23 / 48
19 …………の、危機!?なのですわ!
しおりを挟むどれぐらい経ったのかしら?
目をぎゅうっと瞑っていても眩しいぐらいの光が、夕方の薄暗い世界を照らして…やがて、ゆっくりと収まり、目を開けると…。
「魔物は…どこ?」
静まり返った広場にあの巨大な魔物はおらず、騎士様たちもみなキョロキョロと魔物を探すばかり。
マルコもびっくりしすぎて涙が引っ込んでいますわ。もちろん無傷ですわ!
「マルコ!マルコ…!あぁ!無事で良かった!!」
「おっ…お母さん…!うわぁん!!」
お母様がマルコの元へ駆け寄り、ぎゅうぎゅうと抱きしめると、安心したのかまたマルコが泣き出してしまいましたわ。
でも今度の涙は嬉し涙。
「あぁ、良かっ…た……?」
わたくしも安堵し、肩の力を抜いたところ、で…?
「っ!?………………助けて!!!」
異変を察知しすぐさま蹲ったわたくしは、咄嗟に助けを求めたのですわ…!
「レーナっ!?」
オレグ様がすぐさま駆け寄ってくれます…が。
「オレグ様じゃなくて!ヤーナ!助けて!!」
「はいっ!ただいま!」
ズザーーーーーーッ!!
ごめんなさい!でもオレグ様は今はお呼びではございませんの!
勢いよく駆け寄るオレグ様は急には止まれず、ヘッドスライディーングっ!!
アーンドその上をひょいっとヤーナが飛び超えてわたくしのところへ…ってヤーナ!オレグ様は公爵家のご子息ですわよ!飛び越えてはだめですわ!?
「っ!?姫様!?ど…どうなさったんですか!?それ…!」
「分かりませんわ!でも急に洋服が…洋服が大きくなってしまったのですわぁ!!」
そうなのですわ!なぜか急にわたくしの着ていた洋服が全て大きくなり、ズボンとドロワース…つまりは下着が!落ちそうになって…お、お、おしり丸出しになるところでしたわぁぁあ!!!危なかったですわぁぁあ!!!
一国の姫がおしり丸出し……駄目ですわ!
アルエスクだけでなく、近隣諸国でまでも笑い者になってしまうところでしたわ!
そう。おしり丸出しの危機だったため、今回は男性のオレグ様ではなく、女性で専属侍女のヤーナに助けてもらいたかったのですわ!ごめんなさいオレグ様!
でもこれでわたくしのおしりの安寧は守られましたわ!
「姫様違います!服が大きくなったのではなく、姫様がお痩せになったのです!!」
「………え?」
わたくしがおしりの安寧を得て安堵していると…何を言っているのかしら?ヤーナは。人間はそんなに急には痩せなくってよ?それはわたくしが一番よく知っているわ!努力しても努力してもなかなか痩せなかったんですもの!
「そんなことより、このままではいけませんね。…失礼します」
「きゃっ!?ヤ、ヤーナ!?」
おおお…お姫様抱っこぉぉ!?
「ヤーナってこんなに力持ちでしたの!?」
「姫様の侍女たる者、当然です」
ズボンが落ちないようぐいぐい持ち上げ、必死におしりを死守しているわたくしを軽々と持ち上げる専属侍女。
え。姫の侍女はそんなことまで想定しなくていいと思いますの。今回は非常に助かりましたけれども。
「とりあえずテントへ入りましょう」
今度はわたくしを抱っこした状態で、倒れたままわたくしを見て呆然としているオレグ様をひょいっと飛び越え…ては駄目ですってば!
とにかくそのままの状態でテントの中へ。
「さぁ、これで大丈夫です。着替えをいたしましょう」
「ありがとう、ヤーナ。助かりましたわ!」
さすがヤーナ。わたくしの頼れる専属侍女!
わたくしのおしりはヤーナのおかげで守られましたわ!
「でも、なぜ急にこんなにお痩せになったんでしょう?どこか具合の悪いところはありませんか?違和感があるところはありませんか?」
「いいえ、ありませんわ。……ねぇ、わたくし……本当に痩せましたの?あんな一瞬で?」
「はい。ものすごくお痩せになりました」
わたくしは改めて自分を見下ろしてみましたわ。
見下ろせばいつもお腹のお肉で見えなかった自分のつま先がくっきりと見えますわ。
そして手や足、指までもがほっそりとして骨の存在を感じられるようになって…あのボンレスハムはどこに行ったのかしら?
「本当に、痩せましたのね………」
「はい。とてもお綺麗になられましたよ」
「それは無理がありますわ」
デブスからデブをとっても所詮ブス。
わたくし、勘違いいたしませんわ!勘違いして聖女をいじめる…なんてことはいたしませんわ!
ヤーナが「本当です!お美しいです!」と力説してくれていますが…痩せれば前よりは美しくなるのは当たり前ですわ。なんたってデブスがブスに昇格いたしましたから!そうよ!これで嫌悪感を抱かれない程度にはなったかしら!?やりましたわ!!理由はわからないけど!!
「そういえばあの光はなんだったのかしら?魔物がどこに行ったのかも謎ですわね」
「私には姫様から出た光で魔物が消えたように見えました。ですがその光の原因が分かりませんね…。一度城に戻って調べましょう。姫様のお体も心配ですし」
ヤーナはとにかくわたくしの体の変化が心配みたいですわ。そこかしこ見て、異常がないか心配してくれていますわ!ヤーナ、大好きですわ!って、ヤーナ!そんなとこまで見ないで!!恥ずかしいですわ!!
「異常はなさそうですね。とにかくお着替えをいたしましょう。…でも今までの姫様のお洋服は全て大きすぎて合いませんね…」
「そうね…。ちょっと直したくらいでは着られそうにないわね…」
恐らく半分くらいの体積になってしまったわたくしには持ってきた服は全て小さくて…どうしましょう?
「私の服を着てもらう…?でも私の服って…。いやでも姫様の服では……」
「そうよヤーナ!申し訳ないのだけれど、あなたの服を貸してくださる?」
「いや、でも…私の服は…」
「あ…まだわたくしには小さいかしら?もう少しダイエットが必要……?」
「いいえ!全然そういうことではなくてですね!?私の服はほら、その…」
「…………あぁ、なるほど。問題ありませんわ!」
「問題あるんじゃないですかねぇ!?」
「でも他に女性はいませんもの!仕方ありませんわ!」
「そうですよね…はぁ…」
ということでヤーナの服をお借りしますわ!痛み入りますわ!
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる