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35 そこに愛はあるんか〜?ですわ!
しおりを挟むオレグ様は険しい表情で、真っ直ぐにレギオン殿下を見据えていて……何をそんなに腹を立てていますの?
オレグ様にとってもいい条件のはずですのに…。
「レギーナ殿下には私という正式な婚約者がいます。横槍を入れるのは他国の王族といえど、許されない行為なのではありませんか?」
疑問系で問いかけているけれどその口調は明らかに避難するそれで。
オレグ様の真意が見えない今、わたくしはおろおろするばかりですわ。
「ふんっ。ゼレグラントの王子に対し、無礼な奴だ」
「無礼なのはお互い様では?」
そしてオレグ様は徐ろにわたくしの手を握ると、レギオン殿下を睨んで………
「僕は誰よりもレーナを愛しています。レーナは誰にも渡しません」
………え?
「レーナは僕のものだ」
………………は?
「レーナと結婚するのは僕だ!」
「…………………えええええ!!?」
ななな何を!?
だってわたくし、デブス-デブ=ブス(実際は今もちょいぽっちゃり)の性悪女ですわよ!?
わたくしをオレグ様があ、あ、あ、愛してるだなんて………そんなバカな!?
「………なぜレーナが驚くんだ。僕たちは婚約者だぞ?それにあれだけ態度で示してたのに……」
「えっ?えぇっ!?」
がっくりと項垂れるオレグ様。
そして「何を今更…?」という呆れ顔の面々。
えぇ…?
「策士策に溺れるとはこのことだな」
「せっせと外堀埋めと牽制ばかりしているからよ」
「鈍感なレーナが態度だけで分かるわけないだろう」
「くっ…!」
お父様とお母様、そしてお兄様の言葉に悔しげに顔を顰めるオレグ様。
……ところでお兄様。わたくしのこと密かにディスってませんこと?
いえ、そうじゃなくて…え?待って待って待って?
「オレグ様はわたくしのことを嫌って―――」
「ない!」
「わたくしとは嫌嫌婚約して―――」
「はぁ!?そんなわけないだろう!?どうしてそんな発想になるんだ!?」
「だって……」
「それに関しましては私からご説明いたしましょう」
後ろに控えていたヤーナが一歩前へ出ましたわ。
「オレグ様はせっせと外堀を埋め、周りの男たちを牽制し、姫様の婚約者という筆舌に尽くしがたい甘美で名誉な座を勝ち取りました」
「なんですのそれ。わたくし誰からも言い寄られたことなんてありませんわ」
わたくしを残念な子を見るような目で見るヤーナ。
さっきからどうしてみんなしてその目でわたくしを見るんですの!?
遺憾の意を示しますわ!!
「確かに姫様はあまり人前に出ませんでしたが、城とはいろいろな人の目があるもの。太る前はたくさんの殿方が姫様を狙っていました」
「俄には信じ難いですわ」
「姫様は鈍感でいらっしゃいますから…いい意味で」
「いい意味で………?ならいいですわ!」
「…………………………ゴホン。話を戻します。なぜ姫様に言い寄る殿方がいなかったのか?それはオレグ様が徹底的な虫除けをしていたからです!」
「虫除け…」
「一緒にいる時は他の男性を睨みつけ、これみよがしに姫様との仲を見せつけ。権力を振りかざし、使えるものは何でも使って牽制していたからです!」
「いえ、そんなわけありませんわ?って…………オレグ様?」
しんと静まり返った謁見の間、皆の視線の先には…両手で顔を覆っているオレグ様が。
チラリと銀の髪から覗く耳は真っ赤で……
「え、本当に?」
「……………………………………」
黙秘権を行使するオレグ様。
まさかそんな…オレグ様もわたくしを望んでくださっていたということ?
わたくしの胸にほんのりと喜びが湧き上がるも、後で叩き落されることを想像して頭を振り、消し去りましたわ。
だって…期待して落とされるのは辛いですもの。
万が一今はそういうお気持ちでも、いつかオレグ様がわたくしを捨てて聖女様のところへ行ったら…そう考えると悲しくて、胸が痛いですわ。
だから自分を叱咤し、心を落ち着かせますわ。
ヤーナはもう既にめったんめったんに打ちのめされているオレグ様が見えないのか見えていても関係ないのか、攻撃の手を緩めませんわ。
「本当はそんなにも必死なくせに、姫様には余裕のある男を演じたいのかなんなのか、愛を囁くどころか姫様のもとに『君が望むなら会いに行くよ』という体で来る有り様。本当は自分が毎日会いたいくせに!婚約者が自分を好きすぎて困るという周りへのアピールのために姫様の恋心を利用したのです!それ故に姫様が我儘だとか、性格が悪いとか、ありもしない噂がたってしまったのです!」
「いや、僕はそんなつもりでは…」
「つもりはなくとも結果、そうなのです!」
攻撃の手を緩めるどころか、エンジンが暖まったのか、ぐんぐんと加速している感が…?
そしてお父様、お母様、それにお兄様!そんなにオレグ様を睨まないであげて!?
あのポーカーフェイスなオレグ様が狼狽しきっていますわ!?冷や汗がダラッダラ出てますわ!?
「ですがガルロノフ様のおかげで他の男どもが寄り付かなかったのも事実。もしもあそこで牽制なさらなければ、隙あらばお近づきになろうとする男どもがたくさん…それはもう、たっっっくさん!姫様に会いに来ていたはずです。それはもう、飴にたかる蟻のように!死骸に群がるウジ虫のように!!」
「言葉の選択がかなりヤサグレてますわ!?」
始めは男性のことを殿方と称していたのに、今は男ども…いえ、ウジ虫呼ばわり。
その男性方は貴族のご子息たちのことですわよね!?不敬罪で捕まりましてよ!?
「と…ともかく!僕はそれぐらいレーナを愛しているんだ!ぽっと出の王子なんかに渡さない!」
「王子なんかは不味いですわ、オレグ様…」
もはや誰も気にしてはいなさそうですが。
「俺は当分アルエスクに滞在する予定だ。ならばどちらがレギーナ殿下のお心を掴むか勝負すればいいではないか」
「し、勝負だなんて無意味です。レーナが好きなのは僕ですから。結果は決まっていますよ」
「ならば構うまい?」
「くっ………」
ニヤリと笑むレギオン殿下。
そしてそれを睨むオレグ様。
「え、まだ滞在すんの?」「勝負ってそんな勝手に…」「どっちも負けろ」と呟く面々。
な、なぜこんなことに………。
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