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12 闘魂注入ですわ!
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「………レーナは、いつから、その………ダイエットしよう、と…思ったの?」
「え?」
トゥフナ邸で昼食をいただき、急ぎ国境近くの村へと移動する馬車の中。オレグ様が気まずそうに聞いてきましたわ。
まぁ、そうですわよね。婚約者とはいえ体型のことに触れるのは失礼ですものね。
でもわたくしは気にしませんことよ?だって明らかに太っておりますから…ふっ。
「お恥ずかしながら、わたくし最近になってようやく太っていることに気が付きましたの。こんなに太っているのに…おかしいですわよね。気が付いたからには改善しなくてはと食事制限や運動をしているのですが…結果が伴わなくて……」
「君はそのままでも可愛いよ」
「…………そのお世辞は無理がございますわ」
「本当なのに」って…騙されませんわ!
その困ったように笑う顔もとてつもなくきゅんとしますが…このデブスなわたくしが“可愛い”だなんて…本心で言えるのはお兄様くらいですわ!!
あの方はちょっと…いえ、だいぶシスコンフィルターが分厚いのですわ!恐らくすりガラス10枚分くらい重ねたぐらい不明瞭な状態……はっ!なるほど…お兄様ってば目がお悪いのですね!?そうでしたのね!!?帰ったらメガネをお勧めして差し上げなければ……!
「レーナはいつ頃から太……ふくよかになったのか覚えてる?」
「……………いえ、それが気が付いたのは最近ですの」
「そう……」
含みがある言い方ですわね?「なんで今まで気付かなかったんだよ!?」的な?「やっと気付いたのかよ!」的な?
うぐぬぅぅ…分かっておりますわ!分かってはおりますが傷つきますわ!!
「その…レーナは気付いてなかったみたいだったから言わなかったんだけど、僕が学園に入る直前…だから、僕が14歳でレーナが12歳のときかな。それまでレーナはとても細かったんだけど、3日合わなかった間に、その………今みたいな体型になっていたんだよ」
あ、ごめんなさい。嘲りの内容ではございませんでしたのね!?
でも内容が衝撃的ですわ!?
「………3日でこの体験に?嘘でしょう?」
「いや、本当だよ。もしかしたらもっと短い期間だったかもしれないけど、僕が知る限りでは3日。あの時はさすがに吃驚したよ」
えぇえぇ、そうでしょうねぇ!?わたくしも今、目ん玉飛び出そうですわ!?
何その激太り!?いえ、激太りのレベルを超えてますわ!
………でも、そういえば。クローゼットの中身が一日で全て入れ替わったことがありましたわ。
季節の入れ替えかしら?とも思ったのだけど…全て新しいものでしたし、一着一着の主張がなんとなく強いですわね?と思っていたのだけど…あれは一着一着の大きさがとてつもなく大きくなったからでしたのね!?
「なぜ誰も何も言わなかったんですの!?」
「君の侍女のヤーナは言っていたみたいだよ?さすがに太るのが一瞬過ぎたから病気を疑っていたみたいだけど」
「………思い出しましたわ。何度もお医者様に診察された時期がございましたわ。太ったと言われたはずですのに…なぜ覚えていないのかしら?」
「うん、不思議だよね。だから、もしかしたら何か特別な理由があるのかも……」
ダイエットしてもダイエットしても減らない脂肪。
これ程太っているのに、太ったことにすら気付けなかった謎。
………確かに。もしかして、これはただ太った訳ではないのかも…?
「レーナ」
不安そうな顔をしていたのでしょう。
オレグ様がわたくしの左手を両手で優しく包み込んでくださいましたわ。
………あたたかい。
少しだけ心が軽くなり、ほぅ、と溜め息と共に強張った体の力が抜けましたわ。
「あの時、確かに吃驚はしたけど…僕はやっぱり君のことが可愛いと思ったんだ。本当だよ」
そんな訳ありませんわ。
わたくし、今は自分のことがちゃんと見えておりますもの。
こんなデブス……好きになる人なんて、いるわけありませんわ。
でも…オレグ様が真っ直ぐにわたくしを見るから。嬉しいのか悲しいのかよくわかりませんが、涙が出そうですわ。
この方の好きな人がわたくしだったら良かったのに……。
そんなことを考えてしまって、愕然としましたわ。
だってわたくしは将来、オレグ様に捨てられる身。
期待してはいけませんわ。
バチーーーーーーーーン!!!!!
「レーナ!!?急にどうしたの!!?」
「気合を入れただけですわ!大丈夫ですわ!!」
「いやいやいやいや!ほっぺた真っ赤だよ!?」
両手で自分の頬を叩いて、闘魂注入!!ですわ!!!
オレグ様は将来、聖女様と結ばれる身…つまりは、わたくしから聖女様への貢物!!
期待してはいけませんわ!!
