68 / 110
第2部 王都ファグネリア
第68話 出会い
しおりを挟む
ドンッ!!
夕食時期の忙しい時間帯にカウンター台を叩く大きな音が響く。
「なんだ、この店は!!客にこんなものを食わせるのか?!」
見ると木皿の中には3cmくらいの、大きなゴキちゃんモドキが入っていた。
「申し訳ございません。カリカリの3倍以上はある虫が、とても入るとは思えませんが…」
「な、なんだと~!!自分の店の非を認めないのか?」
俺の名は犬族のアントン。
このエリアを仕切る虎族のアモスお頭配下の、 取るに足りない地回りの一人だ。
獣人は異種族と人族の国では蔑まれ、仕事にありつけない。
そんな輩が集まった集団だった。
しかしそれだけでは生活はできない。
アモスお頭は盗みや人身売買などには手を染めず、地道に頑張って来た人だった。
だがそれでも生活は豊かにならず、徐々に人が抜けていき俺達三人が残った。
生活費を稼ぐため、こんなことをやり始めた矢先だった。
数か月前からとても混んでいる店が、裏路地にあると聞き様子を見に来た。
するとどうだ。
100人近い客が店の前に並び待っている。
『屋台の店シルバー』と言うのか。
店の中からは食をそそる、とても良い匂いがする。
そしてあっという間に、オーダーが出て来て客はすぐに食べ店を出る。
客足は途切れず、絶えず同じくらいの人数が並んでいる。
聞いていた通り獣人専用の食堂のようだ。
しかも値段は三百円と四百円と格安だ。
異種族と見下され肩身の狭い思いをしている、俺達相手の店を出すなんて。
どんな奴が店主かと顔を見てやろうと思い見てみたが、カウンターには黒髪の女の子が一人だった。
厨房にも人が居るのだろう。
注文が入ると都度、厨房に注文を伝えている。
俺は狐族のジョフレと狼族のヨルゲンを連れ、店にやってきている。
路地で捕まえた虫を、出て来た木皿に入れ女の子に文句を言った。
するとどうだ。
怯えるかと思った女の子は落ち着いた態度でこう言ってきた。
「申し訳ございません。カリカリの3倍以上はある虫が、入るとは思えませんが…」
俺達は焦った…。
普通のスープなどの食事なら、まだ通ったかもしれない。
しかし、いつもとは違い木皿に1cmくらいの粒が乗った食事なのだ。
そんな大きな虫が入っていたら最初からわかるはずだ。
「おい!!次がいるんだ。早くしてくれよ!!」
「そうだ、早くしろよ!!」
並んでいる百人近い獣人に声を浴びせられ、怯んだ俺達は一旦引いた…。
そして次の日…。
「おい!髪の毛が入っているぞ!!この店はどうなっているんだ?」
するとカウンターの女の子は、また落ち着いた態度でこう答えた。
「私の髪の毛は黒色なので、その茶色の髪はご自身のでは?」
う~ん。
そう言われると返す言葉が無い。
一般的に獣人の髪の毛は茶色が多い。
しかし黒色の髪の毛の人族は、この国では珍しく手に入る訳が無かった。
カウンター前で文句を言おうと思っても店はとても忙しく、並んでいる客から俺達が文句を言われてしまう。
仕方がない。
ここは虎族のアモスお頭にお越し頂くか。
夕方の時間にお頭を伴い、狐族のジョフレと狼族のヨルゲンを連れ店にやってきた。
さすがに忙しい時間も過ぎたのか、少女が店の前を掃いていた。
「お頭、ここです」
「おう、そうか。おい女。スペシャルとやらを二人前くれ!!」
「はい、わかりました。虎族と犬族の方ですね」
「そうだが、なにか問題でもあるのか?」
「種族によってお出ししている食事が違うので」
「そうか、何でもいいから早く出せ!!」
お頭が威圧するように大きな声を出す。
最初から難癖を付けるつもりなのだ。
味なんてどうでも良い。
早く食事を出させないと。
「ワンコスペシャルとニャンコスペシャルはいりました!!」
厨房に向い注文を繰り返している。
やはり奥に誰かいるようだ。
そう思った時だった。
ゾワッ!!
