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第3部 日常
第84話 森のハンター
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私は恐る恐るレッドの背に乗り頬を撫でる。
「大丈夫です、お父様。この子達はとても大人しいですよ。ほら」
「そ、そうか。では娘の言葉を信じてみよう。怪我をした兵士はシルバーウルフの背に乗るように。まさか侍女をシルバーウルフに乗せる訳にはいかないからな」
『一体につき二人までだな。お前がこのまま俺の背に乗って行くなら、兵士の一人は馬車に乗りピンクは妊婦さんだから乗せるのは一人にしてほしい』
「まあ、おめでたなのね」
『俺の子だ』
「待ち遠しいわね、赤ちゃん」
『おぉ、そうだな』
レッドの声が少し照れたように聞こえた。
「このトロールはどうしますか?持ち帰るのはとても無理です」
騎士団兵長ニックスと兵士の会話が聞こえる。
「それなら魔石と角だけにしよう」
「はっ!わかりました」
素材の回収も終わり私達は街に向かう。
私の住む国はシェイラ国の東、イグナシオ領。
緑豊かな街、それ以外は何もないところ。
どの街も似たようなものだと言う。
今回、私は初めてイグナシオ領から出た。
最近ではなぜか魔物の出没する頻度も減った。
それもあり舞踏会があると言うのでお父様と出席することにした。
普段はよほどのことが無い限り領から出ることはない。
特に女性は政略結婚し相手の城の中で一生を終わる。
私も十五歳、婚姻してもおかしくない年齢に近付いている。
そんな時の出来事だった。
まさかトロールに出くわすなんて。
「ねえ、どうして私達を助けたの?」
『助けた?特にそんな気はないな』
「でもトロールを倒してくれたでしょ?」
『それは人族に食料を奪われると思ったからだ』
「奪われる?」
『あぁ、だから四体の内、一体を手数料にもらったろう』
「全部でも良かったのに」
『さすがに運びきれないからね、日持ちもしない』
「しかしレッドは乗り心地が良いわ。馬車なんて最悪よ」
『そんなに酷いものなのか、良かったな』
「えぇ、あなた達は普段は街の近くに居るのかしら?」
『そんな訳が無いだろう。俺達は狩りをしないと食べていけないからね』
「ではどこに?」
『人の手が入っていない森の奥にドンドン入って魔物を狩るのさ』
「でもあなた達四体も居たら食料も沢山いるでしょう」
『そうだ。だから最近では俺達のお腹を満たす、大型の魔物が居なくて困っているんだ』
「最近、魔物が少なくなったとお父様から聞いたけどレッド達のおかげ?」
『それはわからないな?俺達がここに来たのは最近だからな』
「人族は襲わないの?」
『そんなことをしたら名前を付けてくれた、姉さんに怒られてしまう』
「姉さん?調教師なのかしら。その名づけ親はあなた達を放っておいて、今どこに居るの?」
『さあ。わからないな。シルバーの兄貴と一緒に居るはずだ』
「あなた達は五体いたのね」
『そうだ。スズカの姉さんが街に住むのに、五体では多いからと兄貴達と別れたのさ』
「そうなの。あなた達はこれからもこの近辺に住むのかしら?」
『まあ、それは食料次第だな』
「どういうこと?」
『獲物が少なくなれば移動すると言うことさ。まあ冬が終わるまではここにいると思う。ブルーとイエローの相手を見つけ、群れを大きくするのが兄貴との約束だからな』
「では魔物が居る間は一つの場所に留まると言うことね」
『そうなるな。これから冬ごもりの準備もあるからな』
「今年は雪が降らないといいけど。できれば長く住んでほしいわ。あなた達がいれば森は魔物が少なくなると言うことね。まるで森のハンターみたい」
ワオン、ワオン、ワオン、
へ~、そうなの。
ワワン、ワン、ワオン。
そんなこともあったの、凄いわね。
馬車の横を走る魔物に乗った娘の声が窓から聞こえる。
