処刑回避のため、頂点を目指しますわ!

まなま

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閑話? ある王立魔導師団長の懐古 姫との出会い編

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怯える使者についてレギーナ殿下の部屋へ行けば、無愛想な侍女が出てきた。
自分の赤い瞳を見て一瞬顔を強張らせたが、すぐに負の感情を無表情の裏に隠す。

出来た侍女だ。

自分はあくまでも国王から直接遣わされたレギーナ殿下への客。
そんな自分に嫌な思いをさせるということは、すなわち国王を侮るということ。
殿下の侍女としてそんなことはあってはならないのだ。
…………未だに怯えている、自分の隣にいる使者は見習うべきだと思う。

侍女が自分を室内へ通す。
だがやはり警戒しているのだろう。
表情に出してはいないが、侍女の注意が常に自分に向いていることが分かる。
本当に出来た侍女だ。

「…………姫様。魔法師団長様がおいでです」
「まぁ!どうぞお入りになって」

高くて幼い声が室内から返ってくる。
陽のあたる明るい部屋に入ると、ものすごく驚いた。
なぜならそこには…妖精のように可憐な少女がいたからだ。

金の髪は光に当たってキラキラと輝き、瞳はサファイアのように綺麗だ。
整った顔つきはまだ幼いが、きっと将来は絶世の美女になるだろう。

さて…この幼いお姫様は自分を見てどんな反応をするかな?
美しい顔を歪めて泣き叫ぶかな?
もしかしたら衝撃で魔法が発動するかもしれない。
ショック療法もれっきとした手段の一つだ。

「初めてお目にかかります。王国魔導師団長のアナトリー・インギスです。以後お見知りおきを」
「はじめまして。レギーナ・アルエスクですわ」

深々と下げた頭をゆっくりと上げ……殿下としっかりと目を合わせる。
前髪は長いがこの距離だ。見えているはずだ。
この、赤い目が。

なのに殿下は………ふんわりと微笑んだのだ。

「わざわざお越し下さりありがとうございます。どうぞレギーナとお呼びくださいませ」
「…………………え?」

え、スルー?
大体の人間はここで驚き、固くなるか喚くかするものなのに…殿下はニコニコと笑っているだけだ。

「………?どうかしまして?」
「あ、いや、えっと…………では、レギーナ姫とお呼びしても?」
「はいっ!もちろんですわ!」
「レギーナ姫は………魔物は見たことはございますか?」
「魔物、ですか?」

もしかしたら、魔物を見たことがないから怖くないのかもしれない。魔物の姿を忘れているから怖くないのかもしれない。
自分の問い掛けにより魔物を思い出し、この瞳の色に嫌悪するかもしれない……という可能性に胸がギュッと掴まれたが、確かめずにはいられなかった。

「残念ながら現物は見たことはございませんが、本や絵画では見たことはございますわ」
「そう、ですか…。恐ろしくはないですか?」
「とても恐ろしいですわね!それが何か?」
「えっ………?えぇっと………」

こてん、と首を傾げる姿がなんとも愛らしい、が。そんな無防備でいいのか?
自分の瞳は赤い。赤いだけではなく、なんとも不気味に輝いているのだ。
自分が何も言えずにいると、レギーナ姫は会話が終わったものとみなしたようだ。

「立ち話もなんですから、どうぞこちらへ。今日は授業ではなく顔合わせと伺っておりましたので、お茶をご用意いたしましたの」
「…………はい」

うん………完全にスルーなんだね。

予想外だ。こんなことは未だかつて無かった。
会話して、お茶に誘われて……こんなのおかしい。
だってこれじゃ……自分が普通の人間みたいじゃないか。

「師団長様の好みが分からなかったのでお菓子を何種類かご用意いたしましたの。甘いものはお好きですか?お茶の好みはありますかしら?」
「自分の好み……ですか?」
「ええ!ぜひ教えてくださいませ!」

自分のことを知りたい、だって?本当に………?
前髪が長くて良かった。だって…少し俯けば顔が見えないから。
こんな風に話しかけてもらったことなんて無かった。
こんな風に心から笑いかけてもらったことなんて無かった。
だから…涙が出そうになるのは仕方がないじゃないか。

慣れたなんて嘘だ。
いつも寂しくて寂しくて仕方がないのを強がりで隠していただけだ。
自分に嘘をついて誤魔化していたんだ。

「……………………甘いもの、好きです。お茶は……なんでも飲みます。薬草茶なんかもよく研究で飲むぐらいですから、クセのあるものも飲めます………」
「薬草茶!それはとても興味がそそられますわね!ぜひとも詳しくお聞きしたいですわ!」
「え?あ、はい。植物には変わった作用を持つものがありまして、病を治すものや体調を良くするものはもちろん、中には記憶を操ったり混乱を引き起こすようなものもあります」
「えっ!?そんなものがあるんですの!?」
「はい。これは植物の持つ若干の魔力が作用するのではないかと言われていましす。まぁ市場での販売は愚か、栽培すら禁止されてはいるんですけどね。それから他にも…」

自分が説明すれば、レギーナ姫はずっと目を輝かせながら相槌を打ったり、質問をしたりした。
レギーナ姫の意識がずっと自分に向いている。ずっと、自分だけに。
その事実がなんと甘美なことか……!

