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第5部 新世界

第107話 投資

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 そうは言っても借りたお金は返さないといけないわね。
「証文を見せてもらえないかしら?」
「わかったよ、ここにある。見てみろよ」
 年長の男から手渡された証文を確認する。

 確かに借入金5万円に対して金利はトイチ(10日で1割)と書いてある。
 毎月月末返済で支払えない場合は金利だけでも可能。
 期限までに支払えない場合は土地家屋で返済とする、と書いてある。
 金利が高いところ以外はちゃんとした契約ね。

「どうしてこんな契約をしたのですか?」
 私は院長のステラさんに尋ねる。
「御覧の通り孤児院は、修道院の慈善事業で成り立っています。寄付をしてもらえなければ、運営は難しくなります」
「でもどうして彼らを頼ったのですか?」
「それは他のところでは、定期的な収入がない私達には貸してもらえないからです」
 そう言うことか。
 定期的な収入がない修道院にお金を貸すわけがない。
 でも彼等なら高い金利を取れるだけではなく、支払えなければ土地家屋が手に入る。
 どちらにしろ、損はないと言うことね。

「残金はいくらあるのかしら?」
「へい、今日の時点で350万です」
 若い男が答える。
「350万て!!高いでしょ!!」
 スズカはやっと気づいた。
 金利が高い時点でまともな契約ではないことを…。

「わかったわ。私が払うわ」
「スズカさん!!」
「子供達には安心して暮らしてほしいですから」
 そう言うと私はテーブルに金貨350枚を出した。

「ほら、証文を置いて持っていきなさい」
 男達は金貨を10枚積み上げ、それを35組作ってお金を確認していた。
 うん、計算しやすいよね。
「ほらよ、持っていきな」
 そう言われ証文をステラさんに渡すと男達は帰って行った。

「スズカさん、ありがとうございます。本当に何と感謝すれば良いのでしょう」
「良いですから、ステラさん。それからこれからのことを考えないといけませんね」
「これからのこと、ですか?」
「そうです。今回は済みましたが、今後もお金に困ることがあると思います」
「確かにそうですが…」

「そこで定期的な収入を得るようにしましょう」
「働きに出ると言うことでしょうか?」
「いいえ、違います」
「では、どう言うことでしょう」
「露店を出してビーフシチューを売るのです」
「ビーフシチューをですか?」

「えぇ、修道院の入口に露店を出して売るのです。そうすれば場所代も掛からないし子供達でもお皿に盛るだけならできますから」
「それは良いですね。シチューの匂いはとても美味しそうですから。でも屋台を出すお金が…」
「大丈夫、それも私が出しますから」
「でも何から何までして頂く訳には…」
「これは子供達への投資です。立派な大人になってくれればいいだけです」
「ありがとうございます。ありがとうございますスズカさん」

 ステラ院長は何度も私に頭を下げた。

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 物語はまったり、のんびりと進み更新は不定期となります。

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