まるで魔物と会話をしているようにも聞こえる。
街に戻ったら娘を医者に連れて行こうか、と迷うガスパロ侯爵であった。
「大丈夫です、お父様。この子達はとても大人しいですよ。ほら」
「そ、そうか。では娘の言葉を信じてみよう。怪我をした兵士はシルバーウルフの背に乗るように。まさか侍女をシルバーウルフに乗せる訳にはいかないからな」
『一体につき二人までだな。お前がこのまま俺の背に乗って行くなら、兵士の一人は馬車に乗りピンクは妊婦さんだから乗せるのは一人にしてほしい』
「まあ、おめでたなのね」
『俺の子だ』
「待ち遠しいわね、赤ちゃん」
『おぉ、そうだな』
レッドの声が少し照れたように聞こえた。
「このトロールはどうしますか?持ち帰るのはとても無理です」
騎士団兵長ニックスと兵士の会話が聞こえる。
「それなら魔石と角だけにしよう」
「はっ!わかりました」
素材の回収も終わり私達は街に向かう。
私の住む国はシェイラ国の東、イグナシオ領。
緑豊かな街、それ以外は何もないところ。
どの街も似たようなものだと言う。
今回、私は初めてイグナシオ領から出た。
最近ではなぜか魔物の出没する頻度も減った。
それもあり舞踏会があると言うのでお父様と出席することにした。
普段はよほどのことが無い限り領から出ることはない。
特に女性は政略結婚し相手の城の中で一生を終わる。
私も十五歳、婚姻してもおかしくない年齢に近付いている。
そんな時の出来事だった。
まさかトロールに出くわすなんて。
「ねえ、どうして私達を助けたの?」
『助けた?特にそんな気はないな』
「でもトロールを倒してくれたでしょ?」
『それは人族に食料を奪われると思ったからだ』
「奪われる?」
『あぁ、だから四体の内、一体を手数料にもらったろう』
「全部でも良かったのに」
『さすがに運びきれないからね、日持ちもしない』
「しかしレッドは乗り心地が良いわ。馬車なんて最悪よ」
『そんなに酷いものなのか、良かったな』
「えぇ、あなた達は普段は街の近くに居るのかしら?」
『そんな訳が無いだろう。俺達は狩りをしないと食べていけないからね』
「ではどこに?」
『人の手が入っていない森の奥にドンドン入って魔物を狩るのさ』
「でもあなた達四体も居たら食料も沢山いるでしょう」
『そうだ。だから最近では俺達のお腹を満たす、大型の魔物が居なくて困っているんだ』
「最近、魔物が少なくなったとお父様から聞いたけどレッド達のおかげ?」
『それはわからないな?俺達がここに来たのは最近だからな』
「人族は襲わないの?」
『そんなことをしたら名前を付けてくれた、姉さんに怒られてしまう』
「姉さん?調教師なのかしら。その名づけ親はあなた達を放っておいて、今どこに居るの?」
『さあ。わからないな。シルバーの兄貴と一緒に居るはずだ』
「あなた達は五体いたのね」
『そうだ。スズカの姉さんが街に住むのに、五体では多いからと兄貴達と別れたのさ』
「そうなの。あなた達はこれからもこの近辺に住むのかしら?」
『まあ、それは食料次第だな』
「どういうこと?」
『獲物が少なくなれば移動すると言うことさ。まあ冬が終わるまではここにいると思う。ブルーとイエローの相手を見つけ、群れを大きくするのが兄貴との約束だからな』
「では魔物が居る間は一つの場所に留まると言うことね」
『そうなるな。これから冬ごもりの準備もあるからな』
「今年は雪が降らないといいけど。できれば長く住んでほしいわ。あなた達がいれば森は魔物が少なくなると言うことね。まるで森のハンターみたい」
ワオン、ワオン、ワオン、
へ~、そうなの。
ワワン、ワン、ワオン。
そんなこともあったの、凄いわね。
馬車の横を走る魔物に乗った娘の声が窓から聞こえる。
まるで魔物と会話をしているようにも聞こえる。
街に戻ったら娘を医者に連れて行こうか、と迷うガスパロ侯爵であった。
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