今までこんなことがあっただろうか?
誰かが自分に興味を持ってくれるだなんて。
自分だけを見てくれるなんて………!
魔法に目覚めた時以上に心が踊り、喜びが沸き起こる。
そして、欲望も。


……………欲しい。


ドロドロと淀んだ心が、この美しい姫を、欲した。


   ******


レギーナ姫の部屋へと向かいながら今日の指導方法を思案する。
指導し始めてから2年近く経ったが、未だレギーナ姫は魔法を発動できずにいた。
レギーナ姫の魔法が発動しない理由。
それはひとえにレギーナ姫の心の美しさと穏やかさが理由だろう。

レギーナ姫は怒らない。
新人の侍女が失敗をしても、自分がわざと怒るようなことをしても、全く怒らない。
故に、怒りが発動のきっかけにはならないのだ。

心に衝撃を与える以外にも方法はある…が。
身体的に攻撃するとか、魔法をぶつけるとか…不敬罪で確実に捕まってしまう。
それにレギーナ姫を傷つけるなど、自分には出来そうもない。

それに魔法が発現できない限り自分はレギーナ姫のところに通うことができる。
今はこのままで……。
そんな不誠実なことを考えたバチが当たったのだろうか。

「………?え?レギーナ、姫?え?えっ!?」
「長い間ありがとうございました。わたくしも12になります。もう…魔法は諦めようと思いますの」
「えっ!?いや………いやいやいや、待ってください?その前にそ、そのお姿は…………?」
「?」

え、気付いてない?そんなわけある!?
だって…すごい太ってますよ!?3倍くらいになってますよ!?
きのうまでの可愛らしい妖精はどこ行った!?

「どうかなさいまして?」
「………………」

え、なんて言ったら正解なんだ?これ。
そろりと視線を横にずらせば、姫専属の侍女が余計なこと言うんじゃねーぞオーラを出している。

えぇ………………。

こんなこと今まで見たことがない。
一晩で人間がここまで太るなんてありえない………

そうだ。この世界でありえないことを可能にするもの。それが魔法だ。
きっとこれは何か魔法の作用に違いない。
しかしこんな事例は見たことも聞いたこともない。
だとすれば………もしかして。レギーナ姫の魔法属性がとんでもなくレアで、その影響が出たのでは………!?

「レギーナ姫!もしかしたらレギーナ姫はものすごく珍しい属性の魔法をお使いになるのかもしれません!だからもう少し、もう少しだけ頑張りましょう!!」
「ふふっ。師団長様ったら。そんなわけございませんわ?この年までどんなに頑張っても魔法を発動出来なかったんですもの」
「え、いや……だって!」

この太り方!尋常じゃないだろう!気付いてよ!!

とりあえず指導のことは国王に相談してみよう。
レアかもしれないと説明すれば、きっと今まで通り自分をレギーナ姫のところに遣わし続けて下さるはず。

ひとまずここは退席し、立て直そう。

「とりあえず自分は失礼します。レギーナ姫のお気持ちは承知しました。ですが国王に自分の方から直接説明致しますので、すぐまたお会いすることになるかと」
「それはどうかしら…。お父様は一国の王ですもの。無駄なことはなさらないと思いますわ」

いや、レア属性の魔法なら無駄な訳がない。きっと何かしらの国益に繋がるはずだ。
それにこのように大きな変化が起きているのだ。あと何か、少しのきっかけがあれば魔法が発動するはず。

「今まで貴重なお時間をくださってありがとうございました。魔法は発動できませんでしたが、有意義な時間を過ごすことができましたわ」

レギーナ姫が締めに入る。
これで終わりにはならないと分かっていても胸がヒリヒリする。
レギーナ姫は…自分と会えなくなっても悲しくないんだろうか?

「最後にひとつだけ。その…実は初めて会ったときから気になっていたのですが………その瞳」
「えっ?」

ドクリと心臓が嫌な音を立てる。
何も気にしていないように見えたが違ったのか?

…………レギーナ姫はこの瞳をどう思っていた?

どこか言いにくそうなレギーナ姫を見ていると、悪い方向へ悪い方向へと想像が膨らんでいく。
『赤い色が血のようで恐ろしい』?『魔物と同じ色』?『見る度に気持ち悪かった』………?

手が冷たくなり、小さく震える。
嫌だ。聞きたくない。彼女の口からだけは。
ギュッと目を瞑り拒絶しようとするも、聞こえてきた声は………いつも通り、暖かかった。

「とても綺麗なのに見えなくてもったいないと思っておりましたの。前髪を少し切ってみては…?あ、いえ。もちろん強制じゃありませんのよ?ただ、せっかくルビーみたいで素敵なのに、と思っておりましたの」
「……………綺麗?す、素敵?」
「ええ!とっても!」

ニコニコと笑っている顔に嘘の色は無い。

ずっと憎んでいた、この色が。
ずっと嫌われていた、この色が。
綺麗?素敵?本当に…?

「な…なぜ泣きますの!?」
「…………え?」

気付けば止めどなく涙が溢れていた。

「ごめんなさい!傷つくような事を言ってしまったかしら!?そ、そんなつもりはございませんでしたのよ?本当にごめんなさい!」

オロオロとするレギーナ姫に泣きながら笑いかける。

「ありがとう、ございます……」
「えっ?」

なんのことか分からず首を傾げるレギーナ姫が可愛くて、また笑ってしまった。

自分の中で何かがカチリとはまった気がした。
なんとしてでも………、、、。

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