処刑回避のため、頂点を目指しますわ!

まなま

文字の大きさ
上 下
16 / 48

13 地球の元キャンパーは伊達じゃないのですわ!

しおりを挟む


「今日はここで野営する。直ちに準備に取り掛かるように」
「「「はっ!!」」」

国境のすぐ近くの小さな村。
村長に挨拶を済ませ、壁近くの広場で野営させてもらうことになりましたわ。
なんだかわくわくしますわ!
わたくし、前世ではキャンプが大好きでしたの!
まずはテントを張るのですわね?
任せてくださいませ!

「姫さんはあちらの木陰で休んでてくださ…」
「できましたわ!」
「早っ!?」

木陰に案内しようとわたくしのところに来たチャラス様。
…何を驚いていますの?
前世ほど複雑ではないテントですもの。秒ですわ!秒!
地球のキャンパーを舐めないで欲しいですわね!
それに……

「今日のために事前に予習しておきましたの!」
「………姫さんっていろいろ凄すぎねぇ?」
「レーナはやると決めたらとことん極める研究者肌だからな……」
「チャラス様、オレグ様、どうかなさいまして?」
「……………姫さん、タラスです」

あら、ごめんあそばせ。だってつい…ねぇ?名は体を表すかと…。
それにしても、今日のためにラルフに付き合ってもらって、何度も何度もテントを張ってはしまって、張ってはしまってを何時間も繰り返して練習して、最後にはラルフの目を死んだ魚にしてしまいましたが……やったかいがありましたわ!
今日のは自己最高スピードでしたわ!えっへん!

「姫さんは本当にここで俺らと同じように過ごすんだな…」
「?当たり前ですわ。わたくしは皆様に師事していただいてるんですもの。下っ端のように扱っていただいて結構ですわ」
「「下っ端……」」

いつの間にかチャラス様とオレグ様は仲良しですわね?
えぇ、えぇ。確かに見た目も身分も下っ端にしては存在感ありありですけどもね?
でも前世の記憶が戻った今となっては、師事していただいてるのに偉そうになんてできませんわ!
教えてもらうならば働く!当たり前のことですわ!
ふんすと鼻息荒く、わたくしが意気込んでいると…

「くくっ。姫さんは変わってるなぁ」

チャラス様がチャラくない笑顔で笑いましたわ!?
チャラいどころか、含みのない笑顔は…むしろ爽やか!どうなさいましたの!?

「そんなにおかしいかしら?当たり前のことですわ」
「当たり前なわけないだろ。あんたの身分なら全部指示して命令して従わせりゃいいだろ?なのにあんたは教えてもらうからって…お礼を言って、労働して。そんな王族聞いたことない」
「………王族らしくなくてがっかりしまして?」

そうですわよね。王族は誰よりも上に立つ者であり、皆が傅く存在。
分かってはおりますわ。おりますのよ?
でもそんなの…寂しいではありませんか。見えない壁で隔たれているようで…寂しいではありませんか。

でも、チャラス様の言うことは最もですわ。
威厳を持ってこその王族。傅くべき存在としての畏怖。
尊敬の念を持たずして頭を垂れることはできませんもの…。

「いんや。少なくとも俺は姫さんみたいなの好きだよ」
「……………え?」

そこには穏やかな顔をしたチャラス様。
そんな顔もなさるのね……。不覚にも少しドキッとしてしまいましたわ。少しですけれどね!?

「確かに王族は手の届かない存在だけどさ?だったけどさ?俺らとこういう風に会話して、仕事して。偉ぶらない王族ってのもさ…なんか、こう…国民にちゃんと寄り添って、この国の未来を明るくしてくれるんだろうなって…素直にそう思えるよな」

少し恥ずかしそうに頬を掻きながら言う、はにかんだ顔には一切のチャラさも、揶揄する気配も感じられませんわ。

国のトップがどんな人間なのか。それによってこの国の未来は大きく変わることは間違いありませんわ。
チャラス様…いえ、タラス様はタラス様なりにこの国のことを考えて下さっているのですわね。

でも……わたくしは将来、聖女様を襲い、この国の安全を脅かそうとするかもしれない身。
そして…この国を捨てて逃げるかもしれない身。
この討伐に参加したのだって自分の身を守りたいという利己的な理由からですもの…。
タラス様のお言葉が心にずしりと重みを感じますわ。

わたくしは将来、この国にいないかもせれないけれど。
我が国を思ってくださっているタラス様に敬意を。

「タラス様のような国の未来を思惟して下さる方が王国騎士として戦ってくださること、アルエスク王国第一王女として誇りに思いますわ」
「……………………っ!?」

タラス様はぽかんとした顔から徐々に目を見開いて、驚きの顔になり、そして最後は………あらま。真っ赤なお顔に……。

「なっ、ちょ…俺、そんなこと言われる柄じゃないでしょ!?しかも姫さんは王族なのに…」
「柄とか身分とか、そんなものは関係ありませんわ。わたくしは思ったことを口にしただけですわ」
「な………!」
「ふふふっ。タラス様は照れ屋さんですのね」
「~~~~~っ!」

おぉー。立派な林檎が出来上がりましたわ!
うふふ。チャラさの欠片も無くなりましたわね!

「はぁ……面食いの俺がまさか、こんな……」
「?」

赤い顔を両手で覆って何か言っていましたが…何かしら?

「お、俺、他のテント張るの手伝ってくるから…姫さんは待機……」
「ではわたくし、荷物の運び出しを手伝ってきますわね!」
「……………ほどほどにね」

あら、呆れられましたわ?でも出来ることはやらせていただきますわ!
働かざる者食うべからず!

タラス様と別れ、馬車の方へ向かおうとしたら……あら?な、なんだか、寒………?

「ひぃぃっ!?」

あばばばばばばば!!!
隣の婚約者が怖い!!笑顔なのに怖い!!晴れてるのになんか暗い!!!局所的に暗い!!!

「ドドド、ドド、ド、ドウシマシタノ!?!?」

怖い怖い!婚約者が怖い!!わたくし何かしまして!?
オレグ様ってこんな方でしたかしら!?

「レーナ?」
「ハ、ハイッ!」

ですからその笑顔、怖いですってばぁぁ~~~!!!
甘ーく名前を呼ばれているはずなのに、背中を流れる汗がやっべぇですわ!!

「浮気は許さないよ?」
「………………ふへぇっ!?」

浮気!?浮気って…あの浮気!?ですの!?
『心がうわついて変わること。一人の異性だけを愛さず、複数の人に目移りすること』の、浮気ですの!?!?

?」
「あの……えっと…………えぇ?」

誰と誰の浮気ですの!?
もしかしてわたくしとタラス様!?有り得ませんわ!!?
そもそもわたくしに好かれてもタラス様は間違いなく迷惑ですわ!
これも婚約者としてのプライドですの!?プライドですのね!?
オレグ様のプライドはアルエスク王国一高いジフ山よりも高いですわ!?!?

「くそ…あのチャラ騎士、要注意だな。タラス…。サバタナ伯爵家の次男だったか?次男だからレーナが嫁に行く心配はないが…あいつなら愛人にしろとか…あり得る」
「えっと…オレグ様?どうかなさいまして?」
「………レーナ、呼び方」
「え、いえ、でも…」
「よ・び・か・た」
「………………オーリャ」
「うん、気をつけてね?返事は?」
「あの、いえ、でも………」

…………ニッコリ。

「へ・ん・じ・は?」
「ハ、ハイィッ!!!!」

わたくしの婚約者が最近怖い件。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

処理中です...