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第4話 菜園荒しを捕まえろ
1 ある朝の風景
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ノイアさんが仲間に加わり、早くも一週間が過ぎた。
食堂の窓からは、眩しいばかりの朝日が差し込む。
「うん、美味しいです♪ ノイアさん」
ノイアさんが作ってくれた南の大陸の料理を一口食べるなり、その美味しさに感激した。
「そう? お口に合ったようで良かったわ」
ノイアさんは嬉しそうに微笑む。
「うん、美味し~い♪ ノイアさん、お料理上手だねー♪」
クリンちゃんも絶賛する。
「あらぁ、クリンちゃん程じゃないわよ」
ノイアさんは少し照れている。
私達三人はすっかり仲良くなり、食事の時は必ずこうやって三人で食べている。
女三人が集まればそれはもう賑やかで、和気藹々と食事をしていると……、
「お前達、もう少し静かに食事することはできんのか? まったく、朝っぱらからかしましい奴らだ」
嫌味ったらしい発言とともにアレックスが現れた。
何こいつ? 普段は滅多に食堂に足を運ばないクセに、わざわざその一言を言うためにここまで来たの? うわ、最低……。ここは一言、文句を言ってやらねば。
「別にあんたの書斎まで声なんか聞こえないでしょ? 食堂には滅多に顔を出さないくせに、嫌味言うためにわざわざ来るなんて超陰険ね。ほらほら、そんな陰険なあんたの顔見てると、食事が有り得ないくらい不味くなるから、早くどっかに消えてちょうだい」
先にノイアさんが言ってくれた。それも、私が言おうとして用意した言葉より何倍もパンチの効いた言葉で。
ノイアさんはとにかく勝ち気で言葉に遠慮がない。でも、それはアレックス限定であり、私とクリンちゃんには超優しい。性格は竹を割ったようにサッパリとしていて、話していて気持ちがいい人だ。
「そんなわけないだろう。お前には私がそんな暇人に見えるのか? そうだとしたら、そうとう視力が落ちている証拠だ。一度町医者に診てもらった方がいい。でないと、今に失明するかもしれんぞ」
アレックスが完全に馬鹿にしきった態度で、淡々と応酬する。
そんなアレックスの稚拙な応酬に、ノイアさんは華麗にスルーして大人の対応。
こいつ、何ガキ臭いこと言ってやり返してんの!? そんなにノイアさんに言われたのが悔しかった!? ずっと思ってたけど、アレックスって超負けず嫌いだよね? 屁理屈ばかりこねて絶対引かないし……。
アレックスは私の向かいに座った。
げっ、正面を陣取りやがった! 最悪ッ! こいつ、食事のマナーとかに小うるさいもん。またなんか言うつもりだ……。やだな……。
「私も食事を摂りたい。クリムベール、用意をしてくれ」
アレックスは後から来たくせに、ぬけぬけとクリンちゃんに命じる。
「は~い!」
クリンちゃんはそんな偉そうなアレックスに対し、イヤな顔一つ見せず、食事中なのに席を立った。
「ふざけたこと抜かしてんじゃないわよ! 後からのこのこやって来て、その横柄な態度はなんなの!? クリンちゃんはあんたの奥さんでもメイドでもないんだから、食事くらい自分で用意してきなさいよっ!」
またもノイアさんが吠えた。
「別にいいよノイアさん。あたしもアレックスと一緒に御飯食べれるから嬉しいし♪」
クリンちゃんは無邪気に言うと、ぱたぱたと厨房の方へ向かった。クリンちゃんってば良い子だなぁ。でも、あんまりアレックスを甘やかすのはどうかと思うよ? こいつのためになんないよ。
そういえばクリンちゃんは、私がこの世界に来る前は、この広い食堂で一人で御飯食べてたんだよね? だから、たまにアレックスと一緒に食事ができる時は凄く嬉しかった、って言ってたっけ。
まったくアレックスの奴め! いくら食事をする必要がなくても、寂しく一人で御飯を食べるクリンちゃんの心を察して付き合ってあげてればよかったのに。ほんと心狭いよね? まあ、今は私達がいるからいいんだけど。
「お前、ナイフやフォークの使い方が致命的に下手だな。見ていてもどかしいぞ」
アレックスが私の食事をする様子を見て、予想通り失礼なことを言ってきた。
「よっ、余計なお世話だよ! 大体、私がいた世界じゃ、私が住んでた国は箸を使うのが一般的で、ナイフやフォークは滅多に使わなかったんだから仕方ないでしょ!?」
「ハシ? ハシとはなんだ?」
アレックスがずいっと身を乗り出してきた。
ウゲッ! またコイツのヘンな“探究スイッチ”を押しちゃったみたい!
