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25 怖いものなどありませんわ!だってわたくし悪役令嬢ですわ!
しおりを挟む「ふがふが、ふが………」(『兄様、なぜ………』)
ボリスラーフの笑顔が少し翳り、憂いを帯びていって…わたくしまで胸が苦しくなってしまいますわ。
「我が野望はゼレグラント国の王ではなく、魂の源を創造せし神になることなのだ(私の夢はゼレグラント国の王になることではなく、料理長になることだ)」
あ、長文は厨二病になってしまいますのね。
ルスラン様は何を言っているのか理解できないのか、怪訝そうな顔をなさっていますわ。
そっかそっかぁ。ボリスラーフは料理人になるのが夢だったのですね。
確かにボリスラーフは実力を認められて城に召し上げられた実力者。きっといっぱい努力しましたのね。
………あ!そうですわ!
「ルスラン様!どうぞこちらをお召し上がり下さいませ!」
「ふごっ!?」
わたくしは脇に置いてあったバスケットから小さな焼き菓子を素早く取り出し、塞いでいた手を外して口に突っ込みましたわ!
えぇ、えぇ!話す暇は与えませんわよ!
わたくしを睨みながらも素直に口をもぐもぐさせるルスラン様。
次第に眉間の皺が広がり、目を見開いていって…思わずといった風に。
「……………美味い」
そうでしょう、そうでしょう!?
「ボリスラーフの料理はとても美味しいんですのよ!」
「んんっ!」
我が城の料理長が褒められたことが嬉しくて、思わずズイッと顔を寄せて至近距離で満面の笑みを浮かべてしまいましたわ!
あら…そんなに顔を真っ赤になさるほど不快でした?
そういえばルスラン様はわたくしの…レギーナの見た目を笑っておられましたわね。
痩せてもデブスからデブが抜けただけですから…不快でしたのね?
「失礼いたしましたわ。ごめんあそば、せっ……!?」
突然肩が掴まれ、後ろへ、倒れ、る………!?
ぽふっ。
「あ、あら???」
「ダメだよ?不用意に男に近付いては」
気付けばわたくしはオレグ様の腕の中。
ちょっ…!痛い痛い、痛いですわ!掌をハンカチで擦らないでくださいませ!!
「ったく、すぐに他の男をたらしこむんだから…。しかも他の男の口に触れるだなんて…!有り得ない……有り得ない………………!」
な、何なんですの!?
笑顔のオレグ様のお口からブツブツと念仏のような、呪いのような何かが聞こえますわ!?怖いですわ!!
「……おまえ、アルエスクの王女と婚約してるんだろう?侍女にうつつを抜かすなどあってはならないだろうが」
大丈夫ですわ!わたくしがその王女ですから!………とは言えませんが。
「だからその侍女は、その……お、俺が、も、もらってや「却下です。愛妾だなんて以ての外です。愛妾じゃなくて正妻でもだめですが」
間髪入れずに…いっそ食い気味にオレグ様がお断りして下さいましたわ!
わたくしがアイショウとやらになることを!
……だからアイショウって何ですの!?
残念ながらもう聞ける雰囲気ではございませんわ!
「なぜだ!?お前には関係ないだろう!」
「この娘はレーナの大切な侍女です。彼女の婚約者として守る義務があります」
笑顔でサラッと嘘が出てきましたわ流石ですわでももしかしてこういう嘘言い慣れてますの!?そうなんですの!?
「そんなことより……」
おっふ、真相は闇の中!!
「ボリスラーフの作った菓子を食べていかがでしたか?」
そうでしたわ!ボリスラーフのことを忘れてましたわ!
この問題はお城に着く前に解決しなければなりませんわ。
両国の関係のためにも。ボリスラーフのためにも!
「ね?ボリスラーフのお菓子は美味しいでしょう?どこかホッとする味でありながら、高級感も損なわず…一日や二日の努力で出せる味ではないことは殿下にもお分かりになりますでしょう?」
「……………………」
あら?ルスラン様がわたくしの話を聞いてくれていますわ!
このまま押せ押せー!ですわぁー!!
本人の口から希望を言わせるため、ちらりとボリスラーフを目で促しますわ。
「………我はゼレグラントの王になりたくはな「それならゼレグラントの厨房で作ればいい!アルエスクである意味はなかろう!?」
……あ、うん。やっぱり聞いてくださいませんのね。
「ゼレグラントの兄様の部屋から通いやすい場所に厨房を作り、仕事の合間にそこで料理をすればいいだろう?これで解決だな!兄様、では今回の訪問が終わったら一緒に…」
「シャラ――――――――――――ップ!!!!!!!」
ドンッ!!
「ふごぉっ!!?」
壁ドン&口封じアゲイン!ですわ!!
「んも―――――――――――っ!怒りましたわ!いい加減話をお聞きなさいな!!」
身分?国際問題?
そんなもん、どうとでもしてやりますわ!!
なんせわたくし、悪役令嬢ですもの!!
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