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20 レア属性…なのかもなのですわ!
しおりを挟む「レーナ……大丈夫かい?」
テントの外からオレグ様の控えめな声が。
うん。あんなことがあったんですもの。どうなったのか気になりますわよね!
「問題ありませんわ!ちょうど今、着替えが終わりましたの!」
テントを出ると、目の前にはわたくしを見て固まるオレグ様。
そりゃそうですわよね。これだけ急激に痩せたんですもの。別人と言っても過言ではありませんわ!
「レーナ?本当にレーナ、なのか…?」
「はい、わたくしですわ!なぜかあの一瞬で痩せましたの!」
まだ信じられないのか、わなわなと震える手をこちらに伸ばして来………てへぇ!?
ガバッ!!
「レーナ!」
「ひゃあ!?」
え、なに!?えっ!?いきなり抱擁ですって!?やだ、近い!オレグ様が近い!!
ふあぁぁあ!!香水の香りなのか、オレグ様の香りなのか、ほんのりいい香りがするぅぅぅ!!
心臓が…心臓がフル稼働ですわ!ドッドッドッドッ……ってもはや早鐘。もはやヌーの大群。ライオンはどこ!?どこですの!?
「はい、離れてくださぁーい」
ベリッ。
「何をする!?婚約者なんだからこれくらい…」
「駄目です。婚約者でも駄目です」
「だってせっかく昔のレーナが…」
「駄・目・です」
ヤーナ、グッジョブ!
わたくしもう少しでオレグ様のフェロモンに殺されるところでしたわ!
わたくしが懸命に息を整えている間にヤーナとの睨み合いを終えたオレグ様は改めてわたくしを見て…また固まってしまいましたわ?ほんのり頬が赤いのですわ?
「そ、その服は…ヤーナに借りたのかな?」
「そうなんですの!わたくしの服は全て大きすぎて…。変ですか?」
「いや、変じゃない!変じゃないけど、なんていうか…うぅ…刺激的過ぎる…」
「刺激的?侍女のお仕着せが?」
そう。今、わたくしが着ているのはヤーナの服。侍女のお仕着せ。つまりは地球で言うメイド服なのですわ!
………………はっ!なるほど!もしやオレグ様は…メイド服フェチですのね!?
丈は「萌え萌えキュンキュン♡」と言ってくださるような方々に比べてかなり長めのくるぶしまであるロングスカートですが、それでもメイド服は男のロマンに違いありません。
オレグ様もお好きなのですね?そうなのですね?分かります分かります!
でも着ているのがわたくしで申し訳ないですわ!そこは追々、聖女様に着てもらって楽しんでくださいませ!
「ですがまだまだダイエットが必要みたいで…少しきついのですわ」
そう。ヤーナにメイド服を借りたのはいいものの…やはりまだまだぽっちゃりしているのかしら?きつくてボタンがとれそうなのですわ!はちきれそうなのですわ!
「いや、太ってるとかじゃなくて、それは…なんていうか…ありがとうございますというか…」
「?」
オレグ様……何て?もう少し声量を大きくお願いいたしますわ!
「今の姫様にダイエットは必要ありません。今がベストな状態かと。胸元がきついのはスタイルがいいからです」
「?スタイルが良くて痩せていればきつくないんじゃなくて?」
「痩せたのにボリュームがあるという素晴らしい状態ということです」
「??」
ボリュームがあっては駄目なのでは?わたくしスリムになりたいのに!
「なんだよあれ…本当にあのレギーナ様か…?あの一瞬でこんなに痩せたってのか!?」
「うわ、マジ可愛い…!天使かよ!?変わりすぎだろ!?」
「あの胸元は視覚の暴力だろ…。ボタンはち切れそうじゃん…。エロいメイドとか、ヤッバ…」
ギンッ!
「「「ヒッ!?」」」
ひそひそと話していた騎士様たちをふたりがひと睨みで黙らせましたわ!ひぃぃ!怖すぎるぅぅ!
騎士様たちは何を話してましたの?もしかしてわたくしのことかしら?
「痩せても顔があれじゃな~」的な?「服パツパツじゃん。痩せたのにまーだ太ってるな~」的な?
うぅ…分かっておりますわ!わたくし、勘違いしたりしませんわ!ちゃんと己を見つめられる悪役令嬢ですもの!これからも精進いたしますわ!
それで…ふたりはわたくしのことをこそこそ言われて怒ってくださいましたのね?お優しいですわ!でも事実ですから仕方がないのですわ!これからも精進いたしますわ!
「姫さん…」
「チャラス様?」
「………タラスだよ」
いつの間にか近くに来ていたチャラス様。その顔はどこか熱に浮かされていて、ツッコミにもキレが無くて…どうなさいましたの?大丈夫ですの?
「俺、俺………」
「?」
「俺、姫さんのことが好っ……がぶぉっ!?」
「キャーーーーーーー!!!」
チャラス様が…チャラス様のお顔だけがぷるるんっと水で覆われて!?このままでは溺死してしまいますわ!?水の魔法…ということはオレグ様の仕業ですわね!?水の魔法を使える方もそうそういませんもの!
