上 下
104 / 110
第5部 新世界

第104話 孤児院とビーフシチュー

しおりを挟む
「お姉ちゃん、その大きな獣はなあに?」
 推定5歳の仮カン太が聞いてくる。
「この子はシルバーと言う名で私が使役しえきしている魔物よ」
「え~、魔物なんだ。凄い!!」
 カン太は喜んでいる。
「じゃあ、この小さい子は?」
「この子はポポンよ。仲良くしてね」
「うん、仲良くする~」

 私達四人は孤児院を目指して歩いた。
 途中の市場で野菜を購入した。
 子供達に案内され進んで行くと、二階建ての古い建物が見えて来た。
「あれが孤児院だよ」
 推定8歳の仮チン平が建物を指差す。
 思っていたより建物が古い。
 所々傷み長い間、改築もされていないようだわ。

 私は子供達に手を引っ張られ孤児院の中に入って行く。
 すると40代前半くらいだろうか、シスターがこちらにやってきた。

「あなた達、どこに言っていたの?午前の掃除の手伝いはどうしたの?」
「もう終わってるよ、シスター。それよりこのお姉ちゃんが美味しいシチューを作ってくれるって!!」
 推定10歳の仮トン吉が私を紹介してくれる。
「まあ、あなた達は何をやっているの」
「実はこの子達が屋台の近くで、お腹を空かせて立っていまして…」
「それは、ご迷惑をおかけて申し訳ございません。何分、寄付で賄っているので十分な食事も出せなくて。育ち盛りの子供達には申し訳なくて…」

「そうですか、では私も食事を寄付すると言うことでどうでしょうか?」
「いいのですか?」
「えぇ、みなさんは何人ぐらい居るのですか?」
「子供達やシスターを合わせると35人です」
「わかりました。では庭を少しお借りいたしますね」
 私はストレージからテーブルとコンロを出した。

「おぉ~!!」
 子供達は何もない空間からテーブルが出てきたことに驚いている。

 そして大鍋をネットスーパーで購入した。
 野菜を出しジャガイモと人参の皮をむいておく。
 トロールの肉を一口大に切り鍋に油をひいて弱火で熱する。
 そして玉ねぎ、人参を入れて炒める。
 肉の色が変わったら水を入れて、アクを取りながら弱火で40分ほど煮る。

 牛もも肉に火が通り、やわらかくなったらジャガイモを入れて、さらに10分ほど煮こむ。
 ジャガイモに火が通ったら一度火を止めて、ルーを加えて混ぜ合わせ溶かす。

 悩んだ結果、今回はビーフシチューにすることにした。
 以前カレーを作ったけど香辛料が、この世界では高価で庶民では手が出ないからだ。
 ルーはなくてもデミグラスソースがあれば、誰でも作れるしね。
 そして再び弱火で熱し10分ほど煮こんだら、はい出来上がり!!

 美味しそうなデミグラスソースの匂いが辺りに立ち込める。
 気が付くといつの間にか他の子供やシスター達に囲まれていた。

「さあ、みんな並んで!!美味しいビーフシチューを食べてみてね」
 そう言うと私はストレージから皿とスプーンを出し、シチューを盛り順番に手渡した。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 いつも応援頂いてありがとうございます。
 物語はまったり、のんびりと進み更新は不定期となります。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

死にたくない、若返りたい、人生やり直したい、還暦親父の異世界チート無双冒険譚

克全
ファンタジー
田中実は60歳を前にして少し心を病んでいた。父親と祖母を60歳で亡くした田中実は、自分も60歳で死ぬのだと思ってしまった。死にたくない、死ぬのが怖い、永遠に生きたいと思った田中実は、異世界行く方法を真剣に探した。過去に神隠しが起ったと言われている場所を巡り続け、ついに異世界に行ける場所を探し当てた。異世界に行って不老不死になる方法があるかと聞いたら、あると言われたが、莫大なお金が必要だとも言われた。田中実は異世界と現世を行き来して金儲けをしようとした。ところが、金儲け以前に現世の神の力が異世界で使える事が分かり、異世界でとんでもない力を発揮するのだった。

処理中です...