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26 癖が強いですわ!
しおりを挟む「殿下はボリスラーフの話をちゃんと聞いたことがありまして!?確かに彼の言葉は意味不め…ではなくて、難解ですぐには分かりませんわ。でも、それでも!ちゃんと理解しようとしまして!?」
わたくしはルスラン様に必死に訴えますわ。
……ち、ちょっと言い間違いもあったけど…そこはスルーするとして、きちんと、伝わってほしいのですわ。ボリスラーフは我が城の大切な料理長ですもの。
「今日一日…いえ、半日足らず。ご一緒して思いましたの。殿下は他人の話を最後まで聞かず、ご自身の予想で事を進めてしまうきらいがあるようですわ。それが毎日続いたら…そう思うととても」「んんー!んんんんー!!」
「…………はぁ。ほらね?」
「っ!」
やっと気付いて下さいました?ご自分のなさっていたこと。
ボリスラーフは確かに厨二病だけど。何を言っているのかすぐには分からないけれど。
でも、ボリスラーフはボリスラーフ。ルスラン様はルスラン様。同じ思考ではないのですもの。例え言葉が難解でも、意見が食い違おうとも。話を聞いて歩み寄らなければ…話す気力も無くしてしまうのですわ。
だって…
「自分の意見を聞いてもらえないだなんて……そんなの、自分が自分じゃなくても………誰でもいいって言われているのと同じようなものですもの…」
「…………」
そんなの悲しいでしょう?
ちらりと横を見ると……悲しそうな笑顔のボリスラーフが。その表情が意味するものは『肯定』。
ルスラン様もボリスラーフの顔を見て…目を見開き、固まってしまわれましたわ。
ちょっと…気の毒ですわ。
だってルスラン様はボリスラーフのことが…お兄様のことが大好きなんですもの。
悪気が無かったとはいえ自分のせいでお兄様を追い詰めていたと知って…ショックですわ、よ………………ねへぇっ!!?
「ル……ルスラン様っ!!?」
「う…うぐ………ぐぐぐ……………ぐぐぐぐうううううぅ~~~」
「ふえぇっ!?」
なんだか左手があたたかい…と思ったら涙ぁ!?
めっちゃ泣いてるぅぅう!?
咄嗟に左手の口封じと右手の壁ドンを外して大きく飛び退き…オレグ様、ハンカチありがとうございま……って痛い痛い痛いですわ!?
わたくし何かお気に障るようなこといたしまして!?
左手が摩擦で痛い熱い!のですわ!?
「うっ、うぅ………。も、もじか、じて……に、兄様の話じ方は…おおお俺のせい…なんでず、ね……?」
嗚咽とともに支え支えなんとか絞り出した言葉は本当に辛そうで、先程まで漲っていた自信は全く伺えず………あぁ、なんだか罪悪感を感じますわ!
「兄様、ご、ごべ………ごべ…………ごべんだざいぃぃいいぃいい~~~」
「ひゃあっ!?ご、ごめんなさいごめんなさい!!泣かないで!?ほら、お菓子ならまだたくさんありますわよ!?召し上がります??美味しいですわよ!?」
「ぐぐぐぐぐふぅぅうぅううぅう~~」
ルスラン様、泣き方の癖が強い!!
ってそうじゃなくて!オレグ様もヤーナもドン引きしていて助けてくれませんわ!?
どどどど…どうすれば………!!?
「ふっ……ふははっ!」
このイケボは………ボリスラーフ!?
あのボリスラーフが笑ってますわ!?
「に、兄様……?」
「ルスラン」
ふぐっ。イケメンの微笑み……尊い。
………オ、オレグ様!?なぜ睨みますの!?
「汝の涙の囀りは古より変わらないな」
「に、兄様…………………なんと?」
ルスラン様…鼻水が出たままきょとん顔ですわ。
えぇまぁ…そうですわよね。すぐには厨二病発言を理解することなんて出来ませんわよね。
え?ボリスラーフ。その縋るような子犬の目は…?やだ、可愛い。あぁ、通訳ですわね?よっしゃー!任せてくださいませ!
「あなたの泣き方は昔から変わらないな、と言っておりますわ!」
「兄様…。許してくれるのですか…?」
「我が聖書には汝を忌むという言葉はない」
「殿下を憎む訳ない、だそうですわ」
「に、兄様………!」
ボリスラーフは微笑みを湛えたまま、ルスラン様の頭を撫でましたわ。
良かったですわね…兄弟の蟠りが無くなって。
「ふっ…ふぐ……ふぐぐぐうぅぅうぅうぅぅ~」
………とりあえず泣き方の癖が強い!
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