先程の“可愛い”発言は婚約者に対するリップサービスですわ。
でも、それでも……
「オレグ様。ありがとうございます………!」
今は太った謎が不安だから。
お言葉はありがたく頂戴いたしますわ。
きっと両頬赤く腫れたデブスの笑顔はさぞ醜いでしょうが、お礼は笑顔で言わせてくださいませ。
「え?」
トゥフナ邸で昼食をいただき、急ぎ国境近くの村へと移動する馬車の中。オレグ様が気まずそうに聞いてきましたわ。
まぁ、そうですわよね。婚約者とはいえ体型のことに触れるのは失礼ですものね。
でもわたくしは気にしませんことよ?だって明らかに太っておりますから…ふっ。
「お恥ずかしながら、わたくし最近になってようやく太っていることに気が付きましたの。こんなに太っているのに…おかしいですわよね。気が付いたからには改善しなくてはと食事制限や運動をしているのですが…結果が伴わなくて……」
「君はそのままでも可愛いよ」
「…………そのお世辞は無理がございますわ」
「本当なのに」って…騙されませんわ!
その困ったように笑う顔もとてつもなくきゅんとしますが…このデブスなわたくしが“可愛い”だなんて…本心で言えるのはお兄様くらいですわ!!
あの方はちょっと…いえ、だいぶシスコンフィルターが分厚いのですわ!恐らくすりガラス10枚分くらい重ねたぐらい不明瞭な状態……はっ!なるほど…お兄様ってば目がお悪いのですね!?そうでしたのね!!?帰ったらメガネをお勧めして差し上げなければ……!
「レーナはいつ頃から太……ふくよかになったのか覚えてる?」
「……………いえ、それが気が付いたのは最近ですの」
「そう……」
含みがある言い方ですわね?「なんで今まで気付かなかったんだよ!?」的な?「やっと気付いたのかよ!」的な?
うぐぬぅぅ…分かっておりますわ!分かってはおりますが傷つきますわ!!
「その…レーナは気付いてなかったみたいだったから言わなかったんだけど、僕が学園に入る直前…だから、僕が14歳でレーナが12歳のときかな。それまでレーナはとても細かったんだけど、3日合わなかった間に、その………今みたいな体型になっていたんだよ」
あ、ごめんなさい。嘲りの内容ではございませんでしたのね!?
でも内容が衝撃的ですわ!?
「………3日でこの体験に?嘘でしょう?」
「いや、本当だよ。もしかしたらもっと短い期間だったかもしれないけど、僕が知る限りでは3日。あの時はさすがに吃驚したよ」
えぇえぇ、そうでしょうねぇ!?わたくしも今、目ん玉飛び出そうですわ!?
何その激太り!?いえ、激太りのレベルを超えてますわ!
………でも、そういえば。クローゼットの中身が一日で全て入れ替わったことがありましたわ。
季節の入れ替えかしら?とも思ったのだけど…全て新しいものでしたし、一着一着の主張がなんとなく強いですわね?と思っていたのだけど…あれは一着一着の大きさがとてつもなく大きくなったからでしたのね!?
「なぜ誰も何も言わなかったんですの!?」
「君の侍女のヤーナは言っていたみたいだよ?さすがに太るのが一瞬過ぎたから病気を疑っていたみたいだけど」
「………思い出しましたわ。何度もお医者様に診察された時期がございましたわ。太ったと言われたはずですのに…なぜ覚えていないのかしら?」
「うん、不思議だよね。だから、もしかしたら何か特別な理由があるのかも……」
ダイエットしてもダイエットしても減らない脂肪。
これ程太っているのに、太ったことにすら気付けなかった謎。
………確かに。もしかして、これはただ太った訳ではないのかも…?
「レーナ」
不安そうな顔をしていたのでしょう。
オレグ様がわたくしの左手を両手で優しく包み込んでくださいましたわ。
………あたたかい。
少しだけ心が軽くなり、ほぅ、と溜め息と共に強張った体の力が抜けましたわ。
「あの時、確かに吃驚はしたけど…僕はやっぱり君のことが可愛いと思ったんだ。本当だよ」
そんな訳ありませんわ。
わたくし、今は自分のことがちゃんと見えておりますもの。
こんなデブス……好きになる人なんて、いるわけありませんわ。
でも…オレグ様が真っ直ぐにわたくしを見るから。嬉しいのか悲しいのかよくわかりませんが、涙が出そうですわ。
この方の好きな人がわたくしだったら良かったのに……。
そんなことを考えてしまって、愕然としましたわ。
だってわたくしは将来、オレグ様に捨てられる身。
期待してはいけませんわ。
バチーーーーーーーーン!!!!!
「レーナ!!?急にどうしたの!!?」
「気合を入れただけですわ!大丈夫ですわ!!」
「いやいやいやいや!ほっぺた真っ赤だよ!?」
両手で自分の頬を叩いて、闘魂注入!!ですわ!!!
オレグ様は将来、聖女様と結ばれる身…つまりは、わたくしから聖女様への貢物!!
期待してはいけませんわ!!
先程の“可愛い”発言は婚約者に対するリップサービスですわ。
でも、それでも……
「オレグ様。ありがとうございます………!」
今は太った謎が不安だから。
お言葉はありがたく頂戴いたしますわ。
きっと両頬赤く腫れたデブスの笑顔はさぞ醜いでしょうが、お礼は笑顔で言わせてくださいませ。
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