何かを感じた。
獣人は危険感知が優れている者が多い。
混んでいる時はたくさんの人に紛れ分からなかったが、お頭と二人しかいないこの時間帯ならわかる。
や、やばい。
やばい奴が他にいる。
そんな時だった。
「こんばんは!スズカさん」
「いらしゃいませ。『燃える闘魂』の皆さん」
冒険者が4人入って来た。
獣人が二人、人族が二人。
ここは獣人専用の食堂のはずだ。
人族はお連れか?
そう思った時だった。
「いつもの奴で良いですか?」
「あぁ、頼む」
「俺達もそれでお願いします」
「わかりました」
俺は思い切って女の子に聞いてみた。
「おい、姉ちゃん」
「はい、なんでしょうか?」
「あんたの他に、奥の厨房に人が居るのかい?」
「え?あなた達もシルバー目当てだったの?なんだ、早く言ってくれればいいのに」
誰だ、それは?
「シルバー、お客さんよ。あなたに会いたい、て」
すると奥からゾワリと気配が動いた。
やばい、これはやばい。
危険を知らせる鐘が俺の中で鳴る。
アモスお頭を見ると同じようにガタガタと震えている。
気が付くと奥から気配が立ち上がった。
それは体長2mはある大型のシルバーウルフだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
いつも応援頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進み更新は不定期となります。
夕食時期の忙しい時間帯にカウンター台を叩く大きな音が響く。
「なんだ、この店は!!客にこんなものを食わせるのか?!」
見ると木皿の中には3cmくらいの、大きなゴキちゃんモドキが入っていた。
「申し訳ございません。カリカリの3倍以上はある虫が、とても入るとは思えませんが…」
「な、なんだと~!!自分の店の非を認めないのか?」
俺の名は犬族のアントン。
このエリアを仕切る虎族のアモスお頭配下の、 取るに足りない地回りの一人だ。
獣人は異種族と人族の国では蔑まれ、仕事にありつけない。
そんな輩が集まった集団だった。
しかしそれだけでは生活はできない。
アモスお頭は盗みや人身売買などには手を染めず、地道に頑張って来た人だった。
だがそれでも生活は豊かにならず、徐々に人が抜けていき俺達三人が残った。
生活費を稼ぐため、こんなことをやり始めた矢先だった。
数か月前からとても混んでいる店が、裏路地にあると聞き様子を見に来た。
するとどうだ。
100人近い客が店の前に並び待っている。
『屋台の店シルバー』と言うのか。
店の中からは食をそそる、とても良い匂いがする。
そしてあっという間に、オーダーが出て来て客はすぐに食べ店を出る。
客足は途切れず、絶えず同じくらいの人数が並んでいる。
聞いていた通り獣人専用の食堂のようだ。
しかも値段は三百円と四百円と格安だ。
異種族と見下され肩身の狭い思いをしている、俺達相手の店を出すなんて。
どんな奴が店主かと顔を見てやろうと思い見てみたが、カウンターには黒髪の女の子が一人だった。
厨房にも人が居るのだろう。
注文が入ると都度、厨房に注文を伝えている。
俺は狐族のジョフレと狼族のヨルゲンを連れ、店にやってきている。
路地で捕まえた虫を、出て来た木皿に入れ女の子に文句を言った。
するとどうだ。
怯えるかと思った女の子は落ち着いた態度でこう言ってきた。
「申し訳ございません。カリカリの3倍以上はある虫が、入るとは思えませんが…」
俺達は焦った…。
普通のスープなどの食事なら、まだ通ったかもしれない。
しかし、いつもとは違い木皿に1cmくらいの粒が乗った食事なのだ。
そんな大きな虫が入っていたら最初からわかるはずだ。
「おい!!次がいるんだ。早くしてくれよ!!」
「そうだ、早くしろよ!!」
並んでいる百人近い獣人に声を浴びせられ、怯んだ俺達は一旦引いた…。
そして次の日…。
「おい!髪の毛が入っているぞ!!この店はどうなっているんだ?」
するとカウンターの女の子は、また落ち着いた態度でこう答えた。
「私の髪の毛は黒色なので、その茶色の髪はご自身のでは?」
う~ん。
そう言われると返す言葉が無い。
一般的に獣人の髪の毛は茶色が多い。
しかし黒色の髪の毛の人族は、この国では珍しく手に入る訳が無かった。