「危なかった」って…オレグ様!?現在進行形でチャラス様の命が危ないですわ!!早く解除してくださいませ!!
「オレグ様、何をなさいますの!?」
「うん、オーリャだよ」
「いえ、そういうことではなく!……んもう!オーリャ!!!チャラス様が死んでしまいますわ!?」
「分かったよ…………」
なぜ渋々ですの!?
そしてこんな時に愛称呼びを強要している場合ではありませんわ!
パチンッとオレグ様が指を鳴らすと、水が霧散して…そこには頭だけべしゃべしゃのチャラス様が…。
「ゴホッ、ゴホッ」
「だ、大丈夫ですの!?」
「こ、この……………!」
「ひ、ひぃ!?」
「僕の婚約者に何の用だい…?」
「ひょぉ!?」
『ひゅぉぉお』という音と共にチャラス様の周りを風が舞い、『しゃららら』という音と共にオレグ様の周りを小さな水の粒が舞って…どうしましょう!?バチバチですわ!?一触即発ですわ!?
「やめんかーーー!!」
ゴン!ゴツン!!!
ひゅんっ。
ざばんっ。
「ラルフ!」
一触即発の状態を打ち破ったのは魔法など関係なく、ラルフの拳骨。
ふたりの頭に落とした瞬間、風の魔法も水の魔法も霧散いたしましたわ!良かったですわ!ラルフ、ナイスですわ!
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「こんなところに伏兵がいたなんて…!」
………なんの話ですの?
「お姉ちゃん!」
「っ!マルコ!」
呼びかけられて振り返れば、そこには満面の笑みを浮かべるマルコの元気な姿が。
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「うん、怖かったよ…」
あら、せっかく笑顔だったのにうるっとさせてしまいましたわ!?
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わたくしがおろおろとしていると、マルコの後ろからマルコのお母様がいらっしゃいましたわ!ま…まさか、わたくしが泣かせたことを咎めに!?
ちなみにわたくしは騎士ではありませんわ!姫だとも言ってませんでしたけども。
「本当に…マルコを、村を守ってくださってありがとうございました!なんとお礼を申し上げたらいいのやら…」
「いえ、わたくしは何も…」
「いいえ、いいえ!騎士様のおかげに間違いありません!騎士様の聖なるお力に違いありません!」
あら。怒られませんでしたわ!良かったですわ!
マルコのお母様は今も目に涙を溜めていて、本当にマルコを心配していたということが伝わってきますわ。
しかし、聖なるお力てなんぞ?わたくしはただの悪役令嬢でしてよ!聖なる力は聖女が担当するところで、わたくしは管轄外ですのよ!とても残念ですけれども!
「うん、僕にもレーナが放った光に見えたよ。もしかしたらあれが君の魔法なんじゃないかな」
「オレグ様…。でもあんな魔法はどの属性にもございませんわ?」
「うん、5つの属性には存在しないね。でも魔法属性には本当にレアなものも存在する…らしいんだ。何百年に一度、出るか出ないかくらいの確率で。だから伝説的な扱いで、僕も確かなことは言えないんだけどね。もしかしたら君はそれなのかもしれない。……帰ったら王属魔術師団に聞いてみよう」
「レアな属性。わたくしが……?」
落ちこぼれだったわたくしが、レアな属性持ち…?本当に?小説ではわたくし、最後まで魔法が使えませんでしたわ。……やはり何かの間違いなのでは?
でも、今の状況はわたくしが記憶を取り戻して、こうして遠征に来たからこそ。
もしかして小説とは違う道を歩んで、魔法が開花したとか…?
そうだとしたら未来は変えられるということですの?
わたくしが処刑されない可能性もあるということですの…?
「お姉ちゃん!」
「はゎっ!?」
わたくしが深い思考の海に沈んでいると、がしっとマルコがわたくしに抱きついてきましたわ!
あら、可愛らしい。
「助けてくれてありがとう!」
「いえ、わたくしが助けたのかどうかはまだ分かりませんわ?」
「ううん、助けてくれたのはお姉ちゃんだよ!絶対そうだよ!お姉ちゃんは僕の命の恩人だよ」
「命の恩人…。もしそうだとしたら、わたくしの力で助けられたのだとしたら、本当に嬉しいですわ」
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それだけでここまで頑張ってきたかいがございましたわ!
わたくしが喜びに自然と微笑むと、マルコは一瞬目を見開いてわたくしを見た後、ふわりと微笑んでくださいましたわ。
うふふ、ごめんなさいね?びっくりするほどブスでしたのね?これでもデブスからただのブスに昇格したのですけれどね?
「…お姉ちゃん!」
「なんですの?」
「僕と結婚して!!」
「えぇっ!?」
何がどうなってそうなりましたの!?
「牽制の範囲が広すぎる!!」
……オレグ様は何をおっしゃってますの?
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