蔦をむしり取る。
動揺に呑まれまいとするように。
分厚く密集した蔦の一部が除かれ、拳大の穴が空いた。
そこから、ヒューと唸りをあげて風が吹き込んでくる。
蔦を取り払う作業は東海林さんと新井さんがしてくれている。
私達女性陣は、彼らの作業をやや離れたところで見守る。
「凛すごい、お手柄じゃん!」
美伽は無邪気に誉めてくれたけど、とても喜ぶ気分にはなれない。
これも全て、あの力が発現してしまったせいだ。
隠されていたトンネルの全貌が露になる。
その姿は想像以上に異様なものであった。
いくつものお札が吊るされた注連縄が、上段、中段、下段と3つも張り巡らせてあるのだ。
まるで、侵入者を阻むように──。
私達は言葉を失う。
これ以上は関わらない方がいい。
少なくとも、私はそう感じた。
遠慮がちに未央さんがデジカメで撮った。
小説執筆の資料にするのかもしれない。
「な、なーにビビってんだよ? 早く行こうぜ?」
威勢はいいが、新井さんの声は上擦っている。
「あ、ああ……」
東海林さんが私と美伽に毅然とした眼差しを向けてきた。
「二人とも……」
「イ・ヤ・で・す」
「……まだ何も言ってないけど」
「どうせ、帰れとか言うんでしょ?」
「参ったな……」
「大体、一番の功労者である凛をないがしろにするのは、いかがなものかと思いますけど?」
「そんな、私は別に……」
怖い──
これ以上深入りしたくない。
それが本音だ。
だけど、言えなかった。
本音を吐いてしまったら、雰囲気を壊すことになる。
目立ってしまう。
──あの時のように。
そうやって、皆から白い目で見られることの方が怖かった。
結局、東海林さんの方が折れて、全員でトンネルに入ることになった。
注連縄を外してしまわないように、隙間から体をねじ込むようにして侵入する。
当然、中は真っ暗だ。
東海林さんはデイバッグから懐中電灯を取り出した。
点灯すると強力な光がトンネル内を照らす。軍用の懐中電灯ということだ。
「すごいわね……」
未央さんは感嘆の一言を漏らす。私達も同調した。
壁一面に彫られているのは何かの仏像だろうか。そんなレリーフが延々と続いている。
終わりがないと錯覚するくらいに、トンネルは長かった。
進むほどに空気が重くなるような気がして、私は息苦しさを覚える。
いつまでも続くんじゃないかと怖かったけど、思い過ごしだった。出口が見えてきた。
トンネルを抜けた先には、信じがたい光景が広がっていた。
点在するのは、ほぼ倒壊している藁葺きの民家。
同じく、荒れ果てて見る影もない田畑。
「廃村……?」
私はてっきり、トンネルの先には噂の屋敷があるものだと思っていた。多分、皆もそうだろう。
だからこそ、想定外のものを見せつけられたことに戸惑いが隠せない。
「ここが、あのヤバいジーサンが言ってた場所? 穢土とかいう……」
「でしょうね」
「ここ、なんか変な感じ……」
美伽が居心地悪そうに呟く。
私も同感だった。
トンネルに潜る前は、うんざりするほどの蝉時雨が降り注いでいたのに、ここにはそれがない。
草木も色褪せているように感じる。
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