処刑回避のため、頂点を目指しますわ!

まなま

文字の大きさ
上 下
29 / 48

25 怖いものなどありませんわ!だってわたくし悪役令嬢ですわ!

しおりを挟む


「ふがふが、ふが………」(『兄様、なぜ………』)

ボリスラーフの笑顔が少し翳り、憂いを帯びていって…わたくしまで胸が苦しくなってしまいますわ。

「我が野望はゼレグラント国の王ではなく、魂の源を創造せし神になることなのだ(私の夢はゼレグラント国の王になることではなく、料理長になることだ)」

あ、長文は厨二病になってしまいますのね。
ルスラン様は何を言っているのか理解できないのか、怪訝そうな顔をなさっていますわ。

そっかそっかぁ。ボリスラーフは料理人になるのが夢だったのですね。
確かにボリスラーフは実力を認められて城に召し上げられた実力者。きっといっぱい努力しましたのね。
………あ!そうですわ!

「ルスラン様!どうぞこちらをお召し上がり下さいませ!」
「ふごっ!?」

わたくしは脇に置いてあったバスケットから小さな焼き菓子を素早く取り出し、塞いでいた手を外して口に突っ込みましたわ!
えぇ、えぇ!話す暇は与えませんわよ!

わたくしを睨みながらも素直に口をもぐもぐさせるルスラン様。
次第に眉間の皺が広がり、目を見開いていって…思わずといった風に。

「……………美味い」

そうでしょう、そうでしょう!?

「ボリスラーフの料理はとても美味しいんですのよ!」
「んんっ!」

我が城の料理長が褒められたことが嬉しくて、思わずズイッと顔を寄せて至近距離で満面の笑みを浮かべてしまいましたわ!

あら…そんなに顔を真っ赤になさるほど不快でした?
そういえばルスラン様はわたくしの…レギーナの見た目を笑っておられましたわね。
痩せてもデブスからデブが抜けただけですから…不快でしたのね?

「失礼いたしましたわ。ごめんあそば、せっ……!?」

突然肩が掴まれ、後ろへ、倒れ、る………!?

ぽふっ。

「あ、あら???」
「ダメだよ?不用意に男に近付いては」

気付けばわたくしはオレグ様の腕の中。
ちょっ…!痛い痛い、痛いですわ!掌をハンカチで擦らないでくださいませ!!

「ったく、すぐに他の男をたらしこむんだから…。しかも他の男の口に触れるだなんて…!有り得ない……有り得ない………………!」

な、何なんですの!?
笑顔のオレグ様のお口からブツブツと念仏のような、呪いのような何かが聞こえますわ!?怖いですわ!!

「……おまえ、アルエスクの王女と婚約してるんだろう?侍女にうつつを抜かすなどあってはならないだろうが」

大丈夫ですわ!わたくしがその王女ですから!………とは言えませんが。

「だからその侍女は、その……お、俺が、も、もらってや「却下です。愛妾だなんて以ての外です。愛妾じゃなくて正妻でもだめですが」

間髪入れずに…いっそ食い気味にオレグ様がお断りして下さいましたわ!
わたくしがアイショウとやらになることを!
……だからアイショウって何ですの!?
残念ながらもう聞ける雰囲気ではございませんわ!

「なぜだ!?お前には関係ないだろう!」
「この娘はレーナの大切な侍女です。彼女の婚約者として守る義務があります」

笑顔でサラッと嘘が出てきましたわ流石ですわでももしかしてこういう嘘言い慣れてますの!?そうなんですの!?

「そんなことより……」

おっふ、真相は闇の中!!

「ボリスラーフの作った菓子を食べていかがでしたか?」

そうでしたわ!ボリスラーフのことを忘れてましたわ!
この問題はお城に着く前に解決しなければなりませんわ。
両国の関係のためにも。ボリスラーフのためにも!

「ね?ボリスラーフのお菓子は美味しいでしょう?どこかホッとする味でありながら、高級感も損なわず…一日や二日の努力で出せる味ではないことは殿下にもお分かりになりますでしょう?」
「……………………」

あら?ルスラン様がわたくしの話を聞いてくれていますわ!
このまま押せ押せー!ですわぁー!!
本人の口から希望を言わせるため、ちらりとボリスラーフを目で促しますわ。

「………我はゼレグラントの王になりたくはな「それならゼレグラントの厨房で作ればいい!アルエスクである意味はなかろう!?」

……あ、うん。やっぱり聞いてくださいませんのね。

「ゼレグラントの兄様の部屋から通いやすい場所に厨房を作り、仕事の合間にそこで料理をすればいいだろう?これで解決だな!兄様、では今回の訪問が終わったら一緒に…」
「シャラ――――――――――――ップ!!!!!!!」

ドンッ!!

「ふごぉっ!!?」

壁ドン&口封じアゲイン!ですわ!!

「んも―――――――――――っ!怒りましたわ!いい加減話をお聞きなさいな!!」

身分?国際問題?
そんなもん、どうとでもしてやりますわ!!
なんせわたくし、悪役令嬢ですもの!!

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

処理中です...