カウンター前で文句を言おうと思っても店はとても忙しく、並んでいる客から俺達が文句を言われてしまう。
仕方がない。
ここは虎族のアモスお頭にお越し頂くか。
夕方の時間にお頭を伴い、狐族のジョフレと狼族のヨルゲンを連れ店にやってきた。
さすがに忙しい時間も過ぎたのか、少女が店の前を掃いていた。
「お頭、ここです」
「おう、そうか。おい女。スペシャルとやらを二人前くれ!!」
「はい、わかりました。虎族と犬族の方ですね」
「そうだが、なにか問題でもあるのか?」
「種族によってお出ししている食事が違うので」
「そうか、何でもいいから早く出せ!!」
お頭が威圧するように大きな声を出す。
最初から難癖を付けるつもりなのだ。
味なんてどうでも良い。
早く食事を出させないと。
「ワンコスペシャルとニャンコスペシャルはいりました!!」
厨房に向い注文を繰り返している。
やはり奥に誰かいるようだ。
そう思った時だった。
ゾワッ!!
何かを感じた。
獣人は危険感知が優れている者が多い。
混んでいる時はたくさんの人に紛れ分からなかったが、お頭と二人しかいないこの時間帯ならわかる。
や、やばい。
やばい奴が他にいる。
そんな時だった。
「こんばんは!スズカさん」
「いらしゃいませ。『燃える闘魂』の皆さん」
冒険者が4人入って来た。
獣人が二人、人族が二人。
ここは獣人専用の食堂のはずだ。
人族はお連れか?
そう思った時だった。
「いつもの奴で良いですか?」
「あぁ、頼む」
「俺達もそれでお願いします」
「わかりました」
俺は思い切って女の子に聞いてみた。
「おい、姉ちゃん」
「はい、なんでしょうか?」
「あんたの他に、奥の厨房に人が居るのかい?」
「え?あなた達もシルバー目当てだったの?なんだ、早く言ってくれればいいのに」
誰だ、それは?
「シルバー、お客さんよ。あなたに会いたい、て」
すると奥からゾワリと気配が動いた。
やばい、これはやばい。
危険を知らせる鐘が俺の中で鳴る。
アモスお頭を見ると同じようにガタガタと震えている。
気が付くと奥から気配が立ち上がった。
それは体長2mはある大型のシルバーウルフだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
いつも応援頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進み更新は不定期となります。
14
お気に入りに追加
266
あなたにおすすめの小説
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
完結【清】ご都合主義で生きてます。-空間を切り取り、思ったものを創り出す。これで異世界は楽勝です-
ジェルミ
ファンタジー
社畜の村野玲奈(むらの れな)は23歳で過労死をした。
第二の人生を女神代行に誘われ異世界に転移する。
スキルは剣豪、大魔導士を提案されるが、転移してみないと役に立つのか分からない。
迷っていると想像したことを実現できる『創生魔法』を提案される。
空間を切り取り収納できる『空間魔法』。
思ったものを創り出すことができ『創生魔法』。
少女は冒険者として覇道を歩むのか、それとも魔道具師としてひっそり生きるのか?
『創生魔法』で便利な物を創り富を得ていく少女の物語。
物語はまったり、のんびりと進みます。
※カクヨム様にも掲載中です。
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ
ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。
ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。
夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。
そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。
そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。
新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる