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19 …………の、危機!?なのですわ!

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どれぐらい経ったのかしら?
目をぎゅうっと瞑っていても眩しいぐらいの光が、夕方の薄暗い世界を照らして…やがて、ゆっくりと収まり、目を開けると…。

「魔物は…どこ?」

静まり返った広場にあの巨大な魔物はおらず、騎士様たちもみなキョロキョロと魔物を探すばかり。
マルコもびっくりしすぎて涙が引っ込んでいますわ。もちろん無傷ですわ!

「マルコ!マルコ…!あぁ!無事で良かった!!」
「おっ…お母さん…!うわぁん!!」

お母様がマルコの元へ駆け寄り、ぎゅうぎゅうと抱きしめると、安心したのかまたマルコが泣き出してしまいましたわ。
でも今度の涙は嬉し涙。

「あぁ、良かっ…た……?」

わたくしも安堵し、肩の力を抜いたところ、で…?

「っ!?………………助けて!!!」

異変を察知しすぐさま蹲ったわたくしは、咄嗟に助けを求めたのですわ…!

「レーナっ!?」

オレグ様がすぐさま駆け寄ってくれます…が。

「オレグ様じゃなくて!ヤーナ!助けて!!」
「はいっ!ただいま!」
ズザーーーーーーッ!!

ごめんなさい!でもオレグ様は今はお呼びではございませんの!
勢いよく駆け寄るオレグ様は急には止まれず、ヘッドスライディーングっ!!
アーンドその上をひょいっとヤーナが飛び超えてわたくしのところへ…ってヤーナ!オレグ様は公爵家のご子息ですわよ!飛び越えてはだめですわ!?

「っ!?姫様!?ど…どうなさったんですか!?それ…!」
「分かりませんわ!でも急に洋服が…洋服が大きくなってしまったのですわぁ!!」

そうなのですわ!なぜか急にわたくしの着ていた洋服が全て大きくなり、ズボンとドロワース…つまりは下着が!落ちそうになって…お、お、おしり丸出しになるところでしたわぁぁあ!!!危なかったですわぁぁあ!!!
一国の姫がおしり丸出し……駄目ですわ!
アルエスクだけでなく、近隣諸国でまでも笑い者になってしまうところでしたわ!
そう。おしり丸出しの危機だったため、今回は男性のオレグ様ではなく、女性で専属侍女のヤーナに助けてもらいたかったのですわ!ごめんなさいオレグ様!
でもこれでわたくしのおしりの安寧は守られましたわ!

「姫様違います!服が大きくなったのではなく、姫様がお痩せになったのです!!」
「………え?」

わたくしがおしりの安寧を得て安堵していると…何を言っているのかしら?ヤーナは。人間はそんなに急には痩せなくってよ?それはわたくしが一番よく知っているわ!努力しても努力してもなかなか痩せなかったんですもの!

「そんなことより、このままではいけませんね。…失礼します」
「きゃっ!?ヤ、ヤーナ!?」

おおお…お姫様抱っこぉぉ!?

「ヤーナってこんなに力持ちでしたの!?」
「姫様の侍女たる者、当然です」

ズボンが落ちないようぐいぐい持ち上げ、必死におしりを死守しているわたくしを軽々と持ち上げる専属侍女。
え。姫の侍女はそんなことまで想定しなくていいと思いますの。今回は非常に助かりましたけれども。

「とりあえずテントへ入りましょう」

今度はわたくしを抱っこした状態で、倒れたままわたくしを見て呆然としているオレグ様をひょいっと飛び越え…ては駄目ですってば!
とにかくそのままの状態でテントの中へ。

「さぁ、これで大丈夫です。着替えをいたしましょう」
「ありがとう、ヤーナ。助かりましたわ!」

さすがヤーナ。わたくしの頼れる専属侍女!
わたくしのおしりはヤーナのおかげで守られましたわ!

「でも、なぜ急にこんなにお痩せになったんでしょう?どこか具合の悪いところはありませんか?違和感があるところはありませんか?」
「いいえ、ありませんわ。……ねぇ、わたくし……本当に痩せましたの?あんな一瞬で?」
「はい。ものすごくお痩せになりました」

わたくしは改めて自分を見下ろしてみましたわ。
見下ろせばいつもお腹のお肉で見えなかった自分のつま先がくっきりと見えますわ。
そして手や足、指までもがほっそりとして骨の存在を感じられるようになって…あのボンレスハムはどこに行ったのかしら?

「本当に、痩せましたのね………」
「はい。とてもお綺麗になられましたよ」
「それは無理がありますわ」

デブスからデブをとっても所詮ブス。
わたくし、勘違いいたしませんわ!勘違いして聖女をいじめる…なんてことはいたしませんわ!
ヤーナが「本当です!お美しいです!」と力説してくれていますが…痩せれば美しくなるのは当たり前ですわ。なんたってデブスがブスに昇格いたしましたから!そうよ!これで嫌悪感を抱かれない程度にはなったかしら!?やりましたわ!!理由はわからないけど!!

「そういえばあの光はなんだったのかしら?魔物がどこに行ったのかも謎ですわね」
「私には姫様から出た光で魔物が消えたように見えました。ですがその光の原因が分かりませんね…。一度城に戻って調べましょう。姫様のお体も心配ですし」

ヤーナはとにかくわたくしの体の変化が心配みたいですわ。そこかしこ見て、異常がないか心配してくれていますわ!ヤーナ、大好きですわ!って、ヤーナ!そんなとこまで見ないで!!恥ずかしいですわ!!

「異常はなさそうですね。とにかくお着替えをいたしましょう。…でも今までの姫様のお洋服は全て大きすぎて合いませんね…」
「そうね…。ちょっと直したくらいでは着られそうにないわね…」

恐らく半分くらいの体積になってしまったわたくしには持ってきた服は全て小さくて…どうしましょう?

「私の服を着てもらう…?でも私の服って…。いやでも姫様の服では……」
「そうよヤーナ!申し訳ないのだけれど、あなたの服を貸してくださる?」
「いや、でも…私の服は…」
「あ…まだわたくしには小さいかしら?もう少しダイエットが必要……?」
「いいえ!全然そういうことではなくてですね!?私の服はほら、その…」
「…………あぁ、なるほど。問題ありませんわ!」
「問題あるんじゃないですかねぇ!?」
「でも他に女性はいませんもの!仕方ありませんわ!」
「そうですよね…はぁ…」

ということでヤーナの服をお借りしますわ!痛み入りますわ!

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