21 / 48
17 ダイエット会議なのですわ!
しおりを挟む「たぁぁあああぁああ!!!!」ザシュッ! ドォンッ!
「はぁぁあああぁああ!!!!」ザンッ! ドドッ!
「どっせぇぇえええい!!!!」ズシュッ! ズドォンッ!
「ねぇ…これ、護衛いる…?」
「後方支援、必要かな…?」
「姫さん跳ぶときの地響きスゲェな…。なんであの重量であんなに跳べんだよ…」
後ろでチャラス様とオレグ様が悄然としていたのにも気付かないまま、わたくしはただ只管に、魔物を切り、間髪入れず跳び、切り、跳び………を繰り返したのですわ!
*******
「姫様……たくさん倒されましたな……」
「頑張りましたわ!」
小一時間で目ぼしい魔物はほぼ討伐されたため、急遽明日行く予定だった場所まで移動してそこでも小一時間でほぼ討伐してしまい、今は最初の門の内側に戻ってきたのですわ!
つまりは2日分、討伐終了なのですわ!
なので帰る予定が明後日から明日に変更になったのですわ!
魔物が早く片付いたことは喜ばしいことですわ!…喜ばしいことですわよね?
なのになぜか団長様の目が遠い目をしていることが気になりますわ?
そしてなぜか皆様も同じような目をしているのですが…もっと喜びましょうよう!?
「……そうですな。まぁ、我々の出る幕はほとんど無かったが…望んでいた結果が得られた訳だしな。うん、な。そうだよな。だよ…な?」
小声で何をおっしゃってるのか分かりませんが…なぜか自分を納得させようとする団長様。何を悩んでいらっしゃいますの?
「あの体型でなんであんなに素早いんだ…」
「魔物一振りで倒すってどういうことだよ…団長より強ぇんじゃねぇか?」
「騎士団で鍛える当初の目的、護身じゃなかったか?もうドラゴンも倒せるだろ…」
「騎士より強い王女って…」
そこの騎士様方!ボソボソと何を話していますの?喜びなら一緒に分かち合いましょう!?わたくしも混ぜてくださいませ!
「と、とにかく全員ご苦労。では、野営地に戻る!」
「「はっ!」」
******
「おかえりなさいませ」
野営地でヤーナが出迎えてくれましたわ。
先んじて伝達係の騎士様が伝えに来てくれていたおかげで、野営地では待機組が帰還するわたくしたちのためにお茶を沸かしてくださっていましたわ!そしてボリスラーフのお菓子も。
野営でお菓子が食べられるなんて…!
「料理長はこのケーキどうやって焼いたんだ?」
「クッキーもあるぞ…オーブン無いのに」
「今回の野営はいろいろいつもと違うな…」
いろいろ…とは何かしら?
でも確かに、ボリスラーフはこのお菓子、どうやって焼いたのかしら?
ケーキはデコレーションがしてありますわ!
クッキーにはアイシングまで…!?
「姫様、こちらへどうぞ」
「あら、ありがとう」
野営なのでもちろん地べたに布を敷いただけ。
でも、ボリスラーフのケーキとヤーナのお茶があるから豪勢ですわ!
うふふ、みんなでピクニックみたいで楽しいですわ!
「失礼します。ご挨拶してもよろしいですか?」
わたくしたちが野営地とは思えないほどまったりとした時間を過ごしていると、ここの村長が団長様に挨拶に来ましたわ。
「この度は討伐お疲れ様でございました。おかげで国境の壁付近に住んでいる者たちが安心して過ごせます」
「我々は義務を果たしたまで。お礼を言われるようなことは何もありません」
「それでも体を張って戦ってくださった皆様にお礼がしたいのです。ささやかではありますがどうぞお召し上がりください」
そう村長が言い終わると、後ろから村の男性たちが大きな酒樽を、女性たちが果物をいくつも籠に入れて運んで来ましたわ。
みんなニコニコと幸せそうですわ。
「皆、村の者たちはいつも不安と隣り合わせで…。トゥフナ領の騎士たちは街の方の治安維持にかかりがちであまり国境にまでは手が回らんのです」
トゥフナ領の騎士団長セルゲイ様が不満そうだったのはこれが原因ではないかしら?
自分たちが国境に行く余裕さえあれば、王国騎士団に頼まずとも自分たちで討伐できるのに…というやり場のない気持ちが王国騎士団への態度として出てきてしまったのではないかしら?
でもだからと言ってあの態度は許されませんわ!