アレックスはよく、ホントどうでもいいことにめちゃくちゃ食らいついてくる。それも、かなりしつこく……。一番ヒドかったのは、あの時だった……。
食堂の窓からは、眩しいばかりの朝日が差し込む。
「うん、美味しいです♪ ノイアさん」
ノイアさんが作ってくれた南の大陸の料理を一口食べるなり、その美味しさに感激した。
「そう? お口に合ったようで良かったわ」
ノイアさんは嬉しそうに微笑む。
「うん、美味し~い♪ ノイアさん、お料理上手だねー♪」
クリンちゃんも絶賛する。
「あらぁ、クリンちゃん程じゃないわよ」
ノイアさんは少し照れている。
私達三人はすっかり仲良くなり、食事の時は必ずこうやって三人で食べている。
女三人が集まればそれはもう賑やかで、和気藹々と食事をしていると……、
「お前達、もう少し静かに食事することはできんのか? まったく、朝っぱらからかしましい奴らだ」
嫌味ったらしい発言とともにアレックスが現れた。
何こいつ? 普段は滅多に食堂に足を運ばないクセに、わざわざその一言を言うためにここまで来たの? うわ、最低……。ここは一言、文句を言ってやらねば。
「別にあんたの書斎まで声なんか聞こえないでしょ? 食堂には滅多に顔を出さないくせに、嫌味言うためにわざわざ来るなんて超陰険ね。ほらほら、そんな陰険なあんたの顔見てると、食事が有り得ないくらい不味くなるから、早くどっかに消えてちょうだい」
先にノイアさんが言ってくれた。それも、私が言おうとして用意した言葉より何倍もパンチの効いた言葉で。
ノイアさんはとにかく勝ち気で言葉に遠慮がない。でも、それはアレックス限定であり、私とクリンちゃんには超優しい。性格は竹を割ったようにサッパリとしていて、話していて気持ちがいい人だ。
「そんなわけないだろう。お前には私がそんな暇人に見えるのか? そうだとしたら、そうとう視力が落ちている証拠だ。一度町医者に診てもらった方がいい。でないと、今に失明するかもしれんぞ」
アレックスが完全に馬鹿にしきった態度で、淡々と応酬する。
そんなアレックスの稚拙な応酬に、ノイアさんは華麗にスルーして大人の対応。
こいつ、何ガキ臭いこと言ってやり返してんの!? そんなにノイアさんに言われたのが悔しかった!? ずっと思ってたけど、アレックスって超負けず嫌いだよね? 屁理屈ばかりこねて絶対引かないし……。
アレックスは私の向かいに座った。
げっ、正面を陣取りやがった! 最悪ッ! こいつ、食事のマナーとかに小うるさいもん。またなんか言うつもりだ……。やだな……。
「私も食事を摂りたい。クリムベール、用意をしてくれ」
アレックスは後から来たくせに、ぬけぬけとクリンちゃんに命じる。
「は~い!」
クリンちゃんはそんな偉そうなアレックスに対し、イヤな顔一つ見せず、食事中なのに席を立った。
「ふざけたこと抜かしてんじゃないわよ! 後からのこのこやって来て、その横柄な態度はなんなの!? クリンちゃんはあんたの奥さんでもメイドでもないんだから、食事くらい自分で用意してきなさいよっ!」
またもノイアさんが吠えた。
「別にいいよノイアさん。あたしもアレックスと一緒に御飯食べれるから嬉しいし♪」
クリンちゃんは無邪気に言うと、ぱたぱたと厨房の方へ向かった。クリンちゃんってば良い子だなぁ。でも、あんまりアレックスを甘やかすのはどうかと思うよ? こいつのためになんないよ。
そういえばクリンちゃんは、私がこの世界に来る前は、この広い食堂で一人で御飯食べてたんだよね? だから、たまにアレックスと一緒に食事ができる時は凄く嬉しかった、って言ってたっけ。
まったくアレックスの奴め! いくら食事をする必要がなくても、寂しく一人で御飯を食べるクリンちゃんの心を察して付き合ってあげてればよかったのに。ほんと心狭いよね? まあ、今は私達がいるからいいんだけど。
「お前、ナイフやフォークの使い方が致命的に下手だな。見ていてもどかしいぞ」
アレックスが私の食事をする様子を見て、予想通り失礼なことを言ってきた。
「よっ、余計なお世話だよ! 大体、私がいた世界じゃ、私が住んでた国は箸を使うのが一般的で、ナイフやフォークは滅多に使わなかったんだから仕方ないでしょ!?」
「ハシ? ハシとはなんだ?」
アレックスがずいっと身を乗り出してきた。
ウゲッ! またコイツのヘンな“探究スイッチ”を押しちゃったみたい!
アレックスはよく、ホントどうでもいいことにめちゃくちゃ食らいついてくる。それも、かなりしつこく……。一番ヒドかったのは、あの時だった……。
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