王国騎士団の騎士はトゥフナ領、ひいてはアルエスク王国の民を守るために遥々来ているんですもの。
「最近魔物が増えていましたから心配していましたが、これで当面は安泰です。ありがとうございます」
「いえ…。しかし今回は騎士団ではなく、姫様がほぼ、その………」
「?」
騎士団長様、そんなにわたくしのことを見て…どうかなさいまして?
「まぁ…うん。皆様の不安が取り除かれて、良かった…です」
「???」
煮えきらない返答に村長さんとわたくしの頭上にはハテナがいっぱい。
なのになぜ他の騎士団の皆様は遠い目をしているのかしら?
「うっわー!そのお菓子美味しそう!」
明るい声に振り向けば、いつの間にかわたくしの横には可愛らしい少年が。10歳くらいでしょうか?
キラキラとした目でわたくしの前に並べられたボリスラーフ作のお菓子を見つめていたのですわ。
「よろしければどうぞ」
にっこりと微笑みお皿を差し出せば、少年の顔がぱぁっと輝きます。
「いいの!?」
「こら!マルコ!!」
マルコと呼ばれた少年の母親でしょうか?
女性が慌てた様子でこちらに駆けてきましたわ。
「だって!こんなに美味しそうなお菓子、ここらへんじゃ見たことないから!」
「だからって騎士様の食べ物を強請ってはだめでしょう!?」
「強請って無いやぃ!お姉ちゃんがくれたんだぃ!」
「あんたが物欲しそうにしてるからでしょう!」
あらま。親子喧嘩が始まってしまいましたわ。でもそれも平和であればこその風景。微笑ましいですわ。
でも残念ながらわたくしは騎士ではないのですが…まぁ、姫だと明かすと面倒なことになりそうなので黙っていましょう。
「よろしいのですよ。料理長が張り切ってたくさん作ってくれたようですから、もしよろしければ召し上がって?お母様もどうぞ食べてみてくださいませ。お城の料理長の料理は国一…いいえ、世界一ですのよ!」
ボリスラーフに視線をやれば、どこか誇らしげにお辞儀が返ってきましたわ。
謙遜しないのはその自信があるからでしょう。素晴らしいことですわ!
「いえ、でも…」
「いいじゃないですか。お茶はみんなでした方が楽しいですから、ぜひご一緒しましょう」
「っ!」
隣からにこやかにオレグ様がアシストして下さいましたが…ダメですわよ!マルコのお母様!旦那様以外の男性にときめいては!あの樽を運んできた男性、旦那様ですわよね!?めちゃめちゃこちらを見る笑顔が怖いですわ!!
結局近くにいた子どもたちも参加することになり、わたくしたちの周りには子供たちの笑顔がたくさん咲きましたわ。
あ。マルコのお母様は拗ねた旦那様に連れて行かれましたわ!
拗ねた旦那様を見るお母様の顔がニコニコしてましたから…たぶん大丈夫なのでしょう。恐らく仲良し夫婦なのですわ!
嫉妬してもらえるなんて羨ましいですわ…。わたくしも愛されたいですわ!
「ねーねー、お姉ちゃんは騎士なのになんでそんなに太ってるのー?」
「そんなんで戦えるのー?」
「ダイエットした方がいいんじゃねぇか!?」
オォウ…。
子供たちの無邪気な発言が心に刺さりますわ!無邪気故に刺さりますわ!
ちょっとヤーナ!子供たちを睨まない!!残念ながら事実ですわ!
「わたくしは騎士ではございませんのよ。見習い…みたいな感じかしら?」
「見習いだって太ってちゃダメだろー?」
「うっ。確かにその通りですわ…。ダイエットしてるんですが全然痩せないんですの」
「見習いだから運動はしてるんだろ?食べ過ぎか?」
「いえ、量は普通だと思いますわ」
「普通でそんなんなるか?」
「何が原因なのかなぁ?」
うーん。と、子供たちがわたくしのダイエットのために悩んでくれて…嬉しいけどなんだかとっても恥ずかしいですわ!
その後もたくさんお話をしてすっかり子供たちと仲良くなりましたが、そろそろ野営の晩御飯の準備に入らなければならない時間。
みんなと「また明日」と手を振って別れようとした…その時。
ドォン!!バキバキバキバキッ!!!
「な…何事ですの!?」
地響きの後、何か硬いものが破かれるような音が辺りに響き渡り…その音源を見やれば。
「グォォオオオォオオオオオ!!!!!」
そこに、魔法の壁を破りながら咆哮を上げる巨大な黒い魔物の赤い目が、こちらを見ていたのですわ。
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!


婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~
沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。
ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。
魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。
そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。
果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。
転生要素は薄いかもしれません。
最後まで執筆済み。完結は保障します。
前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。
長